第115話 マジョリカ・2
商業ギルドで案内された物件は全部で四軒。三軒は作りがほぼ同じだが、寝室として使える部屋が二部屋か三部屋か四部屋かの差と、街の中心地から近いか遠いかだ。寝室の部屋の広さはほぼ同じだった。もう一つは人数分の小部屋があるため、他と違って大きい。一部屋の大きさもそこそこだ。その分値段も頭一つ高い。お風呂は全部の物件に付いている。これがある意味大事。
「以上となります。どうでしょうか?」
契約の形態としては二十日単位で借りられるようだ。長く契約した方がお得になるようだ。二十日で借りても宿で一泊するよりは安くなる感じだ。
ただし食事代と、水回りを考えると良い勝負か? もちろん宿のグレードにもよるけど。
「少し考えたいんだが、すぐに返答しなくても大丈夫か?」
「はい、問題ないですよ。ただそこそこ人気の物件なので、契約が成立していたら借りられない場合があるので、それだけは覚えておいて下さい」
ダンジョン攻略に来る冒険者が多く、借家の需要もそこそこあるようだ。ギルド員さんの言葉を信じるなら。
礼を述べて次に向かうのは奴隷商。結果だけ言うと空振りに終わった。ただダンジョン攻略で需要があるためか、いくつもの奴隷商が店を構えていた。レベルも全体的に高かった。エリスの情報はもちろん何もなかった。そしてエルフの姿も気を付けて探したけどいなかった。
次は冒険者ギルド。ヒカリとミアを連れて行くか迷ったけど、ダンジョンの登録もしたいから一緒に行くことにした。離れないようにだけ注意した。
セラがギルドでカードを提示すると伝言が届いていた。ルリカからで、マジョリカに向かうという返事だったようだ。場所はラス獣王国で十日前に伝言の依頼がされたようだった。
とりあえずルリカたちがギルドに訪れたら、今ここに滞在していると宿の名前を伝えて貰うことを頼んでおいた。
その間依頼表を見ていたが、ダンジョンに出る魔物の素材の納品依頼が多い。また合同で討伐、ダンジョンを攻略しないかという募集もある。何々階層に変異種が出たから討伐したいとかの募集もある。
低階層に出た場合は、初心者や駆け出しが力及ばず殺されることも多いから、ギルドとしても早めに対処したいところなんだろう。あとは注意喚起の意味合いもありそうだ。
ダンジョンへの登録は、冒険者ギルドの内の一角で出来るようだ。ダンジョンの入り口がギルド内にあるのも影響しているんだろう。傍らには兵士? の詰め所もある。
ダンジョンから魔物が出てくる。そんな報告例が別のダンジョンであったために、一応監視しているらしい。
四人分の料金を支払ってカードの作成を頼む。その後ダンジョンの注意事項の説明を色々と受けた。
一つ、ダンジョン内での揉め事は自己責任で。ただし擦り付けなどの悪質な行為が認められた場合は厳罰が処されます。また不当な行為と認められた場合は罰則があるので注意が必要。
一つ、ここのダンジョンは階層型。十階ごとにボス部屋が存在し、一度に入場出来るのは同一のパーティーに入っている者のみ。またパーティーの認識はダンジョン入場時にカードで登録することが出来る。また、同一階にいるパーティーメンバーとカードを介して通信が出来る。
一つ、一度ボス部屋に入ると、次に同一のボス部屋へ入るには五日間の待機時間の終了後になる。これはダンジョンの仕様のようで、待機時間前に入ろうとしても拒否されるそうだ。
一つ、ダンジョンは階層登録が可能で、次回探索時に到達階までの階層に自由に移動出来る。ただしこれは入場時の入り口でのみ選択可能。
一つ、五と十の倍数の階を繋ぐ階段脇にある装置を利用することで、地上に転送されて脱出することが可能。また各階層の階段脇に同じような装置があるが、それは階層到達を記録するための装置であるため脱出には使えない。
ただし五階入り口側に飛んでスタートした場合、同入口の装置を使っての脱出はすぐには使用出来ない。調査した結果。少なくとも三日経たないと再使用が出来ないとのことだ。
大まかなルールはこんな感じだそうだ。
また五階層ごとに特別なフィールドがあり、洞窟型じゃなく、森林、岩山、草原フィールドと色々あるらしい。
広さも違い、また道順と階段の位置も定期的に変動するため地図は売り出されているけど、それがいつまで有効かは分からないらしい。それは通常の階層でも同じようだ。
ただし階ごとに出る魔物は基本的に変わらないため、知りたい場合は資料室や冒険者ギルドの依頼表でも調べることが出来るらしい。
「気軽に日帰りが出来るわけでもなさそうだな」
「準備はしっかりしないと駄目そうだね」
「うん、食糧はしっかり持っていく。お腹が空いたら戦えない」
「他の人たちはどうやって荷物を回収するんでしょうか?」
「専用の荷物を運ぶ者を雇うのかもな。もしかしたらそれで奴隷に需要があるのかもな」
奴隷商の賑わいを考える。そういえば、以前アイテムボックスを持つとパーティーに誘われやすいようなことを聞いたが、これも原因の一つか?
「ただ、こうなると一度入ると外との連絡が取れないし、下手に潜ってる時にルリカたちが街にやってきたらすれ違う可能性もあるな」
「それなら浅い階層で戦って、毎日歩いて戻ってくればいいんじゃないかい?」
「そうだな。魔物次第ではそれもありかもしれないな。ただ低層だとあまり実入りが良さそうじゃないんだよな」
階を更新するごと帰還するとなると、五階、十階以外だと戻る階数がだんだん増えていくことになる。もっと手軽に戻る手段があればいいんだけどな。
帰る前に資料室で各階に出る魔物を調べる必要もある。五階層ごとにあるフィールド型は、地形によっては薬草類も採取出来るかもしれない。
資料室で調べた結果。浅い階層はゴブリンとウルフが交互に出て来る洞窟型らしい。ただし五階は草原、森エリアのフィールドになるため、そこで薬草類の採取や珍しい食べ物がなる木もあるそうだ。ただしそのエリアには蛇や蜂も出てくるようだ。
それを通り過ぎると六階からはまた洞窟型のダンジョンに戻り、キラービー、ブラッドスネイク、ウルフ、ゴブリン系と順番に出るようになる。八階以降は集団で魔物が出てくるようだ。
「五階まで行って、珍しいものを採取して戻ってくるのもありかもしれないな」
俺の声に二人が頷いた。最後の一人? ヒカリは飽きて途中から夢の中ですよ。まだまだ子供、静かに調べ物はつまらなかったんだろう。
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