第114話 マジョリカ・1
マジョリカの街には二つの顔がある。魔法学園都市としての顔と、ダンジョン街としての顔が。これにはもう一つ、プレケスの街にも同様なことが言えるため、西のプレケス、東のマジョリカと呼ばれているそうだ。
「魔法学園に入る条件は、試験以外に何かあるのか。例えば奴隷だと入学することが出来ないとか」
「そういうのはありませんわ。ただ奴隷が入学したという記録はないと思いますの」
俺も奴隷が学校に通うイメージとか湧かないな。ヒカリは事情があるからどうにかなるかもだけど。
「あとはダンジョンに入る時は何か手続きがいるのか?」
「入場カードのようなもので登録する必要がありますわ。これは入退場の記録をとったり、階層踏破の記録が出来たりしますわ」
「何故、入退場の記録をするんだ?」
「入って一定期間帰還の記録がないと救助隊が結成されたりすることがありますわ。これは学園の生徒に適用されることが多かったような気がしますわ」
「冒険者兼用のレイラたちだとどうなるんだ?」
「……救助隊が結成されると思いますわ。そもそもダンジョンに行く学園生の殆どは冒険者登録もしますの」
これは以前、学生の多くが未帰還になった事件があったため、出来た制度のようだ。と、ロキアからマジョリカの移動中に色々とレイラたちから話を聞いた。
移動に要した期間は四日間。だいぶ歩くのに慣れて来たのか、それとも体力が付いてきたのか、ミアが無理をしないで歩いてついて来られるようになった。
人数が増えて見張りに余裕が出来てきたため、休憩中にも思い思いにやれることが増えた。模擬戦を少ししたりもしたけど、ミアが一番興味深そうにしていたのはトリーシャによる神聖魔法の勉強会だった。ミアはヒールとリカバリーだけしか使えないため、ホーリーアローやターンアンデッドなど、攻撃に使える魔法の使い方を教えて貰っていた。
俺も少し説明を受けたけど、さっぱりだった。何故か神聖魔法は、レベルがあがってもヒールとリカバリー以外を覚えられない。理由は不明だ。なので神聖魔法のレベルが上がって受ける恩恵は、今のところ効果が上がるぐらいか。例えばヒールの回復量だけみれば、ミアよりも一度に回復できる量が多いとか。ただ近頃殆ど出番がなく、使った記憶がないんだよな。
ミアは旅の間も休憩中にヒカリと一緒になって練習していたから、苦手だった魔力のコントロールもだいぶ上達している。使えるのも時間の問題、かもしれない。
あと好評だったのは料理。絶賛されました。お世辞じゃないよね? 社交辞令じゃないよね? と心配するほどのベタ褒めで、逆に不審に思ったほどだ。
今では素直にその賞賛を受け止めるだけの、自信が付いた。と、思う。調子には乗らないように、まだまだ研究は必要だ。スキルの恩恵と、やっぱり口にしたことのない味だから物珍しさもあったんだと思う。
マジョリカに到着したら恒例のギルドカードの提示。今回も問題なく入場することが出来た。が、なんかレイラのカードを見た門番の一人が顔色を変えていたな。
レイラは特に気にした様子もなく平然としていたけど。
「ソラたちはこれからどうしますの?」
「ひとまず宿だが、この街で家を借りることは可能なのか?」
「家ですの?」
レイラの問いに頷く。ルリカたちがいつこの街に来るか不明だし、借家の方が安いようならそっちもありだと思った。
宿にいると色々楽だけど、ミアも料理の練習をするなら借家の方が時間が取れていいだろうしな。
「そうですわね。一度家の方に私は帰るので、その時に知っている者がいないか聞いてみますわ」
「助かる。あと、おススメの宿はあったりするか? 食事が美味しいと嬉しいんだが」
「少し高くなりますがありますわ。そちらでも良いですの?」
「……ああ、頼む」
レイラに案内されて一つの宿に入る。
ここはダンジョン産の魔物肉を色々仕入れていて、凝った料理が食べられるのでマジョリカでは有名な宿らしい。四人部屋を一部屋、とりあえず三泊頼んだ。
無駄な抵抗はしない。俺も学習した。
「助かった。ありがとな」
「明日は私も学園に行かないとですの。夜にまた伺わせてもらいますわ」
「なら昼間に色々と用事を済ませておくよ」
こうしてブラッディーローズの面々と別れた。
普段は学園の寮に入っているそうだが、レイラとケーシーは一度実家に顔を出すそうだ。B級冒険者とはいえ、娘さんが国外に出れば心配もするか?
他の四人は、ヨルもそうだが別の町から学園に入学しにやってきたから学園の寮に向かうそうだ。
翌朝まずは商業ギルドに向かう。場所は宿の人にしっかり聞いておきましたよ。
この世界、街の案内図なんてないから、行きたい場所がある場合は自分で探す必要がある。そのため初めてきた時は門番に聞くか、宿の人に聞く場合が多い。MAP表示も建物の表示はされるがそれが何の店なのかまでは分からない。一度そこが何かを理解すれば勝手に覚えていってくれるわけだが。
「今日は何の御用でしょうか?」
「家を借りたいと思ってるんだが、商業ギルドで紹介とかしてもらえたりするか?」
「はい、大丈夫です。どのような物件をお求めですか?」
「一軒家で、最低でも六人が生活出来るぐらいの広さが欲しい。個別で使う部屋とかは、あれば嬉しいかな?」
「長期で滞在する予定でしょうか?」
「一応行商人をやってるんだが、素材集めで少しダンジョンにも行きたいと思ってる。そのための拠点にと考えている」
一応商業ギルドのカードを渡す。
「確認致しました。借家の軒ですが、いくつか候補があります。実際に見てみますか?」
「そうして貰えるとありがたい」
「分かりました。案内出来る者を呼ぶので少々お待ちください」
テキパキとした対応。出来る人だ。
その後小動物のような女性が現れ、彼女に借家を案内して貰った。
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