第110話 国境都市サイテ・3
食事を終えた帰り道、さらに五匹のウルフに遭遇した。セラとヒカリがそれぞれ狩り、魔石を取り除きそのままアイテムボックスに収納。最終的にこの五匹を納品することにした。主にヒカリの熱望により。
「少し待っていてくれ。納品をしてくる」
ギルドに到着すると、セラと一緒に受付に。アイテムボックスにそのまま収納してあると言うと倉庫に通されて、そこで受け渡し。魔石は抜いてあるとの報告も忘れない。魔石と解体料を差し引いた料金を受け取る。半分をセラに渡し、もう半分は俺が受け取る。
最初セラは奴隷だからと遠慮したが、俺に何かあった時にお金が一つのところにあると困ることがあるからと持たせた。聖都から脱出した時みたいに、別行動をする時もあるかもしれないからな。ヒカリとミアに渡すよりはいいと思ったのは内緒だ。
戻ってくるとギルド内が騒がしかった。見るとヒカリとミアが冒険者に絡まれている。それを遠巻きに見る冒険者が何人もいる。
「うちの子らに何か用か?」
険悪な雰囲気に割って入る。ヒカリが暴発しそうだった。
「あん、お前が主人か? どういう躾をしてる? 奴隷なら黙って人間様に従うように躾けるのが当然だろ?」
何を言ってるんだこいつは? 周囲を見ると半分同意、半分困惑といった感じだ。
「そうだ。奴隷なんて人間以下の存在。なら人間に従うのは当然だろ?」
こいつは仲間か?
「お、奴隷以下の家畜もいるじゃねえか。それによく見たらなかなか……おい、お前こっちに来て奉仕させてやる。ありがたく思え」
セラを見て嗜虐的な笑い声上げる。頭が痛くなってくる。
「悪いが他を当たってくれ。その子たちは俺の仲間だ。仲間を侮辱することは許さない」
「おいおい、ガキが粋がるなよ? このランクB冒険者、光剣に逆らおうってのか?」
有名なのか? 仲間と思われるやつらは別として、他の冒険者の顔を見る限り知っているようには見えない。皆疑問符を浮かべてるぞ。
「聞いたことがないが、有名なのか?」
あ、顔が真っ赤になった。失笑もそこかしこから漏れてるぞ。
「これだから田舎者は……。それでガキはランクいくつだ? 言ってみろよ」
おお、立て直した。打たれ強いな。
「そもそも冒険者じゃないんだが?」
「冒険者じゃないだと。無関係な奴がこんなところに何の用だ?」
「何ってウルフの納品に付き合っただけだが? 荷物運びとして」
「荷物運び。何だますます雑魚じゃないか。で、雇い主は何処だ? ガキが舐めた口を聞いたんだ、雇い主にはそれ相応のもん払っても貰わないとな」
仲間らしき三人が頷いている。四人パーティーか。
「あの~、ギルド内での揉め事はおやめください。禁止されてますので……」
その時受付の方から弱気な声が。小声で、もし今騒がしかったら聞こえなかったに違いない。
室内の視線が声の方に一斉に向くと、肩を竦めて心細さそうに視線をキョロキョロとさせた。小動物みたいだな。
ただその一言は効果があったようで、四人は舌打ちをして去って行った。
「ふん、俺たちはいずれダンジョンを踏破する者だ。その時になったら貴様ら覚えているがいい」
捨て台詞と共に。
そもそも勝手に絡んできただけだろ? どういう神経してるんだ。
しかも対象が俺だけじゃなくて、関係のない冒険者の皆さんにも広がってる。
「あんたら何か災難だったな。ただ気を付けた方がいい。ああいう輩は何処にでもいる。奴隷だけで冒険者ギルドに来させない方がいい。今回は別行動してただけかもだが、目を離さない方がいい」
ベテランのおっさんが忠告してくれた。確かにそうなのか? 男の奴隷ならともかく女の奴隷ならそういうこともあるのかもな。基本血気盛んな男が多いし。
「忠告感謝する」
「ああ、若いのは素直が一番だ」
渋いおっさんだな。この世界では強面の方がなんか親切な人多いな。あの四人組はどっちかというとイケメン? の部類に入りそうだし。
「大丈夫だったか? 悪かったな、一緒にいるべきだった」
「驚いたけど大丈夫だよ」
「主、あれお仕置きする」
「我慢な。だけど次絡んできたらその時はいいぞ」
その言葉で満足してくれたようだ。俺も許さないしな。
「あれはたぶん、ボースハイルの帝国の冒険者さ」
セラが帰り道でぽつりと呟いた。
「奴隷を人間として扱わないところとか。冒険者ランク至上主義とか。あの国の人間らしい考え方さ。それに……」
セラを見て家畜と言った言動か。
「せめて奴隷の首輪をどうにか出来れば違うのかな」
「それは関係ないさ。それにボクは満足している。お陰で友達とも会えそうだからさ」
それは心の底からの笑顔。本音だろう。
むしろ奴隷にして、主様と呼ばれているのを見た二人の、俺に対する反応の方が怖いんだが? 奴隷契約の解除は、金貨五〇〇枚分の稼ぎをセラがしたら解除とか出来るのかな? 奴隷の解除方法とか調べておけば良かった。どうも互いが同意すれば解除出来るという単純なものでもないらしいし。複雑だな。
あと、あれだけ傍若無人なのにギルド職員の言葉に素直に従ったことに疑問を思ったら、帝国はああいう輩が多いから、ギルド職員に武闘派が多いとか、噂に聞いたことがあるそうだ。
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