第75話 聖都騒乱・1

 午後は軽く模擬戦を行い、夜は勉強会。これにはヒカリとユリも参加している。

 二人とも魔法に興味があるようで、基礎的なことを学習しているようだ。ヨルが嬉々として教えていた。

 時々俺も会話に入り話すが、時々ユリが不思議な顔をして見てきた。何だろう?

 その翌日。俺は一人野営の準備をして薬草採取の旅、一泊二日に出掛けた。

 ヒカリも付いて来ると言ってきたけど、今回はせっかくなのでユリと仲良くするように言って断った。最初渋ったが、美味しい屋台の情報と、珍しい調味料をチェックするという任務を与えて納得してもらった。

 薬草の群生地のある場所は、一番近い場所で歩いて半日の場所だった。

 朝一で門を飛び出し、群生地のある森の中に入る。ここは複数の群生地が森の中に点在しているらしい。

 出てくる魔物は少ないが、普通に獣が徘徊しているらしい。MAPで確認したが、近くには特にいないな。

 最初の採取場に到着したら、何も考えずに乱獲。もちろん若芽のものは摘んでいない。終わったら水魔法で水を注ぎ、ちょっと早い昼食を食べた。

 今回は時間削減のため出来合いの料理を買ってアイテムボックスに収納してきた。美味しく頂くためにも冷めても美味しい料理をしっかり選んできた。抜かりはない。

 ただ今の空間魔法のレベルなら数日程度なら温かさは保持されるようだから、そこまで気にする必要はなかったかもしれない。

 日が暮れても頑張って採取した。暗視が大活躍。熟練度も上がるので一石二鳥だ。

 森の奥の方に来たからか、遠吠えが時々聞こえる。

 もしMAPで位置確認が出来なかったら、その都度ビクビクしていたかもしれない。風が吹いて木が擦れる音だって、一人で森の中にいると怖く聞こえたりするしな。背の高い木に囲まれると、言葉に出来ない不安感が湧いてくるんだよな。

 静まり返った獣道を一人歩いたことがあったけど、その時に踏みしめて鳴る落ち葉の音にビクついたのは、今では良い思い出だ。あの音も慣れると心地よく聞こえるようになったし。

 出来合いの料理を食べて、土魔法でかまくらのようなものを作る。腕を上げたら小屋ぐらいの大きさの家なら作成出来るだろうか? 日々鍛錬だな。

 寝る前にもう一度MAPで周囲を確認し、その日は就寝。

 翌朝は目を覚ましたら食事を済ませて早速採取に移動。門を閉める時間を考慮して、どれぐらいに森を出れば大丈夫かを計算しているから、その時間までひたすら採取。途中、動物を見つけたり襲われたりしたので捕獲。生きたままだとアイテムボックスには入れられないので、絞めておく。血抜きは時間が勿体ないので後回しだ。

 お昼も食べずに採取をして、帰り道に歩きながら食事をする。レイラたちが見たら行儀が悪いと言われたかな? 否、冒険者ならきっと歩きながら食べる機会もあるだろうから言わないか。

 結局魔物には会わなかったな。MAPにも一度も表示されなかったし、街に近いから討伐しに来やすいのかもしれないな。その割に冒険者もいなかったようだけど。採取依頼は何処も不人気だったりするのか?

 街に入る前に長蛇の列に並ぶことになったが、無事入場することが出来た。

 アポステル家に到着した時には既に食事を済ませていたようなので自分で用意しようとしたら、一人分を作って出してくれた。手間を掛けさせてしまい申し訳ない。お礼に後日、森で捕獲した動物を進呈しておいた。

 翌日は各種ポーションを錬金術で作った。回復ポーション三〇〇。マナポーション二〇〇。スタミナポーション三〇〇。毒と、麻痺の解毒用ポーションが各一〇〇個出来た。職業を錬金術師に変更しておいたから、スムーズに作成することが出来た。

 数が数なので、MPの関係で作っては模擬戦。作っては勉強。作っては模擬戦と一日かかった。ただそのお陰か遂に錬金術のレベルが上がって10に、MAXになった。カンストだ。

 新たにスキルが出現したか確認すると、スキル「付与術」があった。

 付与術、これは色々なものに覚えている魔法を付与することが出来るようになる、とある。またアイテムの効果を付与することも可能とある。ただしアイテムの効果を付与する場合は、そのアイテムを触媒として使う必要がある、と。

 これは戦力の底上げになると同時に、お金稼ぎにも使えるのでは、と思った。

 例えば弾丸に魔法を付与すれば、属性を持った弾丸が作れる。火魔法を付与して爆発させれば、散弾銃の弾丸のような殺傷能力の高いものも出来るかもしれない。ただ魔物に使うと素材がボロボロになるから、使いどころは難しいかもしれないが。

 お金稼ぎに関しては、普通の袋に空間魔法を付与してアイテム袋を作れたらそれなりに稼げるのではと思っている。今度試してみないとな。

 ちなみ後で分かったことだが、それなりのものを作ろうとした場合は素材だけでなく、それなりに質の高い魔石が必要になることが分かった。世の中そんなに甘くないということか。

 ポーションは各五〇本ずつ商業ギルドに売るとするか。あとはレイラたちにも必要か聞いて、渡せばいいな。あとはいくらで売ることが出来るかだな。いっそ道具屋にそのまま卸してもいいか? 価格調査だけはしておくか。

 翌日。ヒカリと久しぶりにお出かけ。今日はヒカリからの要望で二人きりだ。

 おススメの屋台に連れていって貰ったり、街中を色々回る。手を握って歩くのは、人の出が多いからだが、心なしかヒカリの足取りが軽いようだ。


「道具屋の場所はどこだったかな?」

「主任せる」


 先導して貰い無事到着。頼もしい。

 店の中に入って状態を鑑定し、値段を確認する。以前商業ギルドで買取してもらった価格と比べても、五割ほど高い。

 元々の値段が分からないから判断が付かない。

 一軒だけだと分からないので、他のお店にも寄ってみる。

 全体的に高いな。聖都は人が多いし、需要が多いのかもしれない。

 価格調査のために道具屋をハシゴしていたら、ヒカリが詰まらなそうにしはじめたので今日はここまで。ヒカリに任せて街をぶらつくことした。

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