第68話 オーク納品

「ソラは冒険者ギルドは初めてですの?」

「何度か来たことはあるな。どんな依頼があるのかとか、どうすれば依頼を出せるのか調べにな」


 実際は元冒険者だったからだが。主に採取専門だったけど。

 見慣れない集団が入ってきたからか注目を集めた。

 ロックが代表して受付で手続きを行っている。

 そのままロックたちとレイラは二階の部屋に、残りは解体専用の倉庫に通された。


「オークを討伐したんだって?」


 解体を行うギルド職員が聞いてくる。ギルドでオーク討伐の依頼を近頃出していなかったから疑問に思ったようだ。


「何処に出せばいい?」

「そこの開いているスペースに置いてくれ」


 手ぶらな俺をいぶかし気に見ながら言う。

 俺は気にしないで指示された場所にオークを出していく。三〇体出したところで置く場所がなくなった。


「おいおい、まだあるのか?」


 食料として何体か消費したが、ロードとジェネラルを含めてまだ一五体残っている。その事を伝えるとさらに奥の倉庫に案内された。


「なら残りはここに置いてくれ」


 オークを出し終えて、ジェネラルとロードを出すと職員が慌てだした。


「おいおい、これ何処で狩って来たんだ」


 声に動揺がある。聞きつけた他の職員も、二体の上位種の姿を見て驚いている。

 特に焼け焦げているロードの姿を見て、その存在に驚き、これでは素材としての価値が下がると落胆したりと、それぞれの反応を見せている。


「おい、誰かギルマスを呼んで来い」


 興奮しているのか大音声が倉庫に響く。

 職員たちが慌ただしく動き始める。

 しばらくしてギルマスがやってきて、職員に説明をしている。既にレイラたちから話は聞き終えたようだ。後ろにレイラたちの姿もある。

 ロックたちは初めて目にしたからか、素直に驚いている。

 何を残すかの話になり、俺は魔石を何個かと、オーク、ジェネラル、ロードの肉を要求した。ヒカリが満足そうに頷いている。

 ロックたちは最初討伐していないからと遠慮したが、それならと、今日泊まる宿で調理して貰おうとジェネラルとロードの肉を頼んだ。


「しかし驚きじゃのう。お主、これは収納魔法じゃろう?」


 ギルドマスター、初老の男がオークの数と状態を見て聞いてきた。


「一応な」

「しかも状態がかなり良い。収納魔法でも劣化は防げないはずじゃがどうなっておる?」

「水魔法で劣化を出来るだけ防いでいるんだ。肉の質を落とさないように保冷させるのにはコツがいるがな」


 これを習得するのには並々ならぬ努力があった。主にヒカリの期待に応えるように頑張った、俺。


「是非聞きたいところじゃのう」

「飯の種だからダメだな」


 空間魔法がMAXになればいらない技術ではあるが、まだまだレベルが上がるには時間が掛かりそうだしな。


「しかしロードを倒すだけの腕。是非冒険者ギルドに登録をしてもらいたいのう」

「あ~、多分次は無理だな。あの戦闘で家宝の魔道具が破損したからな。何処の武器屋でも扱ってないものだから、修復も無理だろうし」


 少なくとも俺が今まで寄った武器屋では扱っていなかった。

 それにあれは壊れると分解して鉄などに戻すからな。次は五代目として造りなおして復活させないと。

 だけど下手に期待されても困るので、その辺りは無理だとはっきり言っておく。変に噂になっても困るしな。

 見せてくれと頼まれたが、丁重にお断りした。しつこく言い募ってきたが、ヒカリが怒ってあやふやになった。もちろんヒカリの頭をナデナデしてやった。

 オークの買取の額は……結構な額になった。

 ロックたちはここでも洞窟で討伐したオークの取り分を辞退してきたが、等分で割ることになった。あれは村の防衛をしてもらってたから、実行できたわけだしな。

 ジェネラルとロード(焼け焦げていて少し値下がったが)の買取価格が高かったのか、一人当たり金貨二〇枚の稼ぎになった。それに加えて俺は運搬料としてオーク二体分の肉を無償で貰うことになった。ロードの状態がもっと良かったら、さらに金額が上がったらしいけど仕方ない。そんな余裕なんてなかったわけだし。

 冒険者ギルドの用事が終わったら手配された宿に案内された。まだ食事まで時間があるため買い物に出掛けることにした。

 ヒカリと部屋の外に出たところでレイラとバッタリ会い、何故か一緒に出掛けることになった。しかもパーティーメンバーの全員と共に。

 最初に俺の目的でもある食料の買い出しを行った。

 初めて見る調味料が多くあったが、ヨルが詳しかったためかなり助かった。また大豆に似たような豆があったため、少し多めに購入した。不思議に思われたが仕方ない。これは魔法や錬金術で醤油や味噌っぽいのが作れるか研究するためなのだから。

 それが終わると旅に必要な物資を補給するために、武器防具道具屋に寄った。品揃えは聖都の方が良いため、あくまで応急処置に必要なものだけを補充した。

 消耗品であるポーション類は、薬草類があればポーションを作ると言ったら、頼まれた。この時品質の悪いものを購入しようとしたので、それは遠回しに注意して止めた。

 買い物を終えて宿に戻ると、料理の準備が終わるということでロックたちと皆で集まり食事をした。

 ロックたちが美味しそうにお酒を飲む姿を見たヒカリが、飲みたいと言い出したので止めるのに苦労した。ジェネラルとロードの肉は、オーク肉と比べて柔らかく、格別な美味さがあった。

 これに慣れたら普通の肉が食べられなくなると危惧するほどだ。もちろん、料理人の腕もあるのだろう。が、シンプルに塩コショウで味付けしたステーキも大変美味しかったから、肉質が違うんだろうな。

 その夜は大いに騒ぎ、久しぶりにのんびりと過ごすことが出来た。

 ちなみにヨルの持つペンダントには家紋を証明する装飾が施されているらしく、それを見て真偽官はヨルの身分を把握したとのことだった。

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