第67話 真偽官
到着した町の名前はレントと言った。
そこの商業ギルドに連行され、そこでギルドマスターのステートより糾弾されている。なんでもギルド員を不当に扱ったことに対する抗議と言っているが身に覚えがない。ロックたちが先に報告に来ているからどうなっているか聞こうとしたら、手錠をかけられた状態でやってきた。
「どうなってるんだ?」
すれ違い様耳打ちすると、件の商人たちの報告を受けてこのような扱いを受けていると言った。抵抗は商業ギルドの兵士に囲まれたため、ソラたちが来るまで素直に従うことにしたらしい。
「どう言うことですの? ロックさんたちの扱いもそうですが、何故私たちが
レイラはお冠だ。
「何を言う小娘が。お前たちが我がギルド員を不当に扱ったのは明白だ。賠償金諸々、冒険者ギルドに抗議しているところだ。それにそこのお前、お前は商業ギルド員だったな。罰金の支払い及び、ギルド追放だ!」
ふう、ヒカリと手を繋いでおいて良かった。激おこですよ。殺気駄々洩れですよ。
ステートはそんなヒカリの様子に気付いた様子もなく、空気を読まずにある事ないこと罪状を読み上げる。
「そもそも、何で商業ギルド員の俺が護衛をするんだ? 依頼も受けてないのに」
「むしろあいつらが商隊を引き連れて、乗合馬車を見捨てたんだぞ」
「勝手に逃げて来て我が物顔で居座ろうとして、むしろ迷惑をしたのはこっちなんだが?」
抗議をしたが聞く耳を持たないようだ。
そうこうしていると、件の商人たちが現れた。何人かがニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべている。
「反省の色がないな。警備兵に突き出した方が良さそうだな」
ステートが指示を出そうとしたその時、ヨルが一歩前に出た。
なんかヒカリ以上に怒っているような気がするのは気の所為か?
「師匠に対するその態度……いい加減にしてくれませんか?」
横顔を見ると、目が据わっていますね。
「何だ小娘。文句でもあるのか」
「そこのあなた」
ヨルはその全てを無視して、カウンターにいる職員に声を掛けた。
「教会に行って、真偽官を呼んできなさい」
その言葉を受けて、ステートたちの顔が引きつった。
「何を勝手なことを! 聞く必要はない」
その言葉に職員が顔を強張らせて、委縮してしまった。
「少し黙っていてくれませんか?」
静かに怒っている。目が危ない光を宿してる気がする。
「ヨル・アポステルが真偽官を要請します。至急、教会に連絡しなさい」
その言葉を聞いて、場が凍り付いた。ような気がした。
ステートも、商人たちも、ギルド職員たちも。
レイラたちは気にした様子がないが、俺とロックたちは何故場の空気が変化したのか分からない。
「どうしました? 行きなさい」
それは有無を言わさない迫力があった。
命じられた職員は、慌ててギルドを飛び出していった。
「あ、あの……」
ステートが話しかけてきたが、一睨みして黙らせていた。
「なあ、これってどういうこと?」
「あ~、ヨルちゃんは、実は良いところのお嬢様なのですわ」
レイラに尋ねたらそう小声で返ってきた。
ヨルのイメージって、一言で言って魔法オタクだったんだがな。新しいものを発見して一喜一憂する姿が印象的な子だ。魔法に人生捧げてるとまでは、言い過ぎか?
だから目の前のその佇まいを見ると、二重人格? 同じ人? と思わずにはいられない。
ヒカリもその姿には驚いている。
しばらくすると出ていった職員が汗だくで戻ってきた。息も切らしている。
続いて入ってきた神官? は涼しい顔で息一つ乱れていない。その後ろからは複数の警備兵の姿もある。
「困りますね。我々への要請はしっかりとした手続きを……」
真偽官の目がヨルを捉え、
「もしかしてアポステル家の嬢ちゃんか? 君が要請したのかい?」
ため息交じりに言った。
一目見て分かるものなのか? もしかして真偽官って人物鑑定のスキル持ってたりするの?
「申し訳ございません。ただそこの者たちの不正を見過ごすことが出来ませんでしたので」
うん、確かに正しいけど。本当の理由はちょっと違うよね? 不正よりも俺に対する態度に何か怒ってましたよね。
「それで何を
「真実を」
ヨルは要請した理由を真偽官に説明する。
それを横で聞いている商人たちの顔は、最早真っ青だ。
「真偽官レントが問いかけます。全てハイで答えてください」
「貴方は商業ギルドのマスター、ステート」
「貴方はアウローラ商会の商人、エンリケ」
「貴方は商人エンリケの報告に虚偽がないことを調査しましたか?」
「貴方は商隊を率いて正しい行動を常にとりましたか?」
「貴方は……」
「貴方は…………」
「貴方は………………」
色々な言葉を言って確認しているようだが、あれで分かるのだろうか?
分かるんだろうな。
十分ほどで質問が終わり、レントはただ警備兵に命じる。
「拘束せよ」
と、言う短い言葉で。
「どうなるんだ?」
「私にも分かりませんわ」
レイラに聞いたが、真偽官というのがそもそもフリーレン聖王国にしかいないみたいで分からないと言う。
「冒険者ロック。貴方たちの名誉は回復しました。この者たちには然るべき罰を与えます」
「ま、待って下さい。私はただこの者たちにそう言われて」
ステートが言い訳をしているが、レントは相手にしない。
「また後程連絡するかもしれません。どうしますか?」
「冒険者ギルドに連絡してくれ。ただ降臨祭を見に行く予定がある。馬車の出発次第ではこの町にはいないかもしれない」
「分かりました。なら二日ほどお待ちください。聖都への馬車も用意させます」
レントはギルド職員を見て言う。
商業ギルドに馬車と宿の手配をするようにと、圧力をかけているようだ。
「お姉様、私たちはどうしますか?」
「一度冒険者ギルドに行きますわ。色々と報告も必要ですし。ロックさんも宜しいですの?」
オークの死体を持つ俺も、付いて行かないといけないようだ。
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