第66話 合流
森でオークの死体を回収し、村に戻ってきたのは朝日が昇った頃だった。
距離があったのもあるが、血抜きに時間が掛かったのが遅くなった大きな要因だ。
その間、しっかりと説教した。
倒せたのは魔力の扱いもそうだが、前回の襲撃でレベルが上がっていたというのもあるので、倒せるだけの下地は整っていたのかもしれない。
だからといって褒めると、勘違いしてしまうかもなのでここは心を鬼にした。
レイラはそれでも分かっていたようだから、後はリーダーとして妹たちをしっかりと導いて貰いたいものだ。決して途中で面倒になった訳ではありませんよ?
「無事討伐出来たようだな」
「大丈夫でしたわ。奇襲が功を奏して、連携されなかったのが大きかったですわ」
森を味方に付けた勝利だとレイラは強調した。
「そうか。それでもジェネラルを討伐出来る腕だ。大したものだ」
ロックは同じBクラス冒険者として、手放しで褒めている。
オークジェネラルは兎も角、上位種の撃退というのが大きいのだろうな。王国だといるかもしれないということで、緊急依頼が出るほどだし。
それからロックのオーク討伐宣言で、村人たちは大いに沸いた。喜びもあるが、敵討ちをしてくれてホッとしたと言った方がいいか。
遅い朝食はいつもより豪華で、軽い宴会のようになった。
そして宴会をしていると、ついに商隊が村にやってきた。
最初商隊は村の様子に驚き警戒していたが、ロックたちが商隊に向かい現状を説明して連れてきてくれた。
「私が商隊のリーダーを務めさせてもらっている、リットと申します」
好々爺然としているが、なんか油断ならない印象だな。ニコニコしているが、心の内では何を考えているか分からない印象を受ける。
村人の代表がリットに食料を売ってくれないか頼んでいる。
乗合馬車の御者は一緒に町まで行けるか交渉している。
逃げて来た商人たちも馬車に乗せてくれないか頼んでいる。
協議というか交渉の結果。野菜を中心とした調味料などを少し安めに売ってくれた。村人は感謝し、足りないお金は俺が出した。結構この国にきてお金は稼いでいるからな。
一応オークを売れば、回収出来るという計算もある。
乗合馬車も同行を認められたようだ。これにはロックたちが一緒に乗って行くことになった。詳しい説明をする人が必要だったからだ。
俺とレイラたちは次の便を寄越してもらい、その間村の警備をしつつ過ごすことになった。オークの脅威がなくなったとはいえ、柵も家もボロボロだ。
村の代表が一緒に行き、領主に陳情するようなので、あとは領主の裁量次第か。すぐに会えるかは分からないらしいが。
空いた席には商人たちが乗り込むことになった。どうも大きな商家の関係者がいるらしく、断れなかったようだ。もちろん乗車賃の請求はするようだったが。
「行ってしまいましたわ」
「レイラたちは良いのか? 降臨祭に間に合わなくなるんじゃないのか?」
降臨祭がいつからなのか知らないけど。
「それなら大丈夫ですわ。余裕を持って向こうを出てきましたから。確か降臨祭が始まるまで二十日ほどまだ時間がありますわ」
「聖都までかかる時間は?」
「馬車なら十日もあれば十分ですわ」
次の町を発てば聖都だったか。急ぐ旅でもなかったから、日程を特に調べてなかったからな。そもそも降臨祭を知らなかったわけだけど。
俺たちは馬車を見送ると、色々と手分けして準備を始めた。
まずは俺とヨルは村を囲う壁を作ることにした。元々囲っていた柵はボロボロで、新しいものに替えるぐらいならいっそ土魔法で外壁を作ってしまおうということになった。主にヨルの訓練の意味合いが強い。
男たちは使える材木を集めて、使えそうな家を補強している。領主次第では村ごと移住の可能性もあるが、辛いことがあったとはいえ、思い入れのある場所なので出来れば再建したいと思っているようだ。
女たちは使える家財道具をより分けている。あとは自分の家から使えそうなものを持ち出してきている。
レイラたちは主に森などに向かい、細々としたものを採取してきている。食料だったり、薬草だったり色々さがしている。ダンジョン専門とはいえ、そこは冒険者。成りたての頃は採取依頼で森にも良く入っていたと言う。
商隊が村を発ってから五日経ったある日。それは村にやってきた。
領主に陳情に行った村人の話によると、村の存続が仮ではあるか決まったとのことだった。他の村や町から移住者を募る約束をしてくれたらしい。
とりあえず警備の問題があるため、警備隊を十人派遣して貰ったようだ。皆年が若く独身との話だった。移住候補者か?
そしてもう一つの一団は商業ギルドから派遣された者たちだった。
第一印象は最悪で、威圧的な物言いでまるで俺たちを犯罪者であるかのように接してきた。
特にリーダーが酷い。他のメンバーは何処か迷惑そうにしているが、誰も止めようとはしない。馬車の中で聞いた話によると、あのリーダーは我が儘でどうしようもなく、すこぶる評判は悪いらしい。親がそこそこの権力持ちのため、誰も文句も言えずに我慢する日々を送っているとか。同情するな。
村人たちとの別れもそこそこに、強引に馬車に乗るように命令された俺たちは、一路馬車に揺られて次の町へと旅立った。
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