第44話 聖都へ・1

「お、何だ出かけるのか?」

「一度聖都を見に行こうと思って」

「歩きでか?」

「満員で予約が取れなかったからな。こればかりは仕方ない」

「大丈夫なのか?」


 視線はヒカリに向けられる。


「任せる。主は守る」


 胸を張るその姿に、門番は生暖かい視線を向ける。


「本人もやる気だしな。無理せずのんびり進むつもりだ」

「そうか。街道沿いに行けば安全だと思うが、何があるかは分からない。注意は怠るなよ」


 忠告を受けて出発する。朝早い出発のためか、出かける冒険者の姿が多い。

 こちらを伺うように見ている者もちらほらいる。

 冒険者じゃないから冒険者ギルドには行かなかったけど、魔物の情報やらを調べるために足を運んでも良かったかもしれない。

 およそ一時間歩き、休憩してまた一時間歩き、少し早いがお昼にすることにした。

 街道から少し離れた場所で野営の準備。土魔法で簡易な料理場を作成し、準備をする。

 ヒカリは何も手伝わないでその様子をじっと見ている。心なしかそわそわしているような気がする。

 今日のお昼は野菜多めのスープ。お肉はウルフ肉をつみれのようにしたのを少しだけ入れている。お肉がないとヒカリが悲しむからだ。

 食事をしているといくつかの商隊に追い越された。進む速度は歩く速度よりも少し早い程度のためか、護衛の冒険者は馬車の周りを歩いている。

 食後の休憩をとりながらステータスの確認をした。


名前「藤宮そら」 職業「スカウト」 種族「異世界人」 レベルなし


HP490/490 MP490/490 SP490/490(+100)


筋力…480(+0)  体力…480(+0)  素早…480(+100)

魔力…480(+0)  器用…480(+0)  幸運…480(+100)


スキル「ウォーキングLv49」

効果「どんなに歩いても疲れない(一歩歩くごとに経験値1習得)」

経験値カウンター 20719/49000


スキルポイント 4


習得スキル

「鑑定LvMAX」「人物鑑定Lv4」「鑑定阻害Lv5」「並列思考Lv6」


「ソードマスターLv6」「身体強化Lv7」「気配察知LvMAX」「魔力察知Lv4」

「自然回復向上Lv7」「状態異常耐性Lv5」「気配遮断Lv6」

投擲とうてき・射撃Lv4」


「魔力操作Lv8」「生活魔法Lv7」「火魔法Lv4」「水魔法Lv3」

「空間魔法Lv8」「錬金術Lv8」


「料理Lv6」


NEW

「風魔法Lv2」「土魔法Lv2」「光魔法Lv4」「神聖魔法Lv3」


 新しく覚えたスキルは風魔法。土魔法。光魔法。神聖魔法の四つ。

 風と土と光はそれぞれの属性魔法を使えるようになった。

 神聖魔法に関してはまずは回復魔法が使えるようになり、レベルが上がったら状態異常の回復魔法も使えるようになった。レベルが上がっていくと回復量なども増していくようだ。

 また魔法を使っていて、いくつか分かったことがある。

 魔法はイメージこそ全て。ただしこれには注釈が付き、俺もしくは異世界人限定となる。

 クリスが魔法を使っているところを見たが、詠唱をして魔法名を唱えていた。それが俺にはない。基本的に魔法名だけで使っている。さらに付け加えるのなら、実は魔法名もいらない。ただ魔法のイメージをしやすくするために魔法名を言っている。

 また魔法はスキルで覚える魔法だけでなく、他にも色々使える。これは戦闘で使うというよりも、生活魔法の強化版と言った方が良いかもしれない。

 料理の火を起こしたり、土魔法で簡易の調理場や野営しやすい環境を整えたり、光魔法で夜道を照らしたりと、活躍している。

 土魔法と光魔法なんてそのためにとったと言っても過言ではない。イメージで使うならわざわざスキルをとる必要がないと思うかもだが、これが不思議とスキルを覚えないと魔法は使えなかった。正確には、強力な魔法が、だが。

 生活魔法で一度やってみたら、どうしてもMPが足りなくなった。マナポーションをがぶ飲みすれば使えなくもない、かも? というレベルだった。

 他にスキルポイントを使って状態異常耐性をLv4からLv5に上げた。麻痺無効になってからは、麻痺を付与したナイフで斬りつけても熟練度が上がらなかったためだ。今後も状態異常耐性はスキルポイントで上げる機会が増えるかもしれない。

 ちなみにLv5で覚えたのは石化耐性だ。


「主、そろそろ行く?」

「足は大丈夫か?」

「うん。この薬草は凄い」


 活力草を使って湿布のようなものを作り、ヒカリに試してもらっている。歩いている以上俺には効果を調べる術がないからな。かといってそのためだけに走るとか、したくない。そもそも自然回復向上があるから効果の確認が出来ない可能性もあるが。

 移動を開始したが、商隊の姿が見えない。のんびりと食事の準備をしたからな。

 先を急ぐ商隊だと、お昼は保存食を中心の簡易な食事になる。準備をする時間が短く済むから、その分移動にあてる時間が増える計算だ。

 商隊の集団に追いついたのは、あと少しで日が暮れる頃だった。

 既に野営の準備を商隊ごとにしている。風に乗って料理の匂いが流れてくる。

 別々の商隊がまとまっているのは、安全確保の意味合いが強い。数が多ければ夜襲を受けても対応しやすいからだ。盗賊対策には一番効果的な手だ。


「俺たちもそろそろ休むか」


 少し離れたスペースで立ち止まり、そこで野営の準備をはじめた。

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