第43話 商業ギルド
宿をとるのに苦労した。入場するのに多く並んでいたのが殆ど商隊だったため、いつもより利用客が多かったらしい。
少し割高の部屋しか残っておらず、三日分の支払いを済ませた。合わせて銀貨六枚した。
「主、これ美味しい」
奴隷契約をして、ヒカリの俺への呼び方が変わった。
今まで通りで良いと言ったが、頑なに拒否された。何か独自ルールみたいのがヒカリの中にあるのだろうか? 結局折れたのは俺だった。
「これぐらい上手い料理が作れるようになれたらな」
「主頑張れ」
「そこは私に任せて、と言うところだぞ」
「人には得手不得手がある」
それは今後も料理しない宣言だろうか……。
その日はベッドに二人並んで寝た。正確には抱き着かれてだが、もう慣れたな。最初の頃のドキドキは最早ない。妹がいたらこんな感じだろうか? 一人っ子だったから分からない。周囲の話を聞く限り、あまりいいものでもなさそうだったが。
目が覚めて朝食を食べたら宿を出た。行き先は商業ギルドだ。
朝食を食べてもまだ眠そうな、ヒカリの手を引きながら歩く。まだ旅の疲労が抜けてないのかもしれない。
ギルドに到着し説明を受けた。王都で訪れた時に受けた説明とほぼ同じだった。
唯一追加されたのは、ギルドカードを地球でいうところの、キャッシュカードと同じように使える機能が備わっているということ。前回の訪問で説明がなかったのは、商業ギルドに実際に登録する時にはじめて説明を受けるからだった。
「登録料は自動で引き落とす感じか?」
「一応選択できますが、だいたいの方はそうしています」
支払いを忘れていて、いつの間にかカードの効果が失効してたなんて避けたいしな。
「カード払いが出来るお店には、カード払い可のマークがあるのでそれで確認してください。ただ屋台などではほぼ使えません。いくらかは手持ちを持っていた方が、無用なトラブルと手間を回避できると思います」
アイテムボックスに入れておけば別に関係ないんだけどな。
金貨三枚分を銀貨、銅貨、銭貨に分けてアイテムボックスに仕舞い、他はカードに入金した。
「そうだ、これを買取してもらいたい。可能だろうか?」
バッグから回復ポーション、マナポーション、スタミナポーションを取り出しカウンターに乗せた。その数合わせて三〇、一〇、一〇の計五〇本。
「ポーションですか。大丈夫ですよ。担当の者を呼びますので、お待ちください」
奥に呼びに行き、すぐに担当者を連れて戻ってきた。
眼鏡をかけた、神経質そうな男が興味深げにポーションを眺めている。
「これはどこで手にいれましたか?」
「それは旅の途中、ちょっとした伝手で手に入れたものです」
自作とは流石に言えない。秘密だ。
「かなり良い出来のようです。これを全て売ってくれるのですか?」
「あ、はい。よろしくお願いします」
「そうですね。回復ポーションは銀貨三枚、マナポーションは銀貨五〇枚、スタミナポーションは銀貨一〇枚。合わせて金貨六枚と銀貨三〇枚になりますが、どうですか?」
「……それで大丈夫です。お願いします」
「カードに振り込みますか?」
「金貨だけ振込でお願いします」
銀貨を受け取り、商人ギルドを出た。
「どうした主?」
「ポーションの価格の基準が分からなくてな。ヒカリは知ってるか?」
「知ってる。主のポーションは高級品」
「そんなことないぞ。あのポーションの品質は微とか小とか一つずつ違ったんだがな」
「? 主何を言ってる。あれは全て高品質品」
なんか話がかみ合ってない。
ヒカリの説明を根気よく聞いて分かったことは、ポーションは色で品質が分かれているということ。
薄ければ効果が悪く、濃くなればなるほど効果が良い。そのため俺のポーションは色がしっかり出ているため、高く買い取られたということだった。
それは良いのか? 鑑定で調べた限り、微、小、中、高と表示された。俺はそれが品質で回復量が違うと思っていたが、違うのだろうか。
検証が必要か。だが回復ポーションを使っての検証とか、自分を傷付けてHPを減らす必要があるのだが……。痛い思いを進んでしたいとは思わないんだよな。
それだとマナポーションかスタミナポーションになるが、地味に高いのが。
けど検証はしておいた方が良い。
「主、何処行くの?」
「道具屋。と、武器屋にも行きたいな。聖都を目指して旅したいから、装備を整えよう」
「分かった。武器欲しい、この手で主守る」
「ありがとな。けどあまり無理するなよ。ヒカリが傷付く姿は見たくないぞ」
「主悲しい?」
「ああ、だから命は大事にだ」
「うん、分かった」
あとは乗合馬車の出発時間を調べて……はい、満車でこれ以上乗れない、と。
「主、歩くの?」
「歩きだな。大丈夫か?」
コクリと頷く。なんか気合が入っている気がする。
「とりあえず明日は料理の材料の買い出しな。屋台も回って美味いもんも食おう」
「素晴らしい提案」
食に貪欲になっているのは気の所為じゃないな。
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