第33話 討伐依頼・2

「つい先日のことだ。オークの襲撃を受けた。主だった男たちは村を出ててな、女たちと家畜がさらわれた。駆け付けて取り戻そうとしたんだがな、見ての通り返り討ちだ。奴らは味をしめた、だから多分また襲ってくると思う」


 拳を握りしめ、悔しそうに言い放った。


「なるほど。それで頼んできたのか」

「ああ、君はオークと戦ったことがあるか?」

「ないな。それと最初に言っておくが、戦闘経験自体それほどない」

「……自信満々に言われてもな」

「事実だからな」


 何故苦笑する。


「だけどオークか。明日にでも誰か依頼を出して貰いにいった方がいいと思う」

「そうだな。その通りだ」


 期待されないだけましだ。うん、なるほど。納得だ。


「この辺りには元々オークがいたのか?」

「いないはずだ。ゴブリンだってここ数年は見かけなかったほどだ」

「そうか」


 離れているが、もしかしたら流れてきたのかもしれないな。打ち漏らしの可能性が大か。魔人の出現でうやむやになったらしいからな。


「俺は予定通りウルフの討伐に行けばいいのか?」

「そうしてくれ。オークもそうだが、ウルフも脅威であることには変わりがないからな。皮肉なことに、オークのお陰でしばらくはウルフは近くまでこないだろうがな」


 匂いに敏感なウルフは、オークの匂いの残るこの村には来ないだろうとのこと。


「避難はしないのか? オークがまた来るリスクはあるんだろう」

「それも考えたんだがな。年寄りも多い、だから迷ってるんだ」


 歩いて逃げている時に襲撃を受けるなら、家畜を囮にして一時的に避難した方がいいと考えているようだ。脅威はオークだけではないしな。


「寝床はそっちだ。狭くて悪いんだがな」

「屋根のあるところで寝れるだけでも十分だ」


 簡単な夕食をご馳走になり、簡素な空き部屋の一室を借りた。


「ステータスオープン」


名前「藤宮そら」 職業「スカウト」 種族「異世界人」 レベルなし


HP360/360 MP360/360 SP360/360(+100)


筋力…350(+0)  体力…350(+0)  素早…350(+100)

魔力…350(+0)  器用…350(+0)  幸運…350(+100)


スキル「ウォーキングLv36」

効果「どんなに歩いても疲れない(一歩歩くごとに経験値1習得)」

経験値カウンター 3/36000

スキルポイント 6


習得スキル

「鑑定LvMAX」「鑑定阻害Lv5」「並列思考Lv5」


「ソードマスターLv6」「身体強化Lv7」「気配察知LvMAX」「魔力察知Lv3」

「自然回復向上Lv6」「気配遮断Lv6」「投擲とうてき・射撃Lv3」


「魔力操作Lv7」「生活魔法Lv6」「火魔法Lv3」「水魔法Lv2」「空間魔法Lv7」「錬金術Lv7」


「料理Lv4」


NEW

「人物鑑定Lv2」


 人物鑑定。これは鑑定のLvが10になって上限に達した時に新たに出てきたスキル。覚えるのにスキルポイントを2消費した。

 これを覚えたことで人を鑑定することが出来るようになった。

 今はLvが低いためか、名前と職業、種族までしかみることが出来ない。

 例えば先ほどランツを鑑定してみたが、


名前「ランツ」 職業「狩人(元冒険者)」 種族「人間」


 と、表示された。

 ランツがオークの討伐は俺には無理といったのは、元冒険者としての経験から判断したんだろう。

 あとは新たに覚えたスキルは、空間魔法の結界術か。自分の周囲を囲んだり、一面だけに集中して防御壁、シールドのようなものを展開することが出来る。いわゆる魔力の盾だ。これも魔力を込めることで強度が増すが、普通に使うだけでもMPを三分の一ほど消費する。

 実験してみて分かったのは、範囲を絞って術を発動すれば、銃弾でも弾くということ。一〇発撃ってもビクともしなかったが、シールドを維持する時間が限界になって消えた。

 また周囲を囲うように範囲を展開した場合は、銃弾がぶつかったら一発で砕けた。それでも威力は相殺したから、一回は防ぐことが出来たことになる。あとはこれが一回は確実に防ぐことが出来るものなのか、その検証をしたいところ。


「オークか……」


 MAPを表示させる。ウルフはランツの言ったとおりの場所に七体いる。

 他に五体と七人の反応がある場所がある。これがオークとさらわれた村人だろう。

 両方とも村からそれほど離れていないのに驚きだ。MAP表示は未踏破のところは離れていると拾えないからな。

 そして反対側の村から離れた場所に、別の反応がある。LvがMAXになっても、曖昧な表示。それこそ意識しないと見失ってしまいそうな反応。だけど確かに、それは存在する。


「これがそうか……」


 以前の採取依頼の時に捉えた反応。今は意識して探れば見失うことがない。


「あれもどうにかしないとだな……」


 監視されている、ような気がする。採取の時もそうだったけど、この依頼にも付いてきているぐらいだしな。

 ただ何故なのかが分からないのが何とも言えず不気味だ。


「ただそれよりも問題はあっちか……」


 オークとさらわれた人の表示が重なって一つになっている。

 人型の魔物は、人間の雌をさらい同胞を増やすための苗床とすると資料にあった。

 俺は目を逸らす様にMAP表示を消し、眠りにつくことに意識を集中した。瞼の裏に、七つの表示がぼんやりと焼き付いたように残った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る