第29話 魔力察知
採取依頼を終えた翌日。
配達依頼を終えて宿に戻った俺は、ベッドに飛び込むようにして体を横たえた。
頭が痛い。ズキズキと痛む。水魔法で冷やしたタオルをこめかみにあてる。気休め程度の処置だけど、気分的に痛みがひいたような気がする。
これは気配察知を使い続けた代償だ。無理をしたと自分でも思うけど、熟練度を上げてレベルを上げるためだ。
気配察知の熟練度の上げ方は、使用して気配を察知すればするほど上がる。それは数が多くなれば多くなるほど比例する。対象の感度を意識してあげると、さらに追加されて上がりやすくなる。
ただこの時、限界以上にスキルを発動したらSPが消費され、なくなるとその反動が体に返ってくる。今がその状態だ。が、その時の俺はそれを知らなかったから、スタミナポーションを飲めば治ることに気付かない。
しばらく横になっていたら息が整ってきて、頭の痛みも徐々にひいていった。
水を一口飲んでスキルの確認をする。
「気配察知LvMAX」
ついに限界まで上がった。他のスキルもそうだとすると、スキルのLvは10が上限か。
呼吸を整えると、今一度気配察知を発動する。反応の大きい者、薄い者と分かれている。この反応の薄い者は、スキルでいう気配遮断もちなのかもしれない。ここからだと答え合わせは難しいな。要、確認だ。出来れば肉眼で。
そしてスキル欄に、今まで見たことのないスキルが一つ増えていることに気付いた。
NEW「魔力察知」
魔力察知は、そのまま対象の魔力を感知するスキル。気配察知とどう違うんだ? ただ気配察知を上限まで上げて出てきたスキルである以上、索敵系のスキルだとは思うんだが。
スキルポイントは近頃使ってないから余裕がある。覚えても何かしら使い道はあるはず……だと思いたい。ただ覚えるのにスキルポイントが2必要になるのか。
悩んだ末、魔力察知を選択してポイントを振った。
早速使ってみると、反応がある。レベルが低いからか範囲は狭い。今確認できるのは宿だけで、大小反応が分かれている。
単純に魔力量を確認するスキルなのか? それだと気配察知で十分なような気がするが。やっちゃったか……。
いやいや、結論を出すのはまだ早い。色々検証しながらレベルを上げていこう。
ついでに職業を確認すると、スカウトの職業が増えていた。偵察系の職業か。索敵系スキルに補正が付くとかあるな。しばらくソロで活動することが多いし、切り替えて置くか。
「あら、今日は顔色が良いわね。調子が戻ったの?」
食堂に行くと、開口一番女将さんが声を掛けてきた。
心当たりがあるな。そんなに酷かったか? 否、酷かったかもしれないな。
「ここ最近働きすぎだったかも。今日はゆっくり休もうと思ってる」
「冒険者は忙しいものね。まだ討伐から帰ってこないもの。こっちも商売あがったりで困ってるのよ」
冗談なのか本気なのか分からない言葉を残して去っていった。
多分オーク討伐のことを言っているんだろう。
今日あたりポーションを持って、騎士団が出発すると言っていたな。
野次馬でもしにいくか。
食事を終えて門のところまで行くと、結構な人だかりが出来ていた。
みんなの視線の先にいるのは、一糸乱れぬ動きと、統一された装備をした騎士たちだ。
騎士団長と思われる人の号令とともに、騎馬と馬車が走り出す。
全員で二〇〇人ぐらいはいるのか? 一斉に動き出したから地響きのような音がした。すぐに歓声によって聞こえなくなったけど。
ひとしきり騒いだ住人達は、騎士たちの姿が見えなくなるとちりじりに散っていった。
代わりに乗合馬車が町の中に入ってきた。
眺めていたら、見知った顔が馬車から降りてきた。
「お、ソラじぇねえか。出迎えご苦労」
「あ、ゴブ……」
反射的に声を出したら、素早く間合いを詰めてきた。厳ついおっさんのどあっぷなんて嬉しくもない。なんて罰ゲームだ。
「ん、何かな?」
「……久しぶりです、サイフォンさん」
「おう、お前も元気そうだな。さっき騎士団らしき連中とすれ違ったが、あれは何だ?」
「ギルドに行けば分かるけど、オークの討伐隊だよ」
「オークの? 結構な数がいた気がするが」
「規模が大きいらしい。上位種もいるかもって話。冒険者も結構な数が行ってるから、宿は比較的空いてるよ」
「そりゃ運がいいのか? ソラは参加しねえのか」
「条件がオークと戦った経験があるかないかだったし。あ、王都に行く途中にいるから、今そっち方面の移動が停まってる」
「マジか。とりあえずギルドに顔だしてくるわ」
ゴブリンの嘆き一行は、一度集まりギルドの方に向けて歩いて行った。
俺は付いていかず、町の散策をすることに。主に屋台を冷やかし、ご当地グルメに舌鼓を打つ。当り外れはあるけど、結構美味しかったりするんだよな。
食事を終えたら武器屋でメンテナンスを頼み、鉱石類の価格を見ながら町中を歩く。王都への道が塞がっているせいか、徐々に道具類の値段が上がってきているような気がする。ポーションなんて二割も値段が上がってるな。
「オークか……」
まだ実物を見たことがないんだよな。ゴブリンと違って身の丈二メートルもあり、筋肉質ながら素早い動きを見せる。皮膚も固く、ナマクラな武器だと傷を付けることも出来ない、とかあったな。
危険は避けたいけど、戦ってみたいと思う自分もいる。正確には倒せるかどうかを知りたいと思う自分が……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます