第27話 オーク討伐・2

 町に戻ってきたら、少し慌ただしい雰囲気に包まれていた。何かあったのか?

 ギルドに採取依頼の報告をしたら、すごく喜ばれた。魔力草が不足してるって言ってたしな、と思ったら、オーク討伐に行った一行からマナポーションの追加注文を受けて在庫が残り僅かになっていたらしい。


「討伐の方で何かトラブルでもあったのか?」


 急いで準備をしていたとはいえ、かなり余裕を持って補給品を用意したと言っていた気がする。


「それが現地で確認したところ、オークの規模が予想よりも大きいことが分かりまして……現場の方も混乱しているみたいです」

「大丈夫なのか?」

「襲撃されたようですが撃退に成功したそうです。ただ……いえ、何かありましたらギルドの方から発表があると思います。気になるようでしたら、明日の朝にでもまた来てください」


 薬草と活力草もあれば売ってくださいということなので、そちらも少し放出した。

 ポーション類はそのまま売るわけにもいかないしな。

 町を歩くとちらほらとオークの噂が囁かれていた。

 オークの討伐は結構な規模で出発してたしな。それに商人たちが情報収集しているから、町の人も知ることになったのだろう。

 王都への道が安全に通れないとなると、目的地を王都としていた商人はさぞ困るだろう。タイガーウルフの出現により、南門都市経由で王都に向かおうと思っていた者も少なからずいるはずだしな。俺もそうだし。動機はちょっと違うけど。

 とりあえず一日分の宿泊費を支払って宿をとった。

 多くの冒険者が討伐にでているからか、宿には空きがまだあった。

 ただこのまま足止めを食うものが増えたら、宿が埋まるかもしれないな。

 明日の朝一にギルドに行って、情報収集する必要があるな。もし討伐の目途がたたないようなら、その間何かの依頼を受ける必要がある。当分依頼を受けなくても生活は出来るけど、お金はあるに越したことがないからな。奴隷を買うことがあるかもしれないし。


 ギルドに行くと情報が掲示されていた。冒険者が群がり、それを見ている。人の壁が出来ているな。

 しばらくは確認することが出来そうにないから依頼を見る。

 薬草関係の採取依頼が増えている気がするな。ん? 報酬も上がってらっしゃる。

 けど採取場所の地図を見ると、前回いった場所が歩いていくには一番近い場所か。注釈にまとめて採取出来る場所、と入れた場合だけど。

 歩いて半日の場所は採集量が安定してない、と。行く人が多いから採取され尽くしている可能性があるのか。

 前回行った場所は魔力草はそれなりにあったけど、薬草と活力草の量が少なかった気がする。

 依頼掲示板の前で唸っていたら、人が少なくなって来ていたのでそちらに移動した。

 何々……オークの規模に関する情報が上がっている。初戦で激突した時に上位種の目撃情報が複数人からあったため、現在斥候を放って確認を急いでいる、と。

 あとは簡易的な砦、防衛拠点を構築中か。領主に騎士団の応援要請もしていると書かれているな。

 いっそ騎士団が来るまで撤退すればいいと思うんだが、斥候の目を逸らすためにわざと防衛拠点を築いているのか?


「あ、あの~」


 掲示板を見ていたら声をかけられた。確か受付嬢の一人だった気がする。


「何ですか?」

「えっと、ソラさんですよね?」

「そうだが」

「ああ、良かった。少しお話したいのですがあちらでいいですか?」


 そこは空いている受付だった。


「それで話とは?」

「依頼をお願いしたいのですが……」

「……それは指名依頼ということか? 俺Dランクだけど」

「指名依頼というか、なんでも採取依頼のプロという話を聞いたので、それで薬草の採取依頼を受けてもらいたくて」

「誰に聞いたんだかそれ」

「……冒険者の方が噂していたのと、フェシスの冒険者ギルドから報告がありまして」


 納得の解答か? それよりもギルド同士で連絡する手段があるということか。


「今回の討伐で必要というなら期待しないでもらいたい」

「な、何故ですか?」

「どれぐらい必要としてるか知らないが、まとめて納品というなら採取出来る場所が遠い。移動だけで一日、否、二日はかかるか?」

「……確かにたくさん採れる場所は距離的に遠いです。仮に移動に馬車を出すならどうでしょう?」

「それならもう少し時間は短縮出来ると思うが。ただ誰かと一緒に採取するとかはやめたいんだけど」

「えー、何故ですか?」

「普通に集中して採取したいからだが」


 嘘だ。本当は採取している姿を見せたくないからだ。

 もしかしたら誰かが違和感を覚えるかもしれないしな。

 馬車を出すなら他にも人を雇って、より多く採取してもらいたいというのがギルドの希望なんだろうな。


「で、どうする? 別に普通に採取依頼を受ける分には構わない。実入りがいいから元々受けるつもりだったし」

「……少々お待ちください。上の者と相談させてもらいます」


 受付嬢は慌てて席を立つと、奥の方に消えていった。

 ん~、薬草不足か。いっそのこと薬草を採取して、荷物だけ運んでもらえば効率がいいのか? だけど中抜きとかされるリスクもあるのか。難しいな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る