第26話 ソロキャンと反省

 野営をする目的の一つとして、料理スキルの熟練度を上げる目的がある。

 町にいると自分で料理することないからな。宿で台所を借りるのも気を使うし、良い顔をしないところもある。

 それにご当地料理ではないけれど、屋台もその町でしか食べられない料理があって、ついそれを口にしてしまうのだ。

 夕食はウルフのステーキと、野草とウルフ肉を使ったスープ。野草は移動中に食べられるものを採取しておいた。

 出汁の粉末とかあれば、かなり野営の食事事情が改善されるかな。

 ウルフの骨を煮込み、塩を投入。しばらくしてから野草とウルフの肉を入れて、火力を調整してもう一煮立ちさせる。

 ステーキは肉の筋をきり、シンプルに塩コショウを振りかけて焼くだけ。香辛料や調味料が高いんだよな。

 味の薄いスープを口にしながら考える。ある程度生活に余裕が出てきたので、次を考える必要がある。やっぱ食だよな。美味しい食事はそれだけで心を豊かにしてくれる……はず。

 それで商売出来るようになれば、わざわざ冒険者を続ける必要もなくなる。

 色々な所を旅して回るにしても、身分は行商人でもいいしな。

 あとは懸念するのはこのギルドカード。身分証として持っているけど、これがこの世界でどれだけの意味を持つか。今のところ町や村で入場する時と、ギルドで依頼を受ける時と報告する時に使用しているけど、例えば使用した時に履歴のようなものが残るのか。

 良く思い出してみると、入場する時にギルドカードを提示すると、何か魔道具のようなものにかざしているのを見たことがある。確か説明で、犯罪がないかを確認しているんだったか? 村には確かなかった。

 依頼の受注や報告の時にも、ギルド職員にカードを渡して、何やら操作しているのを受付越しで見たことがある。疑ってかかった見方をすると、足跡を辿ることが出来てしまうということ。

 王国にいる間はいいけど、他の国に移動した際には身分証を別に作り直した方が良いだろう。王国の奴らが使えないと切り捨ててくれればいいけど、そう簡単には諦めてくれないかもしれない。対策は必要だ。

 食事を食べ終えて、一息ついたら意識を切り替える。

 考えることは今日の戦闘に関して。

 銃は十分戦闘に役立つことが立証できた。

 ただ問題点がないわけではない。慣れてないというのもあるけれど、接近されると冷静に使えないということ。元々遠距離用の武器だからそれは仕方がないかもしれないけれども。

 いっそもう一丁作って二丁拳銃にするか? それとも連射できるように改造か?

 利き腕じゃない方の精度の問題が出てきそうだな。スキルの補正もあるから、練習さえすれば扱えるようになるかもだけど。

 あとは威力。ウルフの体は普通に銃弾が貫通した。あとは外皮が硬い魔物に効くかどうか。特にオークとかはどうなのかな。

 無理なら弾丸。加工して強度をあげたりすれば威力が上がるかもしれない。ただその場合の懸念材料としては、銃身が耐えられるかどうか。

 問題が多い。銃の改造に関しては、錬金術に使う鉱石類を手に入れないと駄目だしな。

 シートを敷き、その日はローブに包まって寝た。

 早く戻る必要もないので、もう一日森の中を散策してみようと思う。

 森を歩きながら鑑定をかける。食用で使えそうな素材がないかを探すのが今日の目的。野草の他に木の実など、探してみると結構あることが分かる。

 自然は食料の宝庫なんて言う人がいたが、確かに。あ、キノコもある。

 けどこれは鑑定がないと駄目だな。しっかり毒性のある植物も存在する。

 これなんか麻痺させる成分があるな。麻痺弾とかこれで作成出来るか?


 アイテムボックスの空き容量がそろそろなくなりそうになってきたので、一度村に戻ることにした。あれからもう一日野営した。

 村に戻ると門番に驚かれた。確かに薬草を採りに行くと言って出ていったからな。日帰りが出来る距離だし。採取時間を考慮したとしても。


「何かあったのか?」

「夢中で採取してたら時間を忘れてた。それとウルフに遭遇して少し迷子になったんだ」

「ウルフに? 何処にいた?」

「薬草採取したところから、さらに北に行ったところで遭遇した。二匹いたからひとまず倒したが……」

「そうか。肉があるなら買うがどうだ?」

「野営した残りでいいなら売ろう。皮はいらないか?」

「ギルドで売った方が高くなると思うがいいのか?」

「荷物が軽くなるなら構わないさ。その代わり、美味い食事を出す様に宿のおっさんに言ってくれると嬉しいかな。特にこの村ならではの料理だとなおいい」

「OKだ。人を呼んでくるから待ってくれ」


 ウルフの肉と皮を売却し、その日は村で一泊した。

 食事は要求通りワンランクアップしたと思う。少し豪華になった。店主は相変わらず無口で愛想がなかったが。

 あとは宿代も何故か半額になった。これはウルフを討伐したことによる報酬だと、門番がわざわざ説明に来てくれた。報酬というよりも感謝の意味合いが強いのかな。

 翌日村を出る時は、少し門番の口調が和らいだような気がする。

 魔物被害は村だと深刻な問題なのかもしれない。

 

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