第24話 オーク討伐・1
配達依頼も今日で三日目。農地のある外周部はまだだが、これで一通り内側は歩いて回れたと思う。
この世界に来て、はじめて奴隷商にもいった。ルリカたちのこともあったが、ソロでパーティーを続けるなら奴隷でも買ったらどうだと言われたからだ。割と本気で。
冒険者の中には、奴隷を買ってパーティーを組むのも珍しくないらしい。ソロで活動すると、どうしても活動範囲が限られてしまうからだ。
奴隷商にいって知ったことだが、奴隷にもいくつかのランクがあることが分かった。
犯罪奴隷。これは刑罰の度合いによって期間が変わってくる。期間が終われば解放しなければならないため、個人で買う人はほぼいない。主に鉱山や農業などに携わる事業主が買うことが多い。重犯罪者になると、今だと黒の森の防衛線に送り込まれることがあるとか。
戦争奴隷。これは戦争で捕虜や捕縛された人たち。要人だと身代金を要求されたら支払いに応じたが、それが一般の人になると処分に困って売る人が続出した。
借金奴隷。これはお金を払えなくなった住人が、家族のために身を売ることでなる場合が多い。その時に購入条件を提示することが出来る。性的なこともあり、なしなど、購入者に有利な条件を提示するほど、奴隷商が買う時の金額が高くなる。その分売りやすくなるからだ。
戦争奴隷と借金奴隷は、明確な解放期間はないが、自らが稼ぐことによって買い戻すことが可能となっている。もちろん商売の手伝いで雇われた場合は、通常店員を雇った場合に支払う賃金の半分以下の値段など、支払う賃金は格安だが。
また奴隷ではあるが、購入者は最低限の生活をさせる義務が生じる。奴隷だからといって食事を与えないなどすると、ペナルティを受けるのだ。
冒険者が雇う場合は、最低条件戦える、もしくは戦うことを了承した者である必要がある。選ぶのは基本前者。足手まといがいるなら、一人で戦った方が楽だからだ。
話を聞いたあとに金額を聞いたが、軽く持ち金が飛ぶ値段だった。もちろん条件をゆるめたら買える値段になったが、それでも気軽に買うことは出来ない。
獣人とエルフの奴隷がいるか尋ねたが、いないと言われた。男性も女性も人気があって、余程問題がなければ王国ではすぐに売れてしまう人気商品とのこと。
奴隷商から出た足でギルドに行くと、物々しい雰囲気に包まれていた。
「なんかあったのか?」
顔見知りになった冒険者に聞くと、五日前に王都に向けて出発したキャラバンが壊滅したと言われた。確か規模こそ大きくなかったが、護衛も一〇人以上はいたはず。この町に到着した時に、すれ違うように出発していったのを覚えている。
「何にやられたんだ?」
「魔物らしい。倒れていたのを発見した近くの村人が、早馬で知らせてきた」
「それで集まっているのは?」
「討伐隊が組まれるって話だ。昨日のうちに報告があったらしいが、その生き残りに詳しい話を聞きに行っていたらしい」
「強制参加とか?」
「ここをホームにしてるのは強制参加かもしれないな。魔物によってはランク制限がかけられるかもだけどな」
そんな話をしていたらギルマスが出てきた。筋肉達磨? と言った言葉が似あう、筋肉質な大男だ。
「揃っているな。話は聞いていると思う。今回の討伐は、ランクC以上の冒険者は強制参加とする。討伐する魔物はオーク。少なくとも三〇体はいると思え」
「報酬は?」
「参加したら銀貨一〇枚を支給する。あとは活躍の度合いで追加報酬は支払おう」
「ランクD以下の参加は不可ですか?」
「オーク討伐の経験があるなら参加を許可する。上位種がいる可能性も考えて検討してくれ」
「出発はいつになりますか?」
「出発は明日の朝一だ。馬車で移動するから馬車を持っているものは自分たちのもので来てくれ。食料類とポーション類はこちらでも用意している。他に聞きたいことは? ないなら参加者は手続きをして解散だ」
Cランク以上の者が次々と手続きを済ませていく。残ったDランクの者たちは、パーティーなら参加するかどうかを相談している。
「参加するのか?」
と、聞かれたので、オーク討伐の経験がないから不参加と答えた。
しかし王都方面がこれで通行止めになるのか? 今日で宿の予約が切れるが、延長するか悩むな。
依頼の張り紙を見ながら今後の予定を組み立てなおす。討伐依頼がそれなりにある。オークの方に人を取られると他の討伐依頼が滞るか?
王都とは別方面の討伐依頼となると……ウルフか。近くに薬草、これは魔力草の採取依頼か。魔力草の採取依頼を受けて、狩れたらウルフも狩る感じで行ってみるか。
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