第22話 閑話・1

「……報告します。勇者たちは話を聞いた通り、戦闘経験がない模様。騎士団との訓練でも殆どのものが訓練についていけてません」

「殆ど、というと?」

「……剣聖、パラディン、剣王の三名はぎこちないながらですが、徐々に適応している模様」

「……他は?」

「魔導王は高出力の魔法を使用可能ですが、魔術コントロールが出来ないようです。精霊魔法士に関しては精霊魔法の使い手がいないので、今研究者たちに文献を調べさせています」

「……聖女は?」

「……教会にて神聖魔法の鍛錬をしている模様」

「すぐに戦線に投入することは無理か。以前召喚した時は、魔法こそ使うのに苦労していたが、すぐに剣を持って戦えたという話だったのに」

「……いかがいたしますか?」

「貴重な戦力だ。下手に投入して死んでしまっては元も子もない。まずは戦いに慣れさせよ。本格的に階位レベルを上げるのはそのあとだ」

「…………」

「……あれはどうなった?」

「……冒険者ギルドで登録をした模様」

「……ほう、ならば戦えるのか?」

「……毎日配達の依頼を受けている模様」

「あの子供のお使いか……確かあれのスキルはウォーキングだったか……なるほど、確かにあれ向けか」

「…………」

「あれも一応は観察しておけ。ただし他国に行くことは許すな。また勇者召喚の話をすることもだ」

「……もしそのようなことになったら?」

「殺してかまわん。処分しろ」



「……報告します。騎士団長より三名を伴い魔物の討伐の進言がありました」

「聞いている。……聖女の方はどうなっている?」

「……王都の教会一の腕となっている模様。裏で教会が聖王国に連れていこうと画策している者がいるとの噂があります。調査中です」

「……聖女を討伐に同行するように手配しろ。また画策した者は、分かり次第処分だ」

「……わかりました」

「……魔導王の方はどうなった」

「まだ実践投入するには難しいようです。威力が高すぎるのが問題な模様」

「巻き込む恐れがあるか……精霊魔法士はどうなった?」

「……水の精霊との契約が終わったようです」

「……ようですとは曖昧だが?」

「本人申告のためと、精霊の確認が出来る者がいないためです。ただ魔法の発動は確認されてます」

「……戦わせる必要はないが、二人も同行させろ。魔物を見るだけでも多少は違うだろう」

「……かしこまりました」

「……例のあれはどうなった?」

「いくつか依頼を受けて街の外に出ているようです」

「……どんな依頼を受けている?」

「薬草の採取とゴブリン討伐です」

「……一人で受けているのか?」

「親しくなった冒険者と一緒に依頼を受けているようです」

「……戦えるようにはなっているのか?」

「ゴブリン討伐の報告をするさいに、負傷したのを確認しています。また同冒険者と鍛錬をしている姿を目撃しましたが、正直新人騎士よりも弱いと思われます」

「……その同行した冒険者の素性は?」

「ボースハイル帝国から来たそうですが、出身はエルド共和国の模様」

「……間者か?」

「……人探しで国を回っているという情報を入手しました。探し人は奴隷の可能性もあるようで、奴隷商との接触も確認しています」

「……警戒だけしておけ。一緒に国外に行くようならまとめて処分しろ」



「……報告します。討伐の件ですが、無事遂行しました」

「……戦いぶりはどうだった?」

「初日こそ戸惑いを見せていましたが、二日目よりは問題なく対処していました。ただ騎士団長の報告で、力に振り回される時があるとのことです。定期的に実践経験を積ませていく模様」

「……階位レベルは上がったか?」

「低レベルの者はいくつか上がったのを確認しています」

「……他の者たちの反応はどうだった?」

「最初魔物の死骸を見て気分を悪くしていましたが、最後には慣れている様子でした」

「……能力の方はどうだ?」

「聖女の力は申し分ありませんでした。ただ身体能力が低いためか、護衛が必要かと思います」

「……そっち方面での鍛錬をするように騎士団長に命じておけ。教会の者が反対してきたら、身を守るためと言っておけ」

「……分かりました。残りの二人に関しては、魔法を使いたくて仕方がないと言った感じでした」

「……好戦的なのか?」

「好戦的というよりも、動く的に魔法を使って効くかを確認したかった模様。外したあとに色々と試していました」

「……忌避するような反応はあったか?」

「……少なくとも帰還する時にはなかったと思います」

「……うむ。……あれはどうなった?」

「キャラバンの護衛任務を受けて中継都市フェシスに向かいました」

「……護衛任務か……」

「……例の二人組はそのままラス獣王国に向かう模様」

「……あれも付いていきそうか?」

「……今のところその兆候は見られないとのことです」

「……警戒だけは怠るな。そうだな……あれも向かわせろ」

「……13号ですか?」

「不服か?」

「……いえ、失礼しました。観察の継続で良いですか?」

「……少しこちらから仕掛けて反応を見るのも手か……」

「……………」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る