第20話 魔道具・発信機

「出発は三日だよな? いつ町を発つんだ」


 朝食を済ませて一段落した時に、聞いてみた。


「出発は朝かな。獣王国に隣接する町まで行く大規模キャラバンがあるみたいだから、その乗合馬車を利用することにした」

「護衛任務じゃないんだ」

「お金もあるし、ちょっとのんびり行くのもいいかなってね。途中護衛が減ったら護衛として乗せてもらうかもだけど」

「色々な移動手段があるんだな」

「なんだったらソラも一緒する?」

「やめておくよ。今のままだと甘えちゃいそうだし」

「なんだったらお姉さんたちに甘えてもいいんだよ。主にクリスにだけど」


 クリスを見ると顔を真っ赤にしている。遊ばれてるなぁ。


「魅力的だけどやめておくよ。次は成長した姿を二人に見せるよ」

「そっか。私たちは少しのんびり過ごすけど、ソラは依頼を受けるの?」

「ああ、薬草採取の依頼を昨日受けたら、また良かったら受けてくれないかって頼まれた。近頃行く人がいないらしくて、在庫がないって錬金術と薬師ギルドから催促されてるって泣きつかれた」

「お人よしね」

「たくさん採取したら色付けてくれるって話だから。二日間は一日中採取してくる予定。あと、昨日はごめん。考え事してて、否、これは言い訳か」


 クリスに向かって頭を下げると、「分かった」と小声で許ししてくれた。


 それから二日間は忙しかった。

 半日かけて薬草を採取して、お昼を食べたら錬金術を行う。錬金術が終わったらギルドに戻り素材を売却し、魔石を購入する。魔石はギルドだけでなく、少量だけど雑貨屋にも置いてある。魔道具の燃料として売っているので、一般の人でも購入できる。冒険者ではダンジョン内で使うランタンや、魔物除けの魔道具が有名らしい。

 ただ魔物除けの魔道具は需要があるため、本体が高くてなかなか手に入らないということが調べてわかった。一つだけ売っていたお店があったけど、今の俺には手が出ない値段だった。金貨五枚とか高くありません? これでも安い方だと言われました。

 なのでお金がない冒険者は、使い捨ての魔物除けを買う。効果も魔道具と比べるとかなり低いけど、需要はそれなりにあるらしい。

 魔石を求めてお店をはしごしたのは、鑑定して分かったことだけど、同じ魔物の魔石でも品質が違うことが分かったから。

 また大きければ必ず品質が良いわけでもなく、既に加工されたものもあれば、未加工のものもある。魔道具によって使える魔石の大きさと形が違うため、魔道具に合わせて作って貰うため未加工品の数が圧倒的に多いとのこと。

 俺は品質の良い未加工品の魔石を購入していった。その数五〇。あとは鉄鉱石の塊を一〇個購入し、手持ちは銀貨二枚になった。

 当分薬草採取で生計を立てないとな、と思った。


「ステータスオープン」


名前「藤宮そら」 職業「無職」 種族「異世界人」 レベルなし


HP300/300 MP300/300 SP300/300


筋力…290(+1)  体力…290(+1)  素早…290(+1)

魔力…290(+1)  器用…290(+1)  幸運…290(+1)


スキル「ウォーキングLv29」

効果「どんなに歩いても疲れない(一歩歩くごとに経験値1習得)」

経験値カウンター 18/30000

スキルポイント 7


習得スキル

「鑑定Lv8」「鑑定阻害Lv4」「並列思考Lv4」


「ソードマスターLv4」「身体強化Lv5」「気配察知Lv8」「自然回復向上Lv4」「気配遮断Lv4」


「魔力操作Lv6」「生活魔法Lv5」「空間魔法Lv4」「錬金術Lv5」


「料理Lv2」


 鑑定が上がったので職業の説明が何か変わったかと思ったら、職業は変更することが出来ることが分かった。注意書きとして、一度職業を選択したら、ウォーキングのレベルが上がるまで職業を変更出来ないとある。

 タイミング悪くちょうどレベルが上がったばかり。

 けど成功率を上げるためなら、補正効果が付く錬金術師になった方が良い。失敗は許されない。明日にはもう、ルリカとクリスは町を出るのだから。

 錬金術師を選択した。

 全てのステータスについていた(+1)が変わった。


筋力…290(+0)  体力…290(+0)  素早…290(+0)

魔力…290(+50) 器用…290(+50) 幸運…290(+0)


 魔力と器用に+50補正が付いて、他がなくなった。

 またMPにも+50の補正が付いているのか。

 他には対応スキルの熟練度に補正が付く、と。

 もっと早くから知っていればと思わずにはいられないけど、職業の変更が可能かどうか分からなかったから仕方がない。これから積極的に何かしらの職業を選んでいけばいい。


「では始めるか」


 集中する。イメージするのは発信機。魔石を核として、鉄鉱石で土台を作る。

 形としてはペンダントにするのが良いかな。

 まずは魔石を一〇個用意してそれに魔力を流す。パスが繋がり中心に設置した魔石の色が変わる。色が濃くなっていく。かわりに周囲の魔石からは色が抜けて最終的に透明な石になった。ガラス?

 残った魔石を手に取ると亀裂が走って粉々に。注いだ魔力が多すぎたのか?

 次は魔力量を抑えながら注意する。パスの繋がる光の線、それが途切れないように、また太くなり過ぎないように注意する。勢いがない分、先ほどの倍以上の時間がかかった。

 魔石を手に取ると先ほどと違って壊れることはない。鑑定で魔石を見ると、魔導石になっていた。品質は低。魔力量が少なかったのが原因か。

 魔力の流す量の感覚を思い浮かべながらイメージトレーニングをする。

 次に取り掛かろうとして、手を止めてステータスパネルを呼び出す。MPを確認してマナポーションを飲む。減っていたMPが回復した。

 パンと頬を叩いて気合を入れ直す。次成功させる必要はない。チャンスはあと3回。なら先ほどの感覚を基準に、魔力量を少しずつ増やして作っていく。

 結果。お腹がパンパンになった。錬金術を一回やるごとにマナポーションをあおった。あと一本飲めと言われても無理だ。時間をあけたら飲めるかもだが。

 出来た魔導石は全部で四つ。品質の低が二つ、中が一つ、高が一つ。あとはこれに鉄鉱石で土台を作りながら発信機のイメージをしながら作れば完成だ。

 一息入れてから作業を再開した。

 品質低の魔導石だと二つ使用しないと効果は望めそうもない。これはペンダントをやめて腕輪にしてみるか。まずは鉄鉱石で腕輪の形をつくり、そこに魔導石を魔力を込めながらはめ込む。もちろん衝撃で破損しないように強度を上げる。


「まずは一つ。残りは……ペンダント型にしようか」


 台座とチェーンを作り魔導石を取り付けた。うん、俺に芸術性を求めてはいけない。なので知っているものをイメージしてデザインする。決して盗用ではない。けどあいつらが見たら気付くか?

 作り終わった三つを並べ、さらに魔力を通す。イメージとしては以前話を聞いた精霊のお守り。これは相手の無事を感じる効果ではなくて、場所を探索出来る機能を付ける。


「よし、これで完成だ」


 親機と子機といった感じで、親機のペンダントに魔力を流すことで、子機がどこにあるか分かるようになる。これを渡しておけば、いずれ合流出来るようになったら、探すのに役に立つ。捨てられなければいいけど、それが唯一の心配ごとか。 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る