第18話 解散
「お、起きたか」
目を覚ますとおっさんがいた。否、サイフォンだ。
昨夜は夜になってから町に到着したため、部屋を人数分確保することが出来なかった。女性優先ということで、男は適当に部屋に押し込められて寝ることになった。
「よく眠れたか?」
「ああ、大丈夫だ」
「悪いな、ベッドを譲ってもらって」
「部屋の中で休めただけでも十分だよ」
うん。部屋が足りなかったから床にシートをひいて寝た。本来なら駄目なのだけど、宿の主人がダルトンの知り合いということもあって、今日だけは例外ということで許可を貰っていた。
時間をずらして食堂で朝食を済ませると、冒険者たちはギルドへ、商人たちは商業ギルドへそれぞれ分かれていった。実質ここで依頼は終了になるので、分かれることになる。
ギルドで護衛の依頼料を受け取り、途中で倒したウルフの素材を売った。食材が減っていたこともあり、ある程度の肉も運んでこれたので臨時収入としては結構な額になった。
「それじゃこれで解散だ。俺たちはタイガーウルフの件をギルドに報告しておく。また機会があったら一緒に仕事でもしよう。解散だ」
サイフォンの言葉でパーティーごとにそれぞれ散らばる。
まずはギルドでお勧めの宿を聞き、泊まれるかの確認をした。昨夜お世話になったところも空いていたけど、値段が少し高い。最悪そこで泊まるにしても、宿代を抑えられるなら抑えておきたい。
紹介された宿は一泊銅貨二枚。俺は十日間、ルリカたちは五日間の宿泊代を支払い部屋を確保した。
「私たちは今日は宿で休むよ。ソラはどうする?」
「せっかくだからギルドでどんな依頼があるか見てくる。王都ほど広くないけど、ここも王国の中では交易都市としてそれなりの大きさみたいだしさ。あとはしばらく滞在する予定だから情報収集もしておきたい」
「あの、それだったら私もギルドに付いていってもいい?」
「大丈夫だけど、大丈夫か?」
クリスの体調を心配しての言葉だったけど、本人は少しだけだから大丈夫と言う。
ルリカを見ると、頼んだよ、と言われた。
クリスとギルドに戻り、町周辺の情報をギルド職員に尋ねた。魔物に関する情報と、薬草などの素材に関する話を中心に一時間ほど聞き込みをした。
あとは依頼の貼ってある掲示板を眺めて、どんな依頼があるかを探す。
「ソラはこれからどうするの?」
「少しこの町で依頼を受けていくよ。王都から結構離れているし、せっかくここまで来たんだから少し観光していこうと思う」
「観光か……ちょと羨ましいかも」
「クリスたちは目標があるから仕方ないよ。早く叶うといいな」
「うん……」
「もしその友達を見つけたらさ。是非紹介してくれよ」
「えっ」
「俺もその時に、いかにクリスとルリカにお世話になったか話すしさ」
「う、うん」
「お、やっぱ規模が大きい町は配達系や雑事の依頼が多いな。また受けてみようかな」
「ソラは好きだね」
「安全に受けられるからな。大変だと感じる人は大変かもだけど、俺は歩くの苦にならないからさ」
少し話していて照れ臭くなった。
フードから覗いたクリスの顔が真っ赤だったのを見て、ちょっと自分でも変なテンションで話していたと思った。
「クリスはこのまま戻る? 俺は少し配達の依頼を受けながら町の中を歩いてくるけど」
クリスと分かれて配達の依頼を一つ受けた。
配達で町の中を歩きながら、他に各ギルドの位置と、武器防具屋など、これから利用するかもしれない建物の位置を確認しながら歩いた。
お昼は屋台を利用し、護衛の任務で他の街から来た話をしながらこの町のことを色々聞いてみた。
中継都市フェシス。交易都市とも呼ばれ、エレージア王国内の主要都市、及び王都を繋ぐ都市として栄えている。また近くに鉱山があるため、鉱石の取引が盛んな都市でもある。鉱山の近くには村が作られていて、そこでの仕事もあるらしい。ダンジョンほどではないけど、鉱山にも魔物が出没する時があるとのこと。
「鉱山に魔物が出没するっていうけど、どこからやってくるんだ?」
ふと疑問に思い、夕食の時にルリカに聞いてみた。
ダンジョンの魔物はダンジョンが生みだすと聞いたことがあるけど、なら鉱山では何処から魔物が入り込むのか気になった。
「私も詳しいことはわからないんだよな」
「以前、魔力溜まりから魔物が生まれるという話を聞いたことがあります」
「魔力溜まり?」
「はい。ただ魔力溜まりの原理は良く分かっていないと言われています。一説によると月の満ち欠けが関係しているとか、高名な魔法使いの人が提唱していると聞いたことがあります」
「あ~、あのエーファ魔導国家の研究者がそんな発表したとか噂で言ってたね。ソラは鉱山の依頼でも受けたの?」
「受けてない。ただ時々討伐の依頼があるって話をさっき聞いたから。機会があったら行ってもいいかな、って」
「ん~、私たちはダンジョンも鉱山も入ったことないから何とも言えないけど、色々と制限があるから立ち回りを気を付けないと危険だって話は聞く。行くならパーティーを組んだ方がいいと思う」
「パーティーか。今のところ組みたいと思う人もいないし、なら素直に薬草集めとかにしようかな。薬草探しはこう見えて得意だしな」
「それがいいと思う。ソラは薬草集めが上手だから」
以前一緒に薬草採取に行った時も驚かれたしな。鑑定の力でカンニングしているようなものだから、間違えようがないんだよな。
「ソラの明日の予定は?」
「明日は朝一で薬草採取に行くつもりだ。場所は聞いてるし、行って採取して帰ってきても、昼過ぎには戻ってこれそうだから」
「そっか。ならお昼のあとで、一緒に買い出しでもどう? 私たちもアイテムを色々補給しておきたいから」
「良いよ。なら出来るだけ早く戻ってくる」
「無理はしなくていいから。慌てると碌なことがないから。特に初めていく場所なんだから、必要以上に警戒してもし過ぎってことはないからね」
ルリカの心配はもっともだ。気配察知はあるが、それだって万能ではないかもしれないのだから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます