第13話 探しモノ
もう一つ配達の依頼が残っていたので、クリスに断りを入れて依頼をこなしていく。宿への帰り道の途中が目的地なので、物を預かりそのまま引き渡した。
「いつもこんなことやってるの?」
「クリスはやったことないのか?」
「うん、ギルドに登録した町には、配達の依頼は少なくて人気だったから」
小さな町だと新人が多いため、配達の依頼は取り合いになるようだ。
逆に王都などの大きな街だと、地元である程度力を付けた冒険者が腕試しもあってくるため、配達の依頼をわざわざ受ける人がいなくなる。皆無ではないが、街の規模が大きいために依頼量の桁が違うため追い付かないのだ。
「俺は助かってるけどな。それだけで生活出来るかと聞かれると、無理としか答えようがないけど」
それでもスキルのこともあって、不満はない。なかったら出来ても一日一件、多くても二件ぐらいだったことだろう。それだけ地球のように動力のないこの世界において、歩いても疲れないという効果はある意味破格だ。馬や馬車なども一般人が手軽に買える値段でもないしな。
一度クリスたちの泊まる宿までいき、ルリカと合流して一軒の喫茶店に入った。
何度か通っているらしく、個室に通された。
そういえば、こっちの世界にきてから喫茶店とかでゆっくりしたことがなかった。別のことにお金を使う余裕がなかったというのもあるが、そもそも生活に余裕がなかった。もっとゆとりある生活をしたいものだ。
「で、言われたまま付いてきたけど、どういう状況?」
「あ~、なんか歓楽街でクリスにあって、流れ的に?」
「歓楽街って……クリス。まさかあそこにいったの?」
責めるような視線が一瞬クリスに注がれたが、すぐに霧散して、「仕方がないな」と言ってクリスの頭を撫でた。
「いいよ。なら……クリスが説明してあげなよ」
「うん。私たちが依頼を受けて国を渡り歩いてる話は前にしたと思う。それはね、友達を探しているの」
クリスは一度言葉を止めて、一口ジュースを飲んで話を続けた。
「帝国に攻められた最初の町は、私たちが住んでいた町だったの。まだ幼かった私たちは逃げるように言われて、訳も分からないまま散り散りに逃げたの。その後合流できた友達もいたけど、合流できなかった友達もいて。……その友達を探すために旅をしているの」
「あの頃は殺されなかった人は奴隷にされたんだ。戦利品だって、そしてそれは停戦されたあとも、解放されなかった。冒険者になって、まず帝国に行った。私たちは見た目は人だから、問題なく回れた。けど見つけることが出来なくて、今回は王国に来たんだ。王都の歓楽街の近くにね、奴隷商があるんだよ」
「それであそこで会ったわけか」
「うん。もうすぐこの国を出るから、最後にもう一度確認だけしておこうと思って。あとはお願いをしてきたの」
袖の下を渡して、もし探してる人物の情報を掴んだらギルドに連絡するように手配したようだ。奴隷商に弱みを見せると、買い取る時に足元を見られる可能性があるけど、それはもう仕方がないと諦めたらしい。
「ソラのことはクリスも気にいってるし、本当はもうちょっと一緒にいたかったけど、私たちにも目的があるから」
「ル、ルリカちゃん」
「照れない照れない。あ、あと私たちが探している友達は二人で、獣人の子と、エルフの子」
「失礼なことかもだけど、一つ聞いていいか?」
二人の話を聞きながら、どうしても疑問に思ったことがあった。
「二人はその、探している友達が生きていること前提で話してようだけど、何か根拠があるのか?」
二人は探し人が、少なくとも死んでいるとは思っていない。それこそこの世界中を探して回れば、会うことが出来ると思っている節がある。
仮に戦場ではぐれた時、果たして俺は相手が絶対に死んでないなんて思えるだろうか。
「このお守りのおかげで分かるの。昔は本当かな、って思ってたけど、教えてくれるの。何でって聞かれても答えられないんだけど、分かるの」
「精霊のお守りっていうんだって。おばあが教えてくれたんだ」
二人は同じ形をしたお守りを掲げ、愛おしそうにそれを眺めている。
口が悪く、怒っていることが多い人だったけど、子供のことを心から愛し、そして最後まで守ってくれた人だったと、二人は困ったように言う。素直に褒められないような複雑な思い出があるようだ。
「そっか。特徴……とかは成長してれば分からないか。名前だけでも教えてもらっていいか? 俺も色々と歩く予定だから、もしかしたら旅先で会うかもしれないしさ。お守りの特徴は……他にも同じようなものがあるのか?」
「同じような形のお守りはあるかも。あ、だけどここの模様はオリジナルだから、きっとこの世に四つしかないお守りだと思う。これは四つで一組みたいなものだから」
獣人の子の名前はセラ。エルフの子の名前はエリス。
それから二人のことを色々聞いた。能天気な獣人セラ。責任感が強く、四人のまとめ役でお姉さんだったエルフのエリス。懐かしむように、そして忘れないように、二人は四人での思い出を話してくれた。
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