第10話 野営

「今日はここまで。野営するなら……あの木のあたりがいいかな」


 少し街道から離れたところにある木の根元まで移動し、野営の準備をする。少人数で移動する場合は、状況にもよるが基本テントは使用しない。もちろん寒冷地に行くときは別だが、過ごしやすい常温の場所だとローブをまとうだけにする者が多い。

 それは奇襲をかけられたりしたときに、すぐに対処出来るようにするためだ。


「慣れないソラもいるし、今日は二人一組で見張りをして、一人が休むような感じにしようか。本当は一人で見張りをした方が休める時間がとれるけどね」


 今日やってみて、問題なさそうなら明日からは見張り一人体制にしようという話になった。

 まずは火をおこし一休み。これはクリスが生活魔法を使って、色々教えてくれた。

 料理はどっちも出来るようで、手際がいい。俺は今回見てるだけ、疲れてると思って何もしなくていいんだと言ってくれたんだと思う。そう思いたい。


「野営の時の料理は簡単なスープとパンが基本かな。高性能なマジックバックがあると、お店で食べる料理をそのまま持ち歩けたり出来るなんて話を聞いたりするよ。本当かどうかは分からないけど」

「いくらぐらいするんだ?」

「基本オークションに出品されるから天井知らずで上がるらしいよ。ただマジックバックもピンキリで安いものもある。それでも金貨五〇枚とかしたかな。確かあれは樽五つ分の量を持てるんだったかな。あとはダンジョンとかの宝箱で入手できたりするね」

「持てる量が増えるほど高くなっていくわけか。収納魔法みたいのはないのか?」

「……空間魔法に、収納魔法というのがあります。魔力量で持てる量が決まるみたいです」

「滅多にいないけどね。空間魔法を使える人って珍しいのよ。だから戦闘力がなくても、空間魔法もちってだけで高ランクパーティーに誘われたって話は聞くよ」


 空間魔法か。スキルポイントもあるし覚えるべきか?


「そもそも魔法の適正? 使えるかどうかはどうやって調べるんだ」

「教会に行くと適正を調べることが出来ます。適性があると分かると、自然に魔法が浮かんできます。何度も使っていると、新しい魔法を覚えたりもします。あとは適正がなくても魔法スクロールというものがあって、それを読むことで覚えることも出来ます」


 調べるためにはお布施が必要らしい。

 魔法のスクロールも高いらしく、ダンジョンで発掘されるが、使わないで売る冒険者も多いようだ。一時期エーファ魔導国家で魔法のスクロールの開発が成功したとかいう噂が流れたが、今ではその声も聞こえなくなったらしい。

 適性があると分かると自然に覚えるというのは、スキルポイントを振ったら魔法が浮かび上がったからそれにあたるのだろう。

 使っていて新しい魔法を覚えたのは、熟練度が上がって魔法のレベルが上がったから新しい魔法を覚えたと検討がつく。


「ソラは調べたことないの?」

「教会で調べたことはなかったかな。新しい魔法を使えるようになるってのは、魔法のレベルが上がったから覚えたってこと?」


 聞いてみたらクリスが不思議そうな顔をして顔を傾けた。


「えっと、魔法にレベルがあるかはわかりません。あるのかもしれないけど・・・確認することが出来ないので」

「……ステータスオープンって言葉を聞いたことある?」

「ステータスオープンですか? 聞いたことないです」

「ハイハイ。お話が楽しいのは分かったけど、クリスはちょっと休もうね。続きは起きてから二人きりでするといいよ。もちろん警戒はしっかりしてね」


 言われて顔を真っ赤にしたクリスは、フードを被ってシーツの上に横になった。


「私以外とあんなに話すクリスは初めて見たよ」

「恥ずかしがり屋って感じがするしな。話すことを苦手とする人もいるし」

「そういう訳じゃないんだけどね。ま~、取られたみたいで少し寂しい気がするけど、クリスが楽しそうに話すのを見るのは私も嬉しいから、積極的に話してくれていいよ。仲良くなることは認めよう、けど傷つけたら一生許さない、かな」


 うん。ちょっとその笑顔は怖いですよ。

 とはいえ普通に話すことは出来るけど、話した内容も魔法のことだったしな。

 多分クリスは魔法のことが大好きなんだろうな。話していてイキイキしてたし。


「けどソラって生活魔法使えるじゃない。どうやって魔法を覚えたの?」

「あ~。あんま覚えてないんだ。色々あったらしくて、その時のことを良く覚えてない時期があるんだ」


 言葉を濁す。自分でも無理のある言い訳かなと思ったが、異世界から召喚されたというのも説明しづらい。

 いや、召喚した勇者が魔王を討伐した記録が残っているから、もしかしたら異世界人というのを知っているかもしれない。

 けど今はまだ話すことは控えた方がいい。下手に話すと巻き込むかもしれない。一緒に行動している時点で、巻き込んでいる可能性があるかもしれないが。あの連中が忘れてくれることを切に願う。覚えていても干渉しないで欲しいな。俺も邪魔はしないから。


「クリスは自分が使えない魔法のことも色々知ってるから。興味があれば聞くといいよ」


 そうさせてもらおう。どのスキルを覚えるか参考になるはず。甘えよう。

 それから眠くならないように、だけど休むクリスの邪魔をしないように小声で話しながら見張りを続ける。

 途中交代してクリスが相手になったら、魔法について聞いた。

 どんな魔法が存在し、その属性にはどんな魔法があるかを教えて貰った。

 クリスは休みの日にギルドの資料室や、図書館にいっては魔法書やおとぎ話や神話などをまとめた書物を読んで過ごしているそうだ。もちろん魔物の解体の仕方や討伐部位、素材となるアイテムの勉強も常にしているとのこと。

 ルリカが目を覚ましたので休ませてもらう。

 シーツの上に横になり、目を閉じてステータスオープンと唱える。


名前「藤宮そら」 職業「無職」 種族「異世界人」 レベルなし


HP220/220 MP220/220 SP220/220


筋力…210(+1)  体力…210(+1)  素早…210(+1)

魔力…210(+1)  器用…210(+1)  幸運…210(+1)


スキル「ウォーキングLv21」

効果「どんなに歩いても疲れない(一歩歩くごとに経験値1習得)」

経験値カウンター 1192/22000

スキルポイント 5


習得スキル

「鑑定Lv5」「鑑定阻害Lv4」


「ソードマスターLv3」「身体強化Lv5」「気配察知Lv4」


「魔力操作Lv4」「生活魔法Lv4」


NEW

「空間魔法Lv1」「並列思考Lv1」「自然回復向上Lv1」


 今回はスキルポイントを3ポイント使って「空間魔法」「並列思考」「自然回復向上」を覚えた。

 これで残りスキルポイントが2になった。


 空間魔法を覚えたら、収納魔法がまず使えるようになった。これは収納空間に物を入れることで熟練度が上がるようだ。俗に言うアイテム袋の魔法版か。

 レベルが低いからか収納できる量はまだ少ない。レベル以上の物量を収納すると、常時MPを消費して維持しようとするようだ。MPがなくなると収納したものが飛び出すみたい。熟練度は物の出し入れだけでなく、常に何か物を入れて置くだけでも上がるもよう。

 収納可能なものは無機物で、生き物は不可。時間経過とともに劣化するものは、低レベルだと同じように劣化する。


 並列思考は同時に複数のことを考えることが出来るようになる。これは今回野営をするにあたり、眠っていても気配察知を発動させるにはどうすればいいか考えていて、並列思考があれば出来るかも? と思い選んだ。


 自然回復向上はHPMPSPが回復する速度をあげてくれる優れもの。HPは自然治癒力が促進され、MPは魔法を使って消費したMPが回復しやすくなり、SP。これはスキルなどで消費したSPの回復が早まる効果がある。

 結果。並列思考を使用することで寝ながら気配察知を使うことが出来た、ような気がする。感覚的にはぼんやり発動していたような気がするが、結局二人が見張りをしている間なにも起こらなかったからはっきりしたことが分からなかったとも言う。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る