第3話 冒険者登録と装備品

 登録料(銀貨三枚)を支払い、差し出されたカードに血を一滴垂らした。

 この時登録料が支払えなかった場合は、今後の活動で得た報酬から支払うことも可能とのことだった。

 血を吸い込んだカードは、一瞬輝いたと思ったら真っ黒になった。

 手渡されてしばらくするとカードの色が白くなった。

 これは登録した個人が持つと色が変化し、ランクによってカードの色が変わっていくとのことだ。

 紛失した場合は申請し、カードの再発行にはお金が必要になってくる。

 その手数料銀貨一〇枚。うん、なくさないようにしよう。

 ミカルさんから説明を受けている間。隣の受付嬢には果敢に男がアタックしていた。

 さっきは言及しなかったが、ここの受付嬢は美人ぞろいだ。地球だったらアイドルにだってなれそうな容姿だ。逆に男たちは山賊のような厳ついのが多い。

 シュッとしたイケメンは……少なくとも冒険者ギルド内ではまだ見たことはないな。いや、街中では見たことがあるよ。女性と一緒に歩いていたけどな。

 席を外すと滑り込むように次の男が話しかけている。

 依頼の相談ではなくて、お食事のお誘いであるようだ。

 そろそろ昼の時間になるが、いくつか依頼を受けることにした。

 撃沈して立ち去る男と代わるようにミカルさんに依頼書を渡す。

 複数持って行ったので大丈夫かと心配されたけど、今日中に終わらせる必要のないものもあるから大丈夫だろう。

 配達系の依頼で、銭貨五枚から一〇枚と安い。

 いつから出ているか分からない依頼なので、自分で運んだ方が早いのでは? と思わずにはいられない内容だ。

 もしかしたら初心者冒険者救済のために出してくれているのかもしれない。

と、そんなことを考えてたら、想像以上にハードだった。

 荷物が重かったり、町の端から町の端まで歩かされたりと体力の消耗が本来なら激しかったに違いない。特に端から端まで歩いたら、歩数が軽く万を超えていた。

 ただスキルの効果のおかげで、どんなに歩いても疲れない俺には何の問題もない。

 むしろお金を稼げて経験値も稼げるなんて二度美味しい依頼だ。レベルも上がってステータスも上がれば三度美味しいのか? 報酬は格安だけどな。

 しばらくの間。朝はギルド内にある図書館に向かい勉強し、それが終わったら配達系の依頼を受けてこなしていった。

 配達系の依頼は五件こなしても今の宿一泊分にもならないから、このままいけばお金はいずれ尽きる。

 次に考えたのは素材採取の依頼。これは魔獣の素材ではなくて、薬草や錬金術の材料になるアイテム類だ。一応図書館で勉強はして形など覚えているが、それほど心配していない。

 何故なら鑑定すれば、それが何か一目で調べることが出来るのだから。

 だから必要なのは入手できる場所を調べること。

 素材によっては森の中に入ることもあるので、魔獣に襲われる危険もある。

 流石に装備を整える必要があるな。

 一日依頼は休んで装備の買い出しにいく。

 ここ最近毎日休みなく依頼を受けていたら、さすがに心配された。体を休めるのも冒険者としての仕事だと、割と本気に。

 確かに毎日勤勉に依頼を受けている冒険者はいなかった。

 毎日勤勉にナンパしている冒険者はいたが。

 立ち寄った武器屋は、武器だけでなく防具一式も取り扱っている。

 お店の評判は良く、店主は元冒険者で親身になって相談に乗ってくれるそうだ。

配達の依頼を受けている時に、おススメだと教えてもらったお店だ。


「いらっしゃい。何かお探しで?」


 武器を見ていたら声をかけられた。

 他にお客さんがいないから声をかけてきたのか。ごつい外見からは想像できないほど低姿勢だ。


「駆け出し冒険者だ、です。町の外に出て素材集めをしにいこうと思って、装備を探しに来ました」


「ほう…」


 観察するような視線を向けられた。

 ステータスは順調に上がっているから、あの時の俺じゃない! 見た目は変わってないから頼りないと言われると否定はできないが。

 実際厳つい冒険者に比べると、胸板も薄く背も低い。

 地球でだって中肉中背です、って特徴のない説明するしかない体格だ。

 筋肉もお世辞にもあると言えない。


「希望する武器や防具はあるか? それとも魔法使いか? あと、言葉遣いは気にしなくていい」


「一応武器は剣を考えてい……る。防具は動きやすい軽めのものが良いかな。ただ痛いのは嫌だから痛みが伝わらないやつが欲しい」


「難しい注文だな。なら剣は片手剣が良いか……防具は魔獣の皮を使用した服か胸当てになるがどっちがいい? 値段的には動きやすさもあって服の方が高い」


 なら服の方が良いか? 一応他にも剥ぎ取りようのナイフに素材を入れる用のバッグ。動きを阻害しない手甲に森の中を歩くのに困らないブーツ一式の希望を言い。予算は金貨一枚と伝えた。

 初心者がかける値段じゃないと驚かれたが、命を守るものなので良いものを揃えたいと伝えた。

 使うことのできる全財産とアピールして、値引きが出来るかも試した。

 結果。なかなか良い装備を揃えることが出来た。

 特に魔獣の皮を使った服は防刃やダメージ軽減が効果としてついていた。

 もっともそんな効果があってもわざわざダメージを受けたいと思わない。保険だ保険。


「いいのか?」


 と聞いたら、頑張んなと口元に笑みを浮かべて応援の言葉をもらった。

 王城の人間はクズだが、この町の普通の人たちは、優しく親切な人が多いなと、感謝の言葉を述べて武器屋をあとにした。








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る