第2話 ギルド訪問
朝食はパンに、ベーコンのような薄いお肉にサラダとスープが付いてきた。
味は昨夜食べた食事と違って塩分控えめであっさりとしていた。
夜は一日に消費した塩分を補充する意味もあって、濃い味付けにしていると言ってた。
素材の味そのままといった感じで、お世辞にも美味しいと言えない。
パンも固くてスープで浸して食べる感じだった。
無駄話をしないで黙々と食べながら、周囲の会話に耳を傾ける。
泊っているお客の多くは、冒険者や商人。冒険者は仲間と何の依頼を受けるかを相談し、商人は何が売れるか、稼ぎの種はないかを牽制しあっている。
昨夜の酔っぱらいながら話す冒険者たちの冒険譚の方が情報としては有意義だったと思うし、宿の女将さんから聞いた以上の新しい発見はなかった。
盗み聞きの限界。ただ流石に冒険者の中に飛び込んで話を聞きだす勇気はなかった。
酔っ払いに常識は通用しないからなぁ(偏見か?)。
食事を終えて部屋に戻って一息。しばらく時間を潰してから宿を出た。
部屋を出るときに女将さんにシーツの交換だけは頼んだ。これは連泊する時にどうするか聞かれたので、交換してくれるように頼んだ。
「まずは話を聞きに行くか」
独り言が増えてきたな、と思いつつ予め調べておいたギルドに向かう。
話を聞くだけならただなので、錬金術ギルド、薬師ギルド、商業ギルド、冒険者ギルドと順に回る予定だ。
町を散策しながら順に回って話を聞いていく。
錬金術ギルドと薬師ギルドに関しては、毎月納品の義務が発生することがわかった。
錬金術ギルドに関しては、自分で精錬したアイテムを。薬師ギルドに関しては、ポーション類のアイテムの納品や、一定数のポーション作成をしないといけない。
商業ギルドは納品の義務はないが、毎月会費を支払わないといけないことがわかった。また商売をするなら商業ギルドへの登録は必須で、登録していないものが勝手に商売をすると圧力をかけられるらしい。主に取引の禁止などの通達がでて、商品の売買ができなくなる。
登録料は銀貨一枚。翌月からは会費として最低でも銀貨一枚支払う必要がある。
あくまで最低で、商業ギルドへと支払う金額によってランクがあり、ランクが上がるとその分恩恵を受けることが出来る。例えば希少素材の取引の優先権などなど。
他には魔物の素材やアイテムの買取もやっているようで、冒険者ギルドと被るのでは? と思ったが問題ないらしい。独占することで生じる価格の高騰を防ぐための措置であると丁寧に教えてくれた。
街を自由に出入りできる通行証を銀貨1枚で買うと考えれば安いのか?
最後に訪れたのは一応本命の冒険者ギルド。
正直に言って、この国に対しては良い感情を持っていない。だから将来的にはこの国を出ようと思っている。
それと同時に、ある程度戦う力は必要だとも思っている。
ここはスキルも魔法もあるファンタジー世界。地球でだって外国に行けば、場所によって治安が悪く命を落とすような危険はある。
けどこの世界はそれ以上に危険だ。
日本では考えられない、殺傷能力のある武器が普通に日常に溢れ、誰もが手に持つことを許されている。
この世界の常識は分からないけど、何かの拍子に喧嘩になって襲われたらたまったものじゃない。
「冒険者ギルドにようこそ。ご利用は初めてですか?」
朝一番は依頼の取り合いで混むと聞いていたので時間をずらしてきてみたら、そのかいあってかギルド内は閑散としている。
けど人が全くいないわけではなく、併設された飲食できる場所にたむろするものもいれば、受付で会話を交わしているものもいる。
耳を傾けるとナンパしているようだった。
肯定して話を聞いた。
受付の女性の名はミカル。年は十五。ギルドの受付嬢になって一年になり、やっと新人を卒業したと嬉しそうに話してきた。
ギルドの説明はどうなった?
軌道修正して話を聞く。
冒険者ギルドはランクがS、A、B、C、D、Eと分かれていて、Sが最高で、Eが最低ランクになる。
ランクを上げるには依頼をこなしていく必要があり、失敗するとペナルティを課せられることになる。
通常依頼で上げられるのはAランクまでで、Sランクになるには複数の指名依頼やギルドマスターの推薦を貰わないといけないらしい。
ランクが上がれば受けることが出来る依頼の難易度が上がって、貰える報酬も増えるのがこの業界の常らしい。ハイリスクハイリターンだ。
またランクによって受任期間というのが決まっていて、その期間の間に一回は依頼を受けないといけないらしい。
それをしないとDランク以上だと降格、Eランクだと身分のはく奪となる。ちなみにEランクだと三十日に一度は依頼を受けないといけない、となっている。
再登録は可能だけど、その分登録料は高くなっていく。
それが何度も繰り返されると、やる気がないと判断されてやがて登録できなくなる。何回かという明確な決まりはないため、ギルドによってまちまちらしい。
なら他の冒険者ギルドで再登録は? と思うけど、そんなに甘くはないようだ。
「依頼はこちらの受付で壁に貼ってある依頼表を持ってきて手続きをしてください。常時依頼に関してはその旨伝えてくれれば良いです。素材に関してはあちらの買取カウンターの方で清算されるので、そちらでの手続きをお願いします。今の話の中で分からなかったことはありますか?」
「討伐依頼の場合だけど、倒した魔物を解体しないまま持ってくるとどうなる?」
「魔物によっては買い取れないものもありますが、素材として使える部位のある魔物に関しては、解体料を引いた代金を支払わせてもらっています。稀に処分料を貰う魔物もいるので注意してください。ゴブリンとかゴブリンとかゴブリンとか」
うん。ゴブリンに何か嫌な思い出でもあるのだろうか?
他に聞くことはないかと考え、今のところないと判断した。
あとは冒険者ギルドに登録するかどうかだけど、町中で受ける依頼、報酬は低いが安全なものもあるし登録することにした。
それだけだと生活することは所持金がなくなったら出来なくなるけど、俺にとってはある意味都合が良い依頼だから不満はなかったりする。
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