第1話 現状確認

 気がついたら朝だった。

 どうやら考え事をしていてそのまま寝落ちしたようだ。環境の変化に、思っていた以上に疲労が蓄積されていたようだ。

 窓の外に立ち寄り改めて街を眺める。

 エレージア王国の王都は、王城を中心に円状に街が広がっている。

 中央に近づくにつれて高く、立派な建造物が多く、外周部に近づくにつれて低い家が目立っていく。

 まだ薄暗い空には雲が浮かび、ゆっくりと流れていっている。

 昨夜見上げた空には月が二つ浮かんでいて、ここが異世界だと改めて実感させられたのを覚えている。

 今いる宿屋は街の外周部に近い安宿だ。一応二階建てで、一階のスペースは食堂になっている。

 一泊朝と夜の食事が付いて銅貨一〇枚計算。本当はもう少し高いけど、まとめて十日分支払ったから少し値引きしてくれた。

 金貨で支払おうとしたら迷惑そうな顔をされたが、これしかないと言ったら仕方なく交換してくれた。

 お店によっては金貨の支払いを嫌がられる時があるから、お店なら銀貨、露店なら銅貨もしくは銭貨を用意しておいた方がいいと助言をしてくれた。

 一応商業ギルドで両替をしてくれるらしいが、ギルド員以外だと手数料を取られるとも教えて貰った。

 宿代を考えれば金貨二枚でも十分高いのか? と一瞬思ったけれども、安宿だしな。

 それにこの世界で生きていくには、お金はいくらあっても困らない。何が必要になってくるか分からないのだから。


 この世界のお金に関しては、銭貨、銅貨、銀貨、金貨、白金貨とある(宿屋の女将さん談)。


銭貨100枚で銅貨1枚

銅貨100枚で銀貨1枚

銀貨100枚で金貨1枚

金貨1000枚で白金貨1枚


 白金貨は王侯貴族や大商人に扱うもので、一般の人が見ることはないだろうとのこと。

 現在の所持金は金貨一枚と銀貨九九枚! 金貨一枚あれば実は半年は何もしないでも生活できたりする。もちろん無駄遣いしなければという注釈はつくが。

 食事中の雑談で女将さんには色々と教えて貰った。

 中でも特に注意すべきは町に入るには身分証が必要になることか。

 これがないと入場するごとに金銭の支払いをしなくてはならず、町によってはかなりの額を請求される場合があるらしい。

 そのことに驚いていると女将さんは不思議そうな顔をした。

 街の中にいる以上、入場しているのだからその点の仕組みを知らないことに何故と疑問に感じたのかもしれない。


「身分証を手に入れるには、ギルドに所属する必要ありか」


 一般的なのは冒険者ギルド。これは特別な技能がなくてもお金を払えば習得可能。

他には錬金術ギルド。薬師ギルド。商業ギルド。魔導士ギルドなど色々あるが、特定の技能を習得しないと本登録出来ないところもある。

 ステータスオープン。と、心の中で唱えるとステータスパネルが表示された。

 昨日あれから試したところ、声にしなくても呼び出せることが分かった。

 そして宿に到着してから色々と町中を歩いたことで分かったこともある。


名前「藤宮そら」 職業「無職」 レベルなし


HP40/40 MP40/40


筋力…30(+1)  体力…30(+1)  素早…30(+1)

魔力…30(+1)  器用…30(+1)  幸運…30(+1)


スキル「ウォーキングLv3」

効果「どんなに歩いても疲れない(一歩歩くごとに経験値1習得)」

経験値カウンター 452/4000

スキルポイント 2


習得スキル

「鑑定Lv2」


 色々と増えていた。経験値カウンターはスキルの効果通り歩くごとに増えていき、数値が上限に達するとレベルが上がる。

 レベル0からスタートして、現在レベルが3上がったからウォーキングのスキルレベルが3になっている。

 スキルポイントが2なのは、鑑定のスキルを取るためにスキルポイントを1使ったからだ。

 レベルが上がるとステータスも変化して、それぞれ10上がった。

 それと同時に筋力…30(+1)と表示されるようになった。カッコ内の数値は、これは職業による補正数値なのでは? と勝手に思っている。

 ……なら最初ステータスの数値が1だったのは職業なしの補正で、それがなかったら素のステータスは0だったことになるのか?

 ……深く考えるのは止めよう。

 またウォーキングのレベルが1上がるとスキルポイントが1付与されて、習得スキル欄にあるスキルを覚えることが出来る。

 このスキルポイントはやり直しが出来るかどうかは謎なので、様子見で必要になりそうな鑑定を覚えて残しておいてある。

 習得スキルに関しては、レベルの上げ方が二通りあると予想される。

 まず単純にスキルポイントを消費してレベルを上げる方法。

 鑑定をLv2に上げる時に要求されたポイントが2だった。スキルに上限があるかは不明。

 もう一つは熟練度を上げてレベルを上げる方法。これはスキルを使用すると貯まっていき、上限に達するとレベルが上がる。

 鑑定のレベルはこちらで上げてみた。

 この熟練度はレベルが上がるごとに要求される数値も増えている。

 同じものを何度も鑑定しても熟練度は上がらなかったが、1時間以上時間をあけてから鑑定したら熟練度が上がったのは確認できている。

 また熟練度で鑑定のLvを2にしてから、ポイントでLv3に上げた場合はどうかと確認してみたら、要求されたポイントは3だった。

 Lv2で2ポイント、Lv3で3ポイントとなると、レベルに応じたポイント数が必要になっていくのかもしれない。

 他に特筆すべきことは……やはり職業だろう。

 職業を鑑定すると、選択できる職業が色々と表示された。

 けれど、どれもまだ未収得スキルと同じように文字が灰色になっていて、選ぶことが出来ない。

 灰色の文字に鑑定を使っても特に反応はない。鑑定のレベルが低いのか、それとも鑑定出来ないものなのかは謎だ。

 職業の転職条件が分かれば、効率良く必要なスキルを覚えていけるのに残念だ。

 昨日一日で分かったことはこんなところか。と、考えていたらお腹が鳴った。

 窓の外を見るともう日が上がり、通りを歩く人の姿がちらほらと見えた。

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