【書評】「庵野秀明 パラノ・エヴァンゲリオン」(太田出版)

 庵野秀明監督へのインタビューと関係者の座談会をまとめた「庵野秀明 スキゾ・エヴァンゲリオン」のつづき(後編)。

 スキゾは、いろいろと発見のある内容であったが、それを期待すると肩透かしを食うかもしれない。最後の竹熊健太郎さんのエッセイ(?)はいらなかったと思う。ページが余っていたのかしらん。

 10ページ目で、庵野監督が『人を見て法を説け』『現実原則』と訴えているのが印象的だった。

 あと、119ページで、大泉(実成?)さんの『結局現実の方がよっぽど面白い。現実の人間は現実のドラマを生きていますから、それを取材して切り取ることはできます』という考えに賛同する。個人的には、フィクションは別に、むりに人間を描かなくてもよいように思う。現実というドラマがすでにあるのだから。

 133ページで、庵野監督は、エヴァの25話を最初に見たときに、自分を天才だと思ったらしいが(見直して後悔)、たしかに、あのときの監督は天才だったと私は思う(生涯を通じて天才だった者はいなくて、天才な時期があるだけと森博嗣が言っていた記憶がある)。

 毛沢東が、物を成し遂げる三つの条件は、若いこと、貧乏であること、無名であることと言ったそうだ。知らなかった。庵野監督は博識だ(83ページ)。貧乏と無名は満たしているが、若くはないので、私はもうだめである。

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