【書評】南北戦争 アメリカを二つに裂いた内戦
「南北戦争 アメリカを二つに裂いた内戦」を読了した。
作者は小川寛大さん。出版社は、中央公論社。
以下は、その所感。
〇南北戦争とはなにか?
相反する経済政策を求める北部と南部が対立し、勢力として少数派だった南部が分離(第二の独立)を求めた。その中で、南部(=綿花の生産地)と密接につながっていた奴隷制が大きな焦点となった争い。
南部の目的は、外交努力(英仏の介入)による南部の独立であり、北部の占領ではなかった。
対する北部の目的は、海上封鎖と南部領内の交通・物流網の破壊(河川の占領)にあり、南部の首都であるリッチモンドの攻略ではなかった。
経済問題(関税政策)が大きなウエイトを占めて始まった戦争は、綿花の輸出に頼っていた南部経済の破壊でおわった。
〇当時の奴隷制の置かれていた状況
・南北戦争開戦時の段階で、白人文明圏において、国レベルの法律で奴隷制を禁じていない国は少数だった。
・アメリカの黒人はほとんど南部にいた。黒人は基本的に奴隷であったため、奴隷を必要としない(綿花を栽培しない)北部の人々は、実際に黒人を見たことすらない者が多かった。北軍の将兵は、南部に進攻してから、奴隷制の問題を認識した。
・南北戦争時の黒人奴隷(健康な成人男性)の値段は、現在の日本円に換算すると一千万。
ちなみに、鎌倉時代の日本の奴隷は二十万程度。
〇当時のアメリカの状況
・南部イコール綿花の育つ土地であり、イコール奴隷制を必要とする場所であった。言い換えれば、南部以外で奴隷は不要であった。そのため、勢力としての南部の伸張と、奴隷制維持への国民の理解には限界があった。
・南部で奴隷を所有していたのは少数の支配層であり、多数の南部白人は奴隷制に関心が薄かった。彼らが銃を手に取ったのは、奴隷制の維持のためではなく、侵略者(北部)から故郷を守るためであった。
〇雑学
エンゲル係数で有名なフリードリヒ・エンゲルスは、軍事評論家として知られていた。
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