希望の化け物だ
『風太郎不戦日記 1』(漫画 勝田文・原作 山田風太郎/講談社)で、戦争末期、まだ戦勝を夢見る人々に対して、主人公の山田が乾いた笑い声をあげながら、次のように独白する。
「希望の化け物だ」
ギリシア神話にパンドラの箱という話がある。
開けてはいけない箱をパンドラが開けてしまったところ、中から厄災たちが飛び出してきた。
あわててパンドラが箱を閉じると、中から何者かがパンドラに声をかけてくる。
ご存じ、「希望」である。
趣旨としては、いろいろな災難に巡り合うが、希望のおかげで人は生きていける。
という神話である。
厄災の中にひとつ混じっていた希望。
しかし、考えようによっては、希望も厄災のひとつとは言えないだろうか。
そのままではいけないことなのに、希望的観測にすがり、人生や組織、社会を壊してしまう事例は事欠かない。
希望=厄災とまでは断言しない。
しかし、希望には厄災の面があるということだ。厄災として半人前だから、箱から出てくるのが遅れたのではないだろうか。
パンドラは、「希望」を箱に閉じ込めたままに、しておくべきだったのかもしれない。
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