パラレルワールド


 その後、お昼休みの時間を利用して、私たちは図書館に行くことにした。

この『別世界』について、少しでも知識を得たかったからだ。スマホでも調べることは出来るだろう。しかし、情報量が多ければ多いほどフェイクも多く、何を基準に信用するかを迷ったからだ。しかも、長時間スマホを使用すれば電池もなくなる。


「どこ行くの?」廊下で不意に声を掛けられ、私たちは振り向いた。そこには浅田さんと塩谷さんが立っていた。

「う、うん、ちょっと図書館に調べもの」

「流石に勉強熱心ね。手伝おうか?」浅田さんが好意で言ってることは分かったが、

「ううん、大丈夫、幸恵もいるし」と作り笑顔で断った。下手をして、昨日の分も知らべようとか言い出されたら困るからだ。

「そう?わかった。じゃあ、後でね」そう言って浅田さんと塩谷さんはトイレへと向かって行った。


図書館で調べた結果、『平行世界』『パラレルワールド』などの概念は理解できたが、行き来する可能性を肯定する意見は少なかった。

あくまでも、概念的にそういった世界がある可能性が高い。と言うのがほとんどの意見である。しかしながら、村は本来の世界だとしても、二日続けて『別世界』に来たと言うのならば、何故、行き来しているのか?という疑問が残る。

行き来ではなく、完全に世界を渡ってしまった、と言うことなのだろうか。或いは、この町が私たちの世界に来てしまったとも言える。

それを確認するには、他の町や都会に出なくてはいけないだろう。けれども、他を訪れたとして、差異を見つけられるかとの疑問も残った。そこで思い出したのが、昨日の地震だ。


この町では地震は起きなかった。では、他の地域はどうだろうと考えた。

スマホは同じように使えたので、調べてみることにした。スマホ等の技術はさほど違いはないようだ。すると、昨日の朝に地震があったというニュースは一つもなかった。そこで考えられる事として、『私たちの村』だけが世界をまたいでしまったと考えられる。テストや昨日からの不可解なみんなの態度などから見ても、時間的に考えれば地震が世界をゆがめた発端とも思えた。

私たちの住む村だけが、他の世界に繋がってしまったと言うことだ。同じように、この世界にあった村は、私たちのいた世界の同じ場所に移動したのだろう。それは、この世界に居たはずの私達が居ないことから想像がつく。地震により空間が歪み、村ごと入れ替わりが起こったとしか思えなかった。

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