118
姫の意識が遠のいてきました。今姫の脳裏に浮かんでるのは準一。そう、侍従長でもなく、お側ご用人の2人でもなく、コマンダーでもなく、将軍でもなく、準一だったのです。
「準一、助けて・・・」
しかし、姫の意識はあっという間になくなってしまいました。
それからどれくらいの時間がたったのでしょうか?
「女王様!・・・ 女王様!・・・」
と、必至に姫を呼ぶ声。ごほっ! ごほっ! 咳き込む姫自身。姫は薄っすらと眼を開けました。そこにあったのはヒャッハーな無骨な男の顔。それを見て姫は思わず悲鳴。
「きゃーっ!」
「女王様、しっかりしてください!」
「え?」
この人、私に敵意はない? 姫がその男をよーく見ると、頭に兜がありません。グラニ帝国軍の兵は全員兜を被ってたのですが、今眼の前にいて自分を介抱してる男の頭には、そのようなものはないのです。代わりに顔中を埋め尽くす刺青がありました。
姫は質問。
「あ、あなたたちは?」
「国境警備隊ですよ!」
姫はびっくり。
「ええ?」
見ると、この男以外にも数人の男の姿があります。全員顔に刺青があります。全員姫が調達してきた自衛隊の小銃を持ってます。そうです、彼らは国境警備隊。ぎりぎりのところで駆け付けたのです。
彼らの足下を見ると、いくつかの死体が転がってました。その内の1つは、ちょっと前に姫ののどを潰そうとした兵です。どうやら姫が気を失ってる間に、全員国境警備隊に退治されたようです。
国境警備隊のメンバーは全員安心した顔を見せ、つぶやきました。
「よかった・・・」
「ぎりぎり間に合った・・・」
姫ははっとして立ち上がると、国境警備隊のメンバーに頭を下げました。
「ご、ごめんなさい!」
姫の突然の行動に国境警備隊のメンバーは困惑。
「ちょ、ちょっと・・・」
「女王様、オレたちゃ下っ端です。そんな小さくならないでください!」
姫は頭を下げたまま、
「あなたたちの棟梁は、私の盾になって亡くなりました」
それを聞いて国境警備隊のメンバー全員に衝撃が。
「ええ・・・」
その内の1人が、
「オレたちゃ、処刑されて当然の悪党でした。なのに先代の王様はオレたちを許してくれたばかりか、国境警備隊という役職まで与えてくれました。
この国の王室はオレたちの命の恩人。オレたちゃ王室のためなら喜んで死ねます。親方もきっと本望だったと思います」
彼らは元々山賊。2年前ノルン王国は隣接するスクルド王国と共同で、両国の国境線に横たわる嶮しい山で山賊狩りを行いました。スクルド王国側で捕らえられた山賊は、すべてその場で処刑されてしまいました。
一方ノルン王国側では、当時の王自ら現場で陣頭指揮。捕らえられた山賊は現場で処刑すると思われたのですが、王は彼らを赦免。そればかりか、国境警備隊という役職まで与えてしまったのです。
当時王の側近はその行為に強く反対しましたが、結果的に2年後の今実を結んだのです。先代王の先見性はかなりのものがあったようです。
廊下。3人の小銃を持った国境警備隊員がにらみを利かしてます。長い廊下の向こう、角の陰には数人のグラニ帝国軍がいます。廊下にはいくつかの死体が転がってます。全部グラニ帝国軍兵士の死体です。
今グラニ帝国軍の兵の1人が廊下の角から少し顔を出しました。
「ち、あいつら・・・」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます