119

 それを見た国境警備隊員が小銃を1発発射。なお、その男は廊下の姫がいる部屋のドアとは別のドアのふち立ってます。

 発射された銃弾が敵兵の眼の前の壁に着弾。バキュン!

「ひっ!・・・」

 敵兵は慌てて顔を引っ込めます。

 ドアが開き、姫が少し顔を出しました。そして質問。

「今どんな状況なんですか?」

 姫の後ろにいた国境警備隊員は持ってた小銃を見て、

「こいつのお蔭で宮殿の半分は押さえました。けど・・・」

「けど?」

「正直なことを言いますと、弾丸タマがいつまで持つことやら・・・」

「え?・・・」

「この銃は先日謀反を起こして国境を越えて逃げようとしたスクルド王国軍が持ってた銃なんです」

 別の国境警備隊員。

「もうその時点で弾丸タマがあまり残ってませんでした」

 姫は考えました。弾丸タマが尽きたらそこから先は肉弾戦? 刀剣を使った肉弾戦なら、訓練されたグラニ帝国軍の方が有利? どうすればいいの?・・・

 空中要塞に張り付いてるノルン王国軍。彼らの半分もいれば、宮殿にいるグラニ帝国軍はすべて退治できるはず。もう1度誰かに行ってもらおうか・・・

 けど、空中要塞がある場所は、同じイザヴェル市内とはいえ、走っても30分はかかります。往復1時間。この時間、はたして国境警備隊員は持つの? いや、馬を走らせれば、もっと早いかも・・・ で、でも、そんなことしてる時間はないか・・・

 姫はふと廊下の突き当たりにあるドアを見ました。その瞬間、姫の脳裏にある考えが思い浮かびました。

 自分の飛行魔法は回復してるはず。飛行魔法が使えるのなら、それに付随した貫通魔法も使えるはず!

 貫通魔法とは、箒に乗って遮蔽物に突っ込むと、箒の柄の先がその遮蔽物に当たる寸前、遮蔽物に人1人分の穴が開くというもの。

 しかしです。遮蔽物に穴を開けるとなると、かなりのスピードが必要になります。0《ゼロ》からスタートとなると、最低50mは必要か? 今眼の前にある廊下、ぱっと見た眼、奥のドアまで25mあるかどうか? 必要な量の半分。けど、やってみる価値はある!

 私があの空中要塞に張り付いているノルン王国軍を呼んで来れば、形勢は逆転するはず! 姫は決意しました。

 姫は国境警備隊員に質問しました。

「私、こっから出てってもいい?」

「ええ? い、いいですけど、どうやって? ここは5階ですよ。窓から飛び降りることは絶対不可能ですよ!」

「飛んで逃げる!」

 その言葉を聞いて国境警備隊員は顔を見合わせました。うち1人が、

「そう言えば女王様は、箒に乗って飛ぶことができましたよね!」

 もう1人の国境警備隊員。

「けど、どうやって脱出を?」

 その男は振り返り、部屋の小さい窓を見ました。

「あの窓じゃ、あまりにも小さ過ぎます!」

 姫は廊下の奥にあるドアを見て、

「あの奥にあるドアをぶち破る!」

「ええ?・・・ 体当たりで壊すんですか?」

「うん!」

 姫は右手を真っ直ぐ前に伸ばしました。

「箒よっ!」

 すると箒がこつ然と現れ、その手に握られました。それを見て国境警備隊員たちはびっくり。感嘆な声をあげました。

「おお~!」

 姫はその箒を握る手を腰のあたりで開きました。すると箒はその高さで空中停止しました。姫はニヤッとしました。大丈夫、飛行魔法は回復してる!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る