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 間者が小銃を握ったまま廊下に出ると、軍団らしき多数の人影がこっちに向かって駆けて来るところでした。全員巨大な身体。裸に無骨な鎧のようなものをまとってます。

 これを見て間者の顔はパッと明るくなりました。

「おお、あれは・・・」

 間者の顔は笑顔になり、思わず手を振りました。

「おーい!」

 すると軍団の先頭にいた数人が反応しました。

「なんだ、あいつ?」

「飛び道具を持ってるぞ!」

「ち、敵か!?」

 先頭にいた兵が横目で後ろを見て、

「おい、弓だ!」

 弓を持った兵の何人かが先頭に出ました。

「まかせろ!」

 弓を持った兵が弓に矢をつがえました。焦る間者。

「お、おい、ちょっと待ってくれよ! オレは・・・」

 兵たちが一斉に矢を放ちました。間者はその矢のすべてを浴びてしまいました。

「うぐぁ!・・・」

 間者は仰向けに倒れました。軍団はその死体をぐるっと囲み、

「おい、こいつ、うちの間者スパイじゃないのか?」

「あー、やっちまったなあ!」

「ま、いっか!」

「飛び道具を持ったままオレたちの前に飛び出してきたんだ。られて当然だろ!」

 兵の1人が刀剣をあげました。

「さあ、みんなぁ、ノルン王国の女王は見えたも同然だ!」

 別の兵も刀剣をかざしました。

「女王首を獲って手柄を上げようじゃないか、みんな!」

 全員一斉に応えました。

「おーっ!」

 実は彼らはグラニ帝国軍正規兵。ブリュンが海峡の向こうから呼び寄せた兵たちです。30人ほどの兵がいますが、これだけの数であるはずがありません。実はこの兵の数が1つの単位。いくつもの隊が宮殿に入り込んでました。


 侍従長は階段を駆け上がり、廊下を走り始めました。ちなみに、階段はこのフロアで終わってます。

 姫は少し遅れてるようで、今廊下を走り始めました。姫は侍女のことを思ってるのか、何度も何度も振り返ってます。侍従長も走りながら振り向き、

「姫、遅れてますぞ!」

 しかし、姫は応えません。侍従長は言葉を続けます。

「塔に行く階段はこちらです!」


 廊下の十字路。侍従長は右に曲がります。

「こちらです!」

 が、そこにはこちらに駆けて来る一団が。グラニ帝国軍の1個の隊です。そのうちの何人かが侍従長に気づきました。

「いたぞーっ!」

 びっくりする侍従長。

「うっ!?」

 侍従長は振り向き、怒鳴ります。

「姫、来てはいけません!」

 兵たちは一斉に矢を放ちました。

「死ねーっ!」

 慌てて姫の方へ行こうとしている侍従長。その身体に無数の矢が命中。

「うぐっ!・・・」

 姫はそれを見て唖然とします。

「ああ・・・」

 侍従長は姫の足下に倒れました。姫は侍従長の身体を揺らします。

「じぃ! じぃ! お願い! 死なないでよーっ!」

 侍従長はなんとか応えます。

「姫、お逃げを・・・」

「嫌! あんなふざけたやつら、私が片づけてやるっ!」

 姫は懐から軍用拳銃を取り出すと、廊下へ飛び出しました。駆けて来る軍団はその姫を見て、

「いたぞ! 女王だ!」

「こんなところでられてたまるかーっ!」

 姫は拳銃を発射。1発! 2発! 3発! すると軍団の先頭にいた3人がもんどりうって倒れます。

「ぐおっ!」

「うぎゃっ!」

「ずぼーっ!」

 軍団は怯みます。

「うう・・・」

 軍団をかき分け、より大きな身体の兵が現れました。

「オレに任せろ!」

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