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 巨大な兵はとげとげがついた巨大な金属製のこん棒を振り上げ、姫に向かって突進します。

「うおーっ!」

 姫は拳銃を1発発射。その弾丸は巨大な兵の鋼鉄の防具に当たりましたが、弾かれました。

「ぐはは~! そんな飛び道具、オレには効かんわ!」

 姫は再び銃爪ひきがねを引きました。発射された弾丸は、兵の右眼に命中。兵は右眼を押さえ、のたうち回ります。

「ぐおーっ、いってーよーっ!」

 姫はさらに銃爪ひきがねを引きたい気分ですが、代わりの銃弾がありません。ここは1発1発大事に撃つしかないのです。

 と、

「姫・・・」

 姫ははっとしてその声が聞こえてきた足下を見ました。そこには倒れてる侍従長が。

「じぃ・・・」

「姫、私はここまでのようです」

「そ、そんなこと言わないでよ・・・」

「姫の目論見通りです。私が死ねば姫の飛行魔法は回復します。

 今日私はあなたに手をあげてしまいました。私は今まであなたに体罰をしたことがありませんでしたが、今日初めてやってしまいました。これはきっとその罰です。あなたに手をあげた瞬間から始まってた運命なのです」

 姫は涙声。

「そんなこと言わないでって、お願いだから!」

「姫、その飛び道具で私にとどめをさしてください。そうすればあなたの飛行魔法は回復します」

「バカ言わないで! そんなことできるはずがないじゃん!」

「それでは私が敵を引きつけておきます。その飛び道具をお貸しください」

 姫は黙って拳銃を侍従長に渡しました。

「姫、行ってください。あなたがいなくなったらノルン王国は終了になってしまいます。ノルン王国の名を末永く残してください。お願いします」

「じぃ・・・」

 じぃのためにも、ノルン王国のためにも、もっともっと強くならないと! 姫はそう固く決意しました。


 盾を構えそーっと廊下の角に近づいて行くグラニ帝国正規軍。2列目にいる兵が前を歩く兵に、

「おい、もっと早く歩けよ!」

 すると前の兵が、

「バカ言うなよ。あの飛び道具の餌食になりたくねぇわ!」

 グラニ帝国の一団はそーっと廊下の角から顔を出しました。すると倒れてる侍従長が自分たちに拳銃を向けてました。慌てるグラニ帝国軍の兵たち。

「うわっ!」

 侍従長はニヤッと笑うと、その拳銃を自分のこめかみに当てました。

「姫、さようなら。最後の最後まで生き延びてください」

 そうつぶやくと、侍従長は銃爪ひきがねを引きました。

 バキューン! 飛び散る脳みそ。それを見て兵たちは唖然。

「い、逝っちまったよ・・・」

 兵の1人がその血だらけの拳銃を握りました。そして銃爪ひきがねを引きました。が、銃弾は発射されません。

「ち、銃弾タマ切れか・・・」

 兵たちは廊下を見ます。が、人の気配はありません。兵の1人が廊下に並ぶドアを見て、

「あんにゃろ~ 部屋の中にでも隠れたか?・・・

 よーし、みんな、しらみ潰しにあのガキを捜し出すぞ!」

「おーっ!」

 兵1人1人が次々とドアを開け始めました。


 ここは部屋の一室。一般向けの客室です。ツインのベッドが並んでいます。窓はありますが、かなり小さく、人はぎりぎり通れません。

 今ドアが開き、グラニ帝国の兵の1人が入ってきました。部屋は静かなもの。兵は軽くあたりを見回して、つぶやきました。

「ここにもいないか・・・」

 兵はドアを閉めようとします。が、そのとき兵は気づいてしまいました。

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