114

 姫は秘密の隠し部屋は地階にあると思っていたようです。隠し部屋はそんな常識の裏をかいた位置にあるようです。

 しかし、この階段は侍女の脇腹のけがに負荷を与えたようです。3人の中で一番後ろにいた侍女の息が荒くなってきました。侍女がふと振り返ると、階段のカーペットに血が点々とついてました。侍女の脇腹の出血量は明らかに増えてます。

 侍従長はふと立ち止まり、侍女を見ました。

「どうした?」

「私はここで敵を迎え撃ちます」

 姫はそれを聞いてびっくり。

「ええ、なんで? 私と一緒に行こうよ!」

 しかし、侍従長はわかってました。

「わかった。じゃ、頼む!」

 姫は侍従長に振り返り、

「ええ? なんで? なんでなのよ!? 一緒に逃げた方が・・・」

 侍女。

「敵はおそらく1人しか残ってませんが、たぶんあいつは間者。どこで網を張ってるのかわかりません。逆に私がここで網を張ってた方が効率的です」

 侍従長は姫の背中を押すように触り、

「さあ、行きましょう!」

「で、でも・・・」

 侍女は強めに、

「行ってください!」

 姫は残念そう。侍女は再び口を開きました。

「あ、そうだ」

 侍女は小銃を2人にかざし、

「これを持って行ってください」

 姫はびっくり。

「ええ、それがなかったら、敵を迎え撃てないじゃん!」

 侍従長。

「それはお前が持っておけ」

 侍女はちょっと考え、

「わかりました」

 と応えました。

 侍従長は再び姫の背中を押し、

「さあ、行きましょう!」

 姫は名残惜しそうに侍女を一べつし、

「お願いします!」

 姫と侍従長は駆け出しました。取り残された侍女は壁にドカッともたれかかりました。と同時に、脇腹の傷から血がドバッと噴き出しました。侍女は思わず悲鳴。

「うぐあっ!・・・

 あは、もうダメか・・・」

 侍女は持ってる小銃を見て、

「ああ、これが敵に渡ると面倒なことに・・・ あは、侍従長、これ、持って行って欲しかったなあ・・・」

 侍女はすぐ下の階に降りました。するとその眼にドアノブが映りました。


 ここは室内。ホテルの1人用客室のような部屋です。ドアが開き、侍女が入って来ました。侍女はドアを閉めました。次の瞬間侍女はうつ伏せにバターンと倒れました。消え消えの意識の中で侍女は思いました。

「まだ、まだ死んじゃダメ・・・」

 侍女は小銃から弾倉をはずしました。そして手を横に振り、その弾倉を投げました。弾倉はうまくベッドの向こうに隠れました。

「これでよし!」

 侍女は先に死んでしまったお側ご用人の侍従を思い出し、

「私も今からそっちに行くよ・・・ 来世では夫婦になろうね、絶対・・・」

 侍女は眼をつぶりました。


 その直後、ドアが開き、最後の生き残りの間者が入ってきました。間者は倒れてる侍女を注視しました。

「こいつ、死んでるのか?・・・」

 間者は侍女の後頭部をつま先で軽く蹴りました。当然反応はありません。

「反応なし。死んでるな」

 間者は侍女が握ってる小銃を凝視。フッと笑うと、小銃を握りました。小銃を奪う気です。が、侍女は小銃を握ったまま、なかなか離しません。

「くそっ! こいつ、ほんとうに死んでるのか!?」

 間者はなんとか小銃を奪いました。

「やっと取れた!」

 が、間者は小銃を見てがっかり。

「ち、タマを入れる部品がねぇーじゃねーか!」

 と、廊下の方からけたたましい足音が響いてきました。間者ははっとします。

「ん?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る