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姫の右掌から出ている光が消えました。姫は侍女に質問。
「どう?」
「はい、かなり楽になりました」
姫の顔はぱっと明るくなりました。
「あは、よかった」
しかしです。実は侍女の脇腹のケガは何1つ良くなってませんでした。侍女はウソをついたのです。やはり姫の
と、ドアの向こうから会話が聞こえてきました。はっとする姫、侍従長、侍女。
宮殿内の廊下。男性2人が歩いてます。2人ともデモ隊の生き残りのようです。2人とも小銃を持ってますが、市井の人間のせいか、右手でグリップ、左手で銃身を持ってます。これではとっさに小銃を撃てません。
「いったい今何人生き残ってんだ、デモ隊は?」
「さあなあ・・・ もしかしたらオレたち2人だけになったかも」
「まあ、敵もあと2~3人。なんとかなるんじゃないか・・・」
「けどなあ、肝心な女王はまだ生き残ってるんだ。あいつを殺さないと話が終わらないぞ」
と、1人の男がはっとしました。
「ん?」
その男がしゃがみ込みました。男の眼の前のカーペットには染みのようなものがあります。
「これ、血か?」
「え?」
もう1人もしゃがみ込んで、その染みを観察します。
「う~ん、ワインの染みじゃねぇの?」
最初にしゃがんだ男は、指先でその染みに触れました。そしてその指先を自分の眼の前に持ってきました。
「濡れてる・・・」
それを聞いてもう1人の男がびっくり。
「ええ、じゃ、今ついたばっかり?・・・」
2人が眼を上げると、そこにはドアがありました。2人は視線と視線を合わせ、うなずきました。
リネン室。今片開きのドアのノブが回転。ドアが開き、先ほどの2人のデモ隊の生き残りが入ってきました。2人は小銃を持ってますが、やはりすぐ撃てる体勢ではありません。
リネン室の中は無人。
「いない?」
突然ガサッという音。2人の男はさっとそっちを見ます。
「そこか!?」
その背後に小銃を構えた侍女がいつの間にか立ってました。
「ここだよ!」
はっとする2人。
「えっ!?」
ズババババーン! 炸裂する銃弾。
「うぎゃーっ!」
2人はあっという間に蜂の巣になってしまいました。
ガサッという物音がした場所には数個の木箱が。その背後から侍従長が現れました。
「どうやら全員片付いたようじゃな」
侍女は応えます。
「いや、少なくともまだ1人は残ってますよ」
侍従長は大広間の観音開きのドアの陰から小銃を乱射してる間者のリーダー格を思い出し、
「そう言えば、いたな・・・ あの男、間者か? 間者だったら厄介だな・・・」
別の物陰から姫が姫が現れました。姫は心配顔で侍女に質問。
「あ、あの~ ケガの方は大丈夫?」
「大丈夫です! 心配はいりません!
さあ、行きましょう! 今の銃声で我々の居場所がバレたはず。残りの1人が襲って来たら大変です!」
廊下。リネン室のドアから侍女、侍従長。姫が飛び出てきました。侍従長は侍女に、
「トランシーバーはさきほど討ち取られた近衛兵が持っていた。残念だが、ここにはもうない」
「じゃ、今兵を呼ぶことは不可能?」
「ああ。そうじゃ。姫を例の隠し部屋に隠すことしかもう手がないのじゃ」
侍従長は階段を上り始めました。侍従長に続く姫は不思議に思い、質問しました。
「え、なんで? なんで上に行くの?」
「例の隠し部屋は塔の上にあるのです!」
「ええ?」
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