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ここでやぐらの出入り口から侍従長とヒャッハーなコマンダーとお側ご用人の2人が現れました。
「ひ、ひ、姫・・・」
侍従長は苦しそう。姫以上にハァハァと荒い息。コマンダーとお側ご用人の2人は、心配そうに侍従長をのぞき込んでます。
「だ、大丈夫ですか?」
姫はもう1つの物見やぐらを指差し、
「じぃ、向こうの塔の兵隊を止めて!」
侍従長は荒い息でなんとか応えました。
「ぎょ、御意・・・」
侍従長はコマンダーを見て、
「お、お前、行って来てくれないか?・・・」
コマンダーは元気そう。
「わかりました!」
コマンダーはやぐらの出入り口に消えていきました。次の瞬間、矢が飛んできて、姫の眼の前をかすめ、壁に刺さりました。びっくりする侍従長。
「姫!」
「私は大丈夫!」
下を見ると、デモ隊の数人が弓矢を構えてます。近衛兵が再び広場兼庭園に小銃を剥けました。
「くそーっ!」
姫はそれを見て慌てます。
「やめてって!」
小銃を構えた近衛兵たちは顔だけ姫の方に向け、
「しかし・・・」
「彼らもノルン王国の国民よ。どんな事情があっても、絶対撃っちゃだめ!」
広場兼庭園では弓矢をデモ参加者に配ってる男の姿がありました。やぐらの上の近衛兵はそれを見て、
「なんなんだ、あいつ? 弓矢を配ってるやつがいるぞ!?」
弓矢を配ってる男をアップ。実は彼はグラニ帝国の間者。少し前にみすぼらしい姿に変装したブリュンに報告をおこなった間者です。透明になってるブリュンはそれを見て、
「ふふ、ナイス!」
間者は弓矢を配りながら思いました。
「万が一を考え用意しておいた弓矢がこんな形で役に立つとは、思ってもみなかったぜ!」
荷車を水路に落とされた夫婦が、この男に駆けてきました。
「オ、オラたちにも弓矢をくれ!」
男はこの夫婦に弓矢を渡し、
「ああ、いいよ! どんどん射ってくれ!」
物見やぐらでこれを見ている近衛兵は、再び姫を見て、
「もうみんなに弓矢が渡ってます。このままでは危険です! 小銃を撃たせてください!」
けど、姫の反応は否定的。再び怒鳴ります。いや、今度は金切声です。
「だめったら、だめーっ!」
複数の矢が飛んできました。その矢が近衛兵の甲冑に次々と当たります。もちろん矢は甲冑を貫くことはできません。が、甲冑をまとってない姫にはかなり危険。侍従長は姫を見て、
「姫、ここは危険です! 避難しましょう!」
侍従長は近衛兵たちを見て、
「みんな、姫を守るんじゃ!」
「御意!」
侍従長は無理やり姫の腕をひっぱり出入り口に向かいました。近衛兵たちはその2人を半円に囲みます。透明になって宙に浮いてるブリュンはそれを見て、
「ふふ、いい調子! いい調子! あ~あ、私もなんか飛び道具を持ってくればよかったなあ・・・」
物見やぐらの上、出入り口から将軍が出てきました。将軍は高齢なせいか、ようやく物見やぐらのてっぺんに到達したようです。
「はぁはぁ・・・ やっと、やっと到着したぞ・・・」
次の瞬間、将軍の額に1本の弓矢が刺さりました。
「うぐっ・・・」
姫はそれを見て唖然。
「将軍!?・・・」
将軍は何か一言発した直後、後ろにバタンと卒倒してしまいました。その場にいた一同は唖然。そして叫びました。
「将軍!」
将軍の身体を観察したお側ご用人の侍女は、みんなの顔を見て、顔を横に振りました。唖然とする姫。
「そ、そんな・・・」
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