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姫が深々と頭を下げました。
「みなさん、よろしくお願いします」
姫は女王。女王はこんなに頭が低いはずがないのですが、先代の王様だった祖父と侍従長の教育が行き届いてるようで、謙虚になってます。
近衛兵全員笑顔で返答。
「御意!」
ここで遠くからけたたましい銃声が。びっくりする侍従長。
「な、なんじゃ、いったい?・・・」
と、姫がドアを開け、部屋を飛び出していきました。侍従長はびっくり。
「ひ、姫、どこに行くんですか?」
この宮殿はぐるーっと堀に囲まれていて、そのすぐ内側は城壁。城壁に付随するように物見やぐらが2塔あり、そこで複数の近衛兵が自衛隊の小銃を連射してます。なお、いつもは堀の上に設置されてる跳ね橋は、今は城壁に収納されてました。
堀の向こうは広場兼庭園。さきほどブリュンに導かれていた群衆がいます。その群衆が次々と小銃の弾丸に倒されてました。
中には水路に荷車を落とされた夫婦とその子どもたちがいます。この一家は庭園の灌木の向こうで小さくなってました。苦し紛れに夫が叫びます。
「くそーっ、なんなんだよ、これーっ!」
子どもたちは泣き叫んでます。この子たち、なんかいつも泣き叫んでるような。
数少ない喬木の向こうにはブリュンがいます。ブリュンは歯ぎしり。
「これが
しかし、思ったより早く撃ってきたわね。しかも、一切遠慮なし。こりゃあ、女王様をバカにし過ぎたかな?」
と、バキューン! ブリュンの眼の前の幹に銃弾が命中。ブリュンは思わず悲鳴。
「うげっ!・・・」
このままだと射殺されてしまう・・・ ブリュンはいろいろと考えました。透明魔法を使って逃げようか? けど、見られたらまずいよなあ・・・ 魔女だとバレたらデモ隊の怒りは、今度はこっちに向かうかも・・・
ええーい、もう破れかぶれだ!
次の瞬間、ブリュンの姿はさっと消えました。透明魔法です。幸か不幸か、その瞬間を見てたデモ隊参加者はいませんでした。
透明になったブリュンは、箒に横乗りになって舞い上がってました。ブリュンが見てる景色が一気に俯瞰になります。ブリュンはつぶやきました。
「ふふ、この高さなら当たらないわよね、絶対」
やぐらの上では近衛兵たちが歯ぎしりしながら小銃を撃ってます。が、突然、
「な、何やってんのよ!?」
近衛兵たちがはっとして振り返ると、そこに姫が立ってました。こんなところに女王様が? 近衛兵たとはびっくり。
「へ、陛下!?」
透明になって宙に浮いてるブリュンもびっくり。
「ええ、女王様がこんなところに?・・・」
姫はたった今やぐらの出入り口から入ってきた模様。この高いやぐらを一気に駆け上がってきたらしく、かなり息を切らしてます。その状態で質問。
「何やってんのよ、みんな!?」
近衛兵たちが応えます。
「デモ隊に制裁を・・・」
「やつら、陛下の悪口を言いながらここでデモしてたのですよ!」
「え?」
姫は広場兼庭園を見ました。そこにはたくさんの射殺体が。中には小さな子どもの死体も。姫は愕然。
「なんなのよ、これ!?・・・」
姫は近衛兵を見て、激怒。
「殺すことはないでしょ!? 子どももいるじゃないの!」
「しかし・・・」
ここで姫の耳に銃声が届きました。姫が銃声の方向を見ると、もう1つの物見やぐらでも近衛兵たちが小銃を撃ってました。姫は唖然。
「え・・・」
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