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 コン! 近衛兵の1人の後頭部(甲冑)に矢が当たりました。

「ち・・・

 ここは危険です!」

 侍従長は姫の右二の腕を握り、

「さあ、姫、こちらへ!」

 姫は将軍の亡骸を名残惜しそうに見ながら、侍従長に曳かれていきます。そのまま出入り口の奥に消えて行きました。お側ご用人の2人もそれに続きます。近衛兵たちは顔を見合わせ、

「我々も退避しよう!」

「了解!」

 近衛兵たちも物見やぐらから退きました。

 これを空中から見ているブリュン。

「ふふ、こっちは放棄されたか」

 ブリュンは振り向き、もう1つの物見やぐらを見ました。

「こっちはどうなってんの?」

 もう1つの物見やぐらでは、今1人の近衛兵がコマンダーにラリアットを喰らったところ。ぶっとい腕のラリアットを喰らって、その近衛兵は泡を吹いて卒倒してます。この時点ですでに3人の近衛兵がが泡を吹いて倒れてました。

 残りの近衛兵たちはコマンダーに小銃を向けてますが、かなりびびってます。

「うう・・・」

 コマンダーはこの近衛兵たちに、

「市民に対する攻撃をやめろ! これは姫の・・・ 女王様の勅令だ! とっととうせろ!」

「うわーっ!」

 近衛兵たちは一目散に出入り口から逃げて行きました。ブリュンはそれを見て、

「ふふ、こっちも放棄されたか」

 ブリュンは城壁に収納された跳ね橋を見て、

「けど、この跳ね橋をなんとか開けないと、血気盛んなデモ隊を有効活用できないわよねぇ・・・」

 ブリュンは考え込みます。

「う~ん、なんかいい手はないかなあ?・・・」

 ブリュンは昨日娼婦を尾行するために、透明になった自分を思い出しました。


 繁華街を歩く娼婦と、彼女を警護する2人の近衛兵。この3人を尾行する透明のブリュン。3人の前に宮殿が見えてきました。

 娼婦と近衛兵とブリュンが跳ね橋を渡り、宮殿の敷地内に入りました。と、ブリュンは地面に設置された大きなレバーの横を通り過ぎました。


 現在のブリュン。

「あれ、跳ね橋を開閉させるためのレバーかな?・・・」

 上空のブリュンはすーっと移動。宮殿の敷地内に入りました。するとそのレバーが見えてきました。

「あれか」

 ブリュンは箒ごと急降下。

「よーし!」

 跳ね橋の内側のすぐ側にある巨大なレバー。その近くに透明なブリュンが乗った箒が停止。ブリュンは箒から飛び降りると、さっそくレバーの先を両手で握ります。

「こいつを反対側に倒せば、きっと・・・」

 が、レバーはかなり重いらしく、レバーは動きません。ブリュンから思わず声が漏れてきました。

「おも~!・・・」

 なおも力を入れるブリュン。

「このーっ!・・・」

 するとレバーが動き始めました。

「動いたーっ!」


 跳ね橋前の広場。収納されてる跳ね橋がビクンと動きました。びっくりするデモ隊。

「は、跳ね橋が動いたぞ?・・・」

 さらに跳ね橋が倒れてきました。

「くっ!」

 デモ隊が一斉に弓に矢をつがえ、それを跳ね橋に向けました。

 ガターン! 跳ね橋が完全に降りました。そこには透明魔法を解除したブリュンが立ってました。弓を構えたデモ隊はびっくり。

「あ、あんた・・・」

 ブリュンは大きく手招き。

「さあ、みんな、早く!」

 それに呼応するデモ隊。

「おーっ!」

 デモ隊が宮殿の敷地に雪崩れ込んできました。

 最初に跳ね橋を渡り切った男がブリュンに、

「ありがと!」

 ブリュンは満面の笑顔で、

「いえいえ」

 と、ブリュンを通り過ぎた直後、男の脳裏にある疑問が湧きました。

「あれ? あの人、どこから宮殿に入ったんだろ?」

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