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実は宮殿では、非戦闘員に退避命令が出てました。それで侍従、侍女衆は順次退避してました。彼らは最後の退避者なのです。
侍従・侍女たちは一斉にこちらに頭を下げました。
「失礼しまーす!」
一同は振り返り、廊下の奥へ駆け始めました。
彼らを見送ってるお側ご用人の2人。2人とも小銃を持ってます。2人にも退避命令が出ましたが、自らの意志で、正確には侍女の固い意志で最後まで姫をお守りすることにしたのです。
一方侍従の方ですが、逃げたくって逃げたくってしょうがありません。自分の命は大切です。けど、将来を誓い合った侍女は姫を守る気マンマンなので、逃げることができなくなってしまったです。結局彼は最後まで彼女に付き合うことにしました。侍従は何もないことを祈るしかないようです。
侍女が侍従を見て、
「さあ、中に入りましょ」
「うん」
侍女はドアを開け、中に入りました。続けて侍従。閉まるドア。
さらにあたりは暗くなってきました。もう夜と言っていいでしょう。ここはノルン王国の田舎にある街道。1台の馬車がとぼとぼと進んでます。首都イザベルから逃げてきた馬車です。
その馬車の馬をコントロールする席に2人の男性が並んで座って会話してます。
「グラニ帝国の軍隊が上陸してきたら、ここもグラニ帝国に占領されるんだろうな」
「ノルン王国の国土すべてがグラニ帝国のものになるんだろうよ」
「いったいどこに逃げればいいんだ?・・・」
と、2人の前方に
「ん、なんだ、あの光は?」
「たいまつか?」
その灯が近づいてきました。2人はびっくり、そして唖然。
「なんだ、あいつら?」
それは国境警備隊を務めてるヒャッハーな連中。1人1人が馬に乗ってこっちに駆けてきます。約30人くらいか? 何人かはたいまつを持ってます。
「うわーっ!」
2人はこの連中に襲われると思い、思わず悲鳴をあげました。が、ヒャッハーな連中が乗った馬は一列になり、馬車とすれ違っていきました。2人は後ろを見て、
「な、なんなんだ、あついら?・・・」
先頭の馬に乗ってるヒャッハーな男。
「やっとオレたちの出番が来た! オレたちゃ先代の王様に生かしてもらったんだ、命を賭けても女王様を守り抜くぞ!」
後ろのヒャッハーな連中が呼応します。
「おーっ!」
さらに夜は更けてきました。宮殿の上には月が出ています。満月と半月の中間の月です。
ここは宮殿内の一室。侍従長と将軍が説明してます。ブリーフィングです。この2人から少し離れた位置に姫が立ってます。その両側にはお側ご用人の2人が小銃を持って立ってます。
5人の前には10人弱の男が立っていて、このブリーフィングを聞いてます。中にはヒャッハーなコマンダーがいます。それ以外は黒ずくめのユニホーム。まるで忍者。実は彼らは近衛兵。いつもの
将軍が発言してます。
「決行は午前0時、皆の者、よろしく頼む!」
全員一斉に応答します。
「御意!」
コマンダーはニヤッとしてぽつり。
「ふふ、0時なら国境警備隊の連中も駆け付けてるはず!」
それを聞いて将軍は渋い顔をしました。あんな連中がいたら目立ってしまうからです。
今回の作戦はひそやかに行わなければいけないので将軍は彼らの行動を止めたいところなのですが、何分彼らは愚連隊。ヘタに止めたら何をされるのかわかりません。ここは運を天に任せるしかないのです。
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