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 弓を持った兵士は、逃げ遅れた農民を次々と矢で射貫いていきます。

 これを空中要塞のコントロールルームのモニターで見ているブリュン。

「あーあ、やっぱ弓矢を使うんだ」


 再びイザヴェル郊外。刀剣を持ったグラニ帝国軍兵士たちは、逃げ遅れた農民を次々と斬殺。たいまつを持った兵士たちは、農家や納谷に次々と火を放っていきます。阿鼻叫喚状態。


 マグニたちがいる孤児院。マグニの母親で保母の女性が、心配顔で門扉に歩いて来ました。門扉のすぐ外は道路。たくさんの人々が逃げてます。中には荷車を曳いて逃げてる物もいます。そのうちの1人が保母に声をかけました。

「こんなところにいちゃダメだ! すぐに逃げろ! 殺されるぞ!」

「あ、はい!」

 保母が振り返ると、すでに児童たちは揃ってました。中にはマグニの姿もあります。

「みんな、逃げるよ!」

 児童たちは一斉に返事。

「はい!」

 門扉が開き、児童たちが出てきました。児童たちは逃げて来る人たちに流されないように、整然となって駆け始めました。その中にいるマグニが振り返ります。後方ではたくさんの黒煙があがってます。マグニはぽつり。

「お姉ちゃん、助けて。ボクたちの家を守って・・・」


 避難してきた人々が小高い丘に集まってきました。孤児院の児童たちの姿もあります。眼下では黒煙がさらに増えてきました。たいまつを持った兵士が次々と家に火を放っていきます。丘に避難してきた1人の男性がぽつり。

「ああ、オラの家が燃やされた・・・」

 その隣の男性。

「ノルン王国は何やってるんだよ! 早く兵を回せよ!」

 さらに別の男性がぽつり。

「やっぱ王様が小娘だと使えないな・・・」


 敵兵が通り沿いの家に次々と火をつけていきます。そのうちの3人が積み木を重ねたような孤児院に到達しました。3人は孤児院の建物を見て、

「なんだ、このふざけた家は?」

「とっとと燃やしちまおうぜ!」

 敵兵の1人が孤児院の敷地に侵入。それを見てる丘の上の孤児院の児童の1人がぽつり。

「ああ、ぼくたちの家が・・・」

 敵兵が孤児院の建物に火をつける寸前、その敵兵の側頭部に何かが命中。反対側の側頭部から脳みそがドバッと散りました。

「うぐっ!」

 側にいた2人の敵兵がそれを見て、

「な、なんだ?」

 その2人の兵はけたたましい銃声とともに、蜂の巣に。

 丘の上の人々が指を差しました。その先には複数のノルン王国軍兵士の姿が。

「おお、ノルン王国の兵だ。ノルン王国の兵が来たぞ!」

 孤児院の児童たちも安心顔になりました。


 グラニ帝国軍の兵5人が刀剣を振り上げ、突進してきます。

「うぉーっ!」

 それに対し、自衛隊の小銃を連射する1人のノルン王国軍兵士。5人のグラニ帝国軍兵士はあっという間に倒されてしまいました。

 丘の上にいた男性の1人が指を差して、

「なんだ、あの武器は? あっという間に敵を片づけちまったじゃないか!?」

 先ほど「王様が小娘だと使えないな」と言った男性が、得意顔になってそれに応えます。

「あの飛び道具は、女王様が自らの左腕を生贄えに未来から調達してきたんだぞ!」

 それを聞いてマグニはびっくり。

「え?・・・」

 先ほどの男性の話が続きます。

「だから女王様は、今片方の腕がないんだ。こんなこと知ってるの、オレくらいだろ! ガハハハ!」

 マグニは姫の質感のない左袖を思い出しました。

「お姉ちゃん、そこまでしてこの国を守りたいんだ・・・ 王様になるって大変なんだ・・・」

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