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侍従長は姫の両肩を掴み、
「あなたはノルン王国そのものです! あなたの代わりはいません。あなたが死ぬということは、ノルン王国が終わるということです! ノルン王国国民を路頭に迷わすつもりですか? ここはご控えください!」
姫は黙り込みました。侍従長は振り返り、コマンダーたち4人を見てうなずきました。
ここは宮殿内の廊下。今ドアが開き、侍従長・ヒャッハーなコマンダー・将軍・お側ご用人の2人が出てきました。5人は歩きながら会話・・・ いや、臨時ブリーフィングを始めました。
侍従長は空中要塞を思い浮かべ、
「あの空中要塞の攻略はムリじゃろう・・・ 我々が今できることは、姫を密かに宮殿の外に脱出させることだけじゃ」
将軍。
「以前の宮殿には脱出用の地下通路があったそうだが、その宮殿は先代の地震魔法で潰れてしもうた。残念だか、今の宮殿には地下通路はない・・・」
コマンダー。
「姫は飛行魔法が使えるから、それで脱出してもらいますか?」
侍従長。
「いや、あの巨大要塞は飛び道具の塊のような・・・ 特に都市1つを破壊してしまう大砲を撃たれたら、空中にいる姫は恰好の餌食になるぞ!」
実は侍従長の脳裏には別の懸念がありました。姫を箒に乗せて飛ばすと、逃走せず、空中要塞に突っ込んで行って、敵将と刺し違えるような気がしてならないのです。今は箒に乗せない方が得策です。
と、その瞬間、侍従長はある魔法を思い出しました。その魔法はマナの力を持たない者でも使える魔法ですが、いろいろと制約のある魔法でした。
もう仕方がないか・・・ 万が一のときはその魔法を使おう。侍従長はそう決意しました。
話を臨時ブリーフィングに戻します。コマンダーの脳裏に別の案が思い浮かびました。
「じゃ、魔法円で異次元に逃げてもらう、というのは?」
侍従長。
「う~ん・・・ 魔法円で異次元に行ってしまうと、姫はここに帰ってくることはできなくなってしまうのじゃ」
コマンダーは残念そう
「ああ、そうでしたね。忘れてました・・・」
そう、姫は魔法円を使って異次元に行くことができます。しかし、向こうに行ってしまうと帰ってくることができなくなってしまうのです。いや、正確には帰りの魔法円というものがあります。
少し前まで姫は往きの魔法円と帰りの魔法円を使って準一の世界と行き来してました。しかし、ブリュンが準一の世界に描いておいた魔法円を破壊してしまったので、準一の世界に行くことは2度とできなくなってしまったのです。
もちろん、行った先の世界で帰りの魔法円を描けば帰ることはできます。けど、それを記したコピーは紛失したまま。ちなみに、原本は姫が図書館と言ってる旧宮殿の建物の中にあります。
侍従長の発言が続きます。
「向こうの世界に姫が行ってしまうと、ノルン王国の王族の血は途絶えてしまう。そうなったらノルン王国はお終いじゃ。それだけはなんとしても避けないと・・・」
コマンダーはぽつり。
「やはり真夜中に裏の門から脱出させることくらいしか選択肢がないのか・・・」
侍従長。
「うむ、夜になったら行動を開始しよう!」
コマンダーと将軍が応えました。
「御意!」
侍従長は今度はお側ご用人の2人を見て、
「お前たちは引き続き姫を警護しろ。今度は部屋に入って直に警護するんだ。姫のことだ、箒に乗ってあの要塞に突撃する可能性があるからな。ちゃんと見張ってるんだぞ」
2人は
「御意!」
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