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 ここは空中要塞の中のコントロールルーム。宇宙戦艦のブリッジて感じ。窓はありません。どうやら空中要塞の中心にあるようです。

 正面には50インチテレビを20個ほど積み重ねたモニターがあります。それぞれ眼下のイザヴェルの街を映してます。

 モニターの前には横に長い巨大なコンソールがあり、数人のスタッフが座って空中要塞をコントロールしてます。スタッフを見ると、全員この時代の人間、兵のようです。中にはモニターを見ながら操縦桿のような棒を握ってる兵もいます。その兵の背後には、白衣の男性が立ってます。

「そうそう、その調子、その調子。そのままゆっくり前進」

 実はこの人物、未来からやってきた技術者でした。

 コントロールルームの中央奥には艦長席のような玉座があり、そこにグラニ帝国第2皇子ナルヴィが座ってます。さらにその横には、魔女ブリュンがいます。ナルヴィは不気味に笑います。

「ふふ・・・」


 ここは宮殿。侍従長とヒャッハーなコマンダーと年老いた将軍が並んで窓の外に見える空中要塞を見て、唖然としてます。

「な、なんじゃ、これは!?」


 ここは姫が籠ってる部屋。姫は何かを感じ、立ち上がり、窓の外を見ました。そしてびっくり。

「な、何、あれ?・・・」

 その部屋のドアの向こうの廊下では、お側ご用人の侍従が、やはり空中要塞を見てびっくりしてます。

「ええ・・・」

 そこに侍女が駆け付けてきました。侍女も窓の向こうの空中要塞を見てびっくり。

「あ・・・ あれ、どうやって浮いてんの?・・・」


 空中要塞は浮いたままゆっくりと宮殿に向かいます。宮殿の中から20人ほどの近衛兵がテラスに出てきました。全員自衛隊の小銃を持ってます。近衛兵のリーダーが号令。

「構え!」

 全員小銃を構えます。

「撃てーっ!」

 全員同時に銃爪ひきがねを引きました。轟音とガンスモーク。


 空中要塞のコントロールルームのモニターの1つに、この一斉射撃が映ってます。ナルヴィは立ち上がり、これを興味深く見ました。

「なんだ、これは?」

 ブリュンが応えます。

突撃銃アサルトライフルですよ」

突撃銃アサルトライフル? あんなものに我が軍の精鋭がやられたというのか?

 ふふ、空中要塞の上に兵を出せ! やつらに矢の雨を降らせるんだ!」

 その命令にブリュンは否定的。

「皇子様、それは辞めておいた方がいいんじゃ?」

「ん、なぜだ?」

「下界にいる者は、この空中要塞ははるか未来のオーバーテクノロジーで造られたと思ってますよ。まあ、現実にそうなんですが。そんな空中要塞からこの時代の矢が飛んで来たら、空中要塞の威厳が半減するんじゃないですか?

 それに矢が風に流される可能性があります。ここから矢を放ったって、当たりませんって」

「むむ、そっか・・・」

「それより、あの声明文を読んでみたらいかがですか?」

「おお、あれか!」

 ナルヴィはコンソールの前に座ってる兵の1人に話しかけました。

「おい、マイクとやらを出せ!」

 その兵は立ち上がり、マイクを持ち、ナルヴィにうやうやしく渡します。

「どうぞ」

 ナルヴィは横目でブリュンを見て、

「こいつに話しかけると・・・」


 宮殿のテラス。ナルヴィの声が響いてます。

「私の声が何百倍にもなり、下界に響くんだな」

 それを聞いて小銃を構えていたノルン王国の近衛兵たちが唖然とします。

「な、なんだ、この声は?・・・」

 そればかりか、侍従長、ヒャッハーなコマンダー、将軍、お側ご用人の2人、空中要塞を見上げてる市中の人々も唖然としてます。

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