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 ドアの廊下側。

「ふぁ~」

 警護してた侍従の口から思わずあくびが出ました。と、慌てて口をふさぎました。

「おっと、マズイ・・・」

 侍従は侍女の眼を見ました。眼光鋭い眼。

「なんでそんな怖い眼してるんだよ・・・」

 侍従は思わず口を滑らせてしまいました。思ったことがそのまま言葉になってしまったのです。すると侍女がそれに強く反応しました。

「当たり前でしょ。私たちはお側ご用人として宮殿に雇われてるのよ! 命を賭けて姫様をお守りしないと!」

 侍従はそのセリフにびっくり。思わず本音を漏らしました。

「ええ~・・・ ただのセックス指南役だろ、自分たちは?・・・」

 すると侍女はさらに顔色を変えました。

「あなた、そんな甘い気持ちでお側ご用人やってたの!?」

 その一喝に侍従はびっくり。

「ええ・・・」

「私たちはお側ご用人として働かせてもらってんのよ、宮殿ここで! お側ご用人と言ったら、姫様の最側近でしょ! 姫様のためなら命を賭けるのは当然でしょ!

 呆れた・・・ あなたとの結婚話はなかったことにするわ!」

 その一言に侍従は慌てます。

「ご、ごめん・・・」

 すると侍女の顔色が優しくなれりました。

「私こそごめん。ちょっと言い過ぎたかも・・・

 ねぇ、少し仮眠を取らない。ここからは1時間交代で姫様を警護しましょ。まずはあなたから」

「い、いや。君から休んでよ」

 侍女は微笑みとも苦笑ともとれる笑みを浮かべ、

「ふ、いいの?」

「うん!」

「OK! じゃ、ちょっと休んでくる」

 侍女は歩き始めました。その顔は今度は明確に微笑んでる顔でした。


 朝となりました。すでに陽は高く昇ってます。ここはノルン王国首都イザヴェルの繁華街。繁華街の朝となると人はまばらて感じがありますが、思った以上の人が行き交ってます。

 小川と道の間にいくつかの屋台があります。が、半分はシートがかかったまま。営業してるのは残り半分。今そこに1人の中年の男性が着席しました。男性は屋台のマスターの顔を見て、

「いよっ!」

 マスターは威勢よく返事します。

「いらっしゃい!」

「今日はオレ1人かい?」

「ええ。昨日は娼館が臨時休業だったようで、お客さん、さっぱりなんですよ」

 マスターはウイスキーが注がれたグラスを男性の前に置きました。

「はい、いつもの水割り!」

 男性はその酒をグイッと呑み、

「ぷはーっ! どうやら女王様のフィアンセが殺されたみたいだな。な~んかこの国の王室は呪われてるなあ。今の女王様は長生きしでくれるといいが・・・」

 と、突然ギュンギュンギュンギュンという不気味な金属音が響いてきました。はっとする男性。

「ん?」

 男性は振り返りました。次の瞬間その男性の顔が突然日陰に入りました。何かが男性と太陽の間に割り込んだようです。男性の顔は突然青ざめました。

「な、なんだよ、こいつは?・・・」

 なんとイザヴェルの上空を巨大な何かが浮いてました。金属音はここから発生してるようです。

 口をぽかーんと開け空を見上げる市民。びっくりして建物から飛び出してきた市民。窓を開け唖然としてる市民。すべての市民が上空に浮いてる何かを見てます。

 下から見るとボウルのような形。上から見ると球体を真っ二つにしたような形。大きさですが、とてつもなく巨大。直径は1kmはありそう。底の部分は金属製のようです。上の部分には艦橋のような塔があります。

 そう、これはグラニ帝国が遠い未来の技術で造った空中要塞なのです。

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