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 ブリュンは続けて準一を思い出し、

「しかし、女の身体の仕組みを教えるって、あの男、そんなにうぶだったの?・・・」

 娼婦の話が続きます。

「だからもしお客様の来館が明日だったら、指名をお断りしないといけなかったんですよ」

「あなたも大変なのね」

「ふふ、その代わり仕事料ギャラは普段の5倍ですから」

 娼婦はブリュンの手を取り、

「じゃ、まず一緒にお風呂に入りますか? お風呂は別のところにあるんですよ」

 娼婦は歩き出しました。手を引かれてるブリュンも、自然に娼婦と歩調を合わせます。ブリュンは自分の手を引く娼婦の手を見て、思いました。

「うわっ、手からマナの力がビンビン伝わって来る! ふふ、この、やっぱマナの力をたくさん持ってるわ!」

 ブリュンは姫を思い出し、

「ま、あののマナの力と比べたら1/3・・・ いや、1/5以下だけど、それでもマナの力が眠ってることには変わりがないわ。これを利用しない手はないわね。

 これで遠い未来に行って技術者をスカウトしてくる必要は無くなったかも? 今日はラッキーデイになるかも、ふふふ」


 翌朝。ここは宮殿の広くて長い廊下。今1つの観音開きのドアが開き、娼婦と準一が出てきました。準一はへとへとな模様。一方娼婦の方は、すっきりとした顔をしてました。

 ドアの向こうでは、姫と侍従長と2人のお側ご用人が待ってました。姫。

「終わったみたいね。お疲れさん」

 準一はへらへらと笑います。

「あははは・・・」

 娼婦は姫を見て、

「今日はありがとうございました。次の当番の日が楽しみです。

 それではまた」

 娼婦は歩き始めました。ちょっと離れた位置に2人の近衛兵が立っていて、娼婦がその2人の前に差し掛かると、2人は娼婦の両側につきました。護衛です。3人はそのまま廊下の奥へと消えていきました。

 姫たち一行が歩き始めました。姫は準一を見て、

「お疲れみたいね。あの娼婦ひと、そんなにすごかったの?」

「すごかったよ。昨日の娼婦ひともすごかったけど、今日の娼婦ひとは昨日の娼婦ひとの数段上だったよ」

 準一は侍女に小声で、

「あ、すみません。ベッドがぐしゃぐしゃになってると思います」

 姫はピンときました。

「もしかしてあの娼婦ひと、潮吹きだった?」

 準一は照れ笑い。

「あははは・・・」

 侍従長は眉をひそめました。けど、注意はしませんでした。ともかく姫には一刻も早く男子を生んでもらわないと・・・ それを考えると、多少の性の妄言は見逃さないといけないのです。

 が、しかし、姫の危ない妄言はなおも続きます。

「ねぇ、準一、ま〇この舐め方、覚えた?」

 侍従長のガマンの限界はここまで。さすがに喝を入れました。

「姫!」

 途端に姫は不満そうな顔を見せました。

「ぶ~」

 しかし、姫は本当に12歳なのでしょうか? お側ご用人の実践的性教育は、効果ありありだったようです。


 朝の花街。朝のせいか人の往来はまばら。その中をキャミソールを着たブリュンが歩いてます。背後には娼館が見えます。ブリュンはつぶやきます。

「ふわ~ やっぱ女はいい! 女は女の弱点を知ってるわ! ふふ、爽快爽快!」

 ブリュンはヒルデを思い出し、

「あの、魔法はものすごい勢いで覚えていったのに、夜の方はからっきしダメだったんだよね。ふふ、こんなことなら毎晩プロの女に抱いてもらえばよかった」

 ブリュンは今度は同衾した娼婦を思い出し、

「あんなにすごいテクニックを披露してもらったというのに、残念ねぇ。あの、今日でお終いなんて、なんかもったいないことしちゃったかも・・・」

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