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ブリュンの頭の中には、姫と準一が結婚するという選択肢はまったくないようです。準一はただの従者だと思ってるようです。
当たり前です。姫=女王様と結婚するにはある程度の身分が必要です。どう見ても準一は、姫の結婚相手にはふさわしくないのです。
ブリュンは娼婦のセリフを思い出しました。
「今日は私が当番です」
「あれ、毎日毎日娼婦を取り換えてるていう意味だよね?・・・
ふふ、いいこと思いついちゃった!」
夕暮れの時間は過ぎ、もう夜って感じのイザヴェルの街。が、ここは花街のせいか、街はにぎやか。人通りはかなりあります。その中を1人の女性が闊歩してます。キャミソールのかなり華美な服飾。顔を見るとブリュンでした。
あまりにも美人なもので、すれ違う男たちが次々と声をかけます。声をかけられるたびにブリュンはこう応えます。
「ごめんね、今日は先約があるの」
ふとブリュンは歩みを止めました。その前には国営の娼館がありました。世間からは第2宮殿と言われてるほどの立派な建物です。ブリュンはニヤッと笑いました。
「ふふ・・・」
ブリュンはさっそくエントランスの前にいる男、我々の世界で言うところの黒服の男に名刺を見せました。
「あ、この
黒服の男はその名刺を見て、
「ああ、空いてますよ」
「じゃ、お願いしちゃおっかな」
ブリュンは思いっきりの笑顔。何かを企んでる笑顔です。
ここは娼館の中の一室。2人の女がきつく抱き合ってディープなキスをしてます。1人はブリュン。もう1人は娼婦。さきほどブリュンが差し出した名刺に描かれていた娼婦です。
ブリュンはキャミソールのままですが、娼婦の方はすでに上半身裸。下半身もパンツだけになってます。
2人が唇を離しました。娼婦は笑顔で、
「今日は私を指名していただき、ありがとうございます」
と言ってますが、頭の中は?でいっぱいでした。実はこの娼婦、女性客に指名されるのは今回が初めて。そればかりか、女性客も初めてでした。なんで指名されたのか、てんでわからない状態なのです。
けど、娼婦にとって指名は名誉。指名料も上乗せされます。ここはいつも以上にテクニックを披露しないといけません。
でも、この娼婦、女性客を相手にしても大丈夫なのでしょうか? 実はここの娼婦たちは、排卵日近くになると妊娠を避けるために、休まないといけません。これはこの娼館のルールです。
しかしです。排卵日になるということは、発情するということ。毎日毎日男性に抱かれてる、いや、抱いている娼婦に発情をコントロールすることは絶対不可能。そこで排卵日前後は娼婦同士で愛し合ってました。そんな理由でこの娼館の娼婦たちは、女性客でも相手にできるのです。中には女性客に大人気の娼婦もいるようです。
2人は再びディープキス。2人の舌が絡み合います。このときブリュンは心の中でニヤッと笑いました。実はキスをしながら今一番秘密にしておかないといけない秘密をみずから暴露してしまう魔法を娼婦にかけたのです。さっそく娼婦はその期待に応えてくれるようです。
娼婦は再び唇を離し、
「お客さんはラッキーですよ」
「え?」
「実は私、明日宮殿に行って仕事をしないといけないんですよ」
「宮殿? なんの仕事?」
「今度女王様と結婚する男性に女の身体の仕組みを教える仕事ですよ」
ブリュンは頭の中で驚きました。
「ええ、あの2人結婚すんの? あの男、そんなに身分が高かったの?」
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