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 ブリュンはちょっと考え、

「そうだ、地面に降りて歩けば・・・」

 ブリュンは透明のまま、跳ね橋に降り立ちました。箒に乗ってると高い位置からマナの力を放出してることになります。それだと姫にマナの力を感じ取られる可能性が高くなります。一方地面に降りれば、マナの力はそれほど広範囲には飛ばないはず。

 ブリュンは徒歩で娼婦たち3人を尾行することにしました。


 娼婦たち3人とブリュンが、跳ね橋を過ぎ、宮殿の敷地内に入りました。

 と、ブリュンは右側が気になりました。そこには巨大なレバーがありました。

「何、これ?」

 ブリュンは振り返り、跳ね橋を見ました。

「あ、跳ね橋を開閉させる装置ね」


 3人+1人が宮殿の中に入りました。厳重に警備された宮殿ですが、ブリュンは透明になってるので、難なく入ることができました。ブリュンは警備してる近衛兵を横目で見て、

「うふふ、気づいてない、気づいてない」


 宮殿の中の立派な廊下を歩く3人。その向こうにいくつかの人影が見えてきました。ブリュンが眼を凝らします。

「ん、誰かいる?・・・」

 人影の先頭をクローズアップすると、それは姫でした。

「うわっ、やばっ!」

 ブリュンは慌てて柱の陰に隠れます。ブリュンは眼の前のぶっとい柱を見て、

「この柱、私のマナの力を遮断してくれるよね?・・・」

 これだけ太い柱だとさすがにブリュンのマナの力を遮断するはずです。けど、マナの力は壁などに反射し、拡散します。姫に届く可能性大。しかし、今姫の側には準一がいます。準一のマナの力が強すぎて、姫はブリュンのマナの力を感じてないようです。

 ブリュンは少しだけ顔を出し、姫一団と娼婦のやり取りを見ました。

「娼婦がこんなところで女王様に謁見って、いったいどういうこと?」


 廊下と廊下の交差点。侍従長が娼婦の前に立ちました。

「ようこそいらっしゃいました」

 とあいさつ。娼婦も娼婦流のあいさつ。

「今日は私が当番です。私がお客様を心行くまでおもてなしします!」

 娼婦は準一を見ました。

「では、参りますか?」

 娼婦は準一の右肘に自分の左肘を絡めました。準一は照れ笑い。

「あはは・・・」

 と、姫が2人の前に立ちました。

「あ、ちょっと待って!」

 姫は娼婦を見て、

「私があなたに望むことは、この人を気持ちよくさせることじゃないわよ。この人に女を喜ばせる方法を教えて欲しいの」

「ふふ、わかってますわよ、女王様」

 どうやらこの娼婦、すでにやる気マンマンのようです。たとえ女王様であっても、こんなところで性欲の邪魔はされたくないようです。娼婦と準一は侍女に導かれ、廊下の奥へと歩いて行きました。

 なお、侍女はいつものお側ご用人の侍女ではありません。当の侍女は侍従とともに姫の背後にいました。

 姫は侍従長を見て、

「じぃ、私たちも行きますか?」

「御意」

 姫と侍従長とお側ご用人の2人も別の方向に歩き始めました。ブリュンから見て左側です。が、ふと姫は何か感じ、立ち止まりました。

「ん?」

 姫は振り向きました。ブリュンは柱から少しだけ顔を出してましたが、慌てて顔を引っ込めました。

「やばっ!」

 侍従長は振り返った姫を見て、

「姫、どうなされましたか?」

 姫は頭を捻り、

「気のせいかなあ、今マナの力を感じたような?・・・」

 4人は再び歩き始めました。柱の陰ではブリュンがふーっと息を吐いてます。

「た、助かったぁ・・・ しかし、なんなのよ、女王様あいつ? 自分の従者に娼婦を抱かせてるなんて・・・」

 ブリュンは先ほどの姫のセリフを思い出しました。

「私があなたに望むことは、この人を気持ちよくさせることじゃないわよ。この人に女を喜ばせる方法を教えて欲しいの」

「あれ、どういう意味?・・・」

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