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 ここは海。遠くに陸地が見えます。今その陸地から箒に横乗りしたブリュンが飛んできました。ブリュンは呆れ顔。

「まったくあのバカ皇子、いったい何考えてんのよ!? 要塞の技術者に約束した金塊を渡して元の世界に戻せば、その人が武器の専門家をスカウトしてくるって発想はないの?・・・

 お坊ちゃん育ちの人は人の上に立たない方がいいわね、まったく・・・」

 ブリュンの眼の前は夕陽。その手前に港が見えてきました。ノルン王国の首都イザヴェルの港です。ブリュンが宣言。

「透明魔法!」

 するとブリュンの身体と乗ってる箒が緑色に発光し始めました。ブリュンが乗ってる箒は、停泊中の船のマストの間をすり抜け、埠頭を低空飛行。下にはたくさんの人が行き交ってますが、誰もブリュンに気づいてません。当たり前です。ブリュンは透明魔法で自らの姿を消してしまったのです。影さえ作りません。

 ブリュンのぼやきが続いてます。

「未来の世界かあ・・・ な~んかあの世界、嫌なんだよねぇ・・・

 市民はみんな顔が登録されていて、登録されてない顔があるとたくさんの警官が飛んでくるんだよね。今やってる透明魔法を使えば問題ないんだけど、そんなことしてたら肝心な技術者は見つけにくくなるし・・・

 あ~ 嫌だなあ~ ほんと、未来行くの・・・」

 ブリュンは姫の顔を思い浮かべました。

女王あいつをブッ殺せば未来に行く必要はないかな?・・・ けど」

 ブリュンは今度は準一の顔を思い浮かべました。

「あいつが邪魔なんだよなあ・・・ あいつのマナの力、女王より数段上なんだよな・・・ 女王様をやっつけるとなると、まずはあいつをやっつけないといけないんだよね」

 と、ここでブリュンはあることに気づきました。

「ん?」

 繁華街の道を変わった衣装で歩く女がいます。ビキニのような衣装を着て、その上から透明なロングドレスを着た女。その女の前には2人の兵士が歩いてます。2人の兵士は明らかに女を護衛してます。2人の兵士はかなり立派な甲冑を纏ってます。

 ブリュンは女に注目しました。

「あれ、娼婦じゃないの?」

 そう、彼女は娼婦。この街の娼婦は仕事で外を歩くときは宣伝を兼ねて、この服装にならないといけないのです。

 ブリュンは今度は前を歩く2人の兵士を見ました。

「あの2人は近衛兵? 近衛兵じゃないとこんな金ぴかな甲冑は纏えないよね・・・ なんだろ?・・・」

 ブリュンは箒に乗ったまま、この3人を尾行してみることにしました。


 夕闇が迫ってきました。3人の前に宮殿が見えてきました。そう、この娼婦は今夜準一の相手をする娼婦なのです。

 3人が宮殿のお堀にかかる跳ね橋を渡ります。ブリュンは上空からそれを見てます。

「宮殿・・・ やっぱあの2人は近衛兵だったか。けど、宮殿に娼婦てどういうこと? 宮殿があの娼婦を雇ったていうこと?・・・」

 ブリュンは1つ思い違いがあるようです。ブリュンが今まで行った国々では娼婦というのは卑しい仕事。けど、ここノルン王国ではかなりステータスのある仕事なのです。

 ブリュンは姫の顔を思い浮かべ、

「参ったなあ・・・ 私、マナの力が半端ないから、こんなところに入ったら、一発であの女にバレちゃうよ~・・・ う~ん、どうしよう?」

 ブリュンは娼婦の目的がなんなのか、気になって気になって仕方がありません。けど、姫のマナの力の感知能力はかなりあります。これ以上進んだら絶対侵入がバレます。

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