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 箒に跨った姫と準一。姫の話が続いてます。

「私はおじいさまの孫。おじいさまの血は1/4しか受け継いでないわ。もしマグニくんが本当におじいさまの息子だったら、半分はおじいさまの血。なら次に魔法が現れる人はマグニくんのはず。次の王様はマグニくんにならないといけなかったのよ!

 彼は男の子。男の子なら地震魔法が使えたはず。地震魔法があればこの世は簡単に平定できるはず! グラニ帝国の侵略なんか、簡単に押し返すことができたはずなのに・・・

 実際魔法が現れたのは私だった・・・」

 姫はひらひらと風になびく自分の左袖を見ました。

「もしマグニくんが本当におじいさまの子だったら、私はこんなに苦労する必要はなかったのに・・・」

「マグニくん、今年いくつになるの?」

「6歳よ」

「てことは、君が王様になったときは5歳・・・ う~ん、もしかして魔法を受け継いで王様になるには、年齢制限ていうものがあるんじゃないの?」

「私もそれを考えたんだけど、うーんと昔には2歳で王になった人もいたみたい。まだ地震魔法というものがなかった時代だけど。

 話をマグニくんが生まれる前に戻すわよ。あの保母は処分すべきだと一部の侍従や近衛兵は血気盛んになったそうよ。けど、おじいさまは保母に何かあったら大震災を起こすとみんなを脅かしていた。だから配下のものは誰も行動を起こせなかったみたい。

 マグニくんが生まれるとおじいさまはとても喜んで、あの場所に孤児院を移し、優秀な教員も呼び寄せたそうよ」

「へ~・・・ 侍従たちはよく反対しなかったね。国のお金使ったんでしょ?」

 姫は首を横に振り、

「ううん。おじいさまは宮殿に眠るお宝を投げ売って資金を捻出したそうよ」

「へ~ そっかあ・・・ それじゃ侍従たちは、何も文句を言えないか・・・」

 準一は児童養護施設の門に掲げられていた看板を思い出しました。

「あの門の看板に王立て文字があったけど、あれにはそういう意味があったんだ」

「ま、おじいさまが亡くなった今は、ノルン王国が直接管理してるけどね」

「君のおじいさん、ずーっとマグニくんのこと、自分の子どもだと思ってたのかな? それともあの保母さんに思いを寄せていた?」

「さあ、今となったらなんとやらね・・・」


 ここは海峡の向こうの宮殿の中の大広間。中央に魔女ブリュンがひざまずいてます。

「何か御用でしょうか、皇子様?」

 ブリュンの前には玉座があり、そこにグラニ帝国第2皇子ナルヴィが座ってます。

「ブリュンよ、いよいよ例の要塞が完成したぞ」

「おお、ついに!」

「明日最後のテストを行うそうだ」

「てことは、明後日から実戦投入できる、と?」

「順調にいけばな。しかし、あの要塞、肝心な武器はいっさい積んでないんだ」

「ええ、今回私が遠い未来から連れてきた技術者は要塞のエキスパート。武器に関しては門外漢。また別の技術者が必要になりますねぇ・・・」

「そこでだ、お前にはまた未来に行ってもらう。今度は武器のエキスパートをスカウトして来てもらいたい!」

「要塞を造った技術者は?」

「奴隷だ、当然だろ。あんなやつに払う余剰金、グラニ帝国には一切ないわ。がはははは!」

 ナルヴィ皇子は高笑い。それを見てブリュンは引いてしまいました。

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