58
姫は書架の本を見て、
「この本の中には、ノルン王国の歴代の王様のことが書かれてるわ。ま、大半は歴代の王様の魔法のことばかりなんだけどね。
昔は飛行魔法を使える王様が何人もいたみたい。私は280年ぶりの
姫は1冊の本を手にしました。閉じた状態でA3より大きな本です。ただし、厚さはほとんどありません。
姫は左手がありません。そのせいか、右手で本を掴んだ次の瞬間、本を落としてしまいました。
「あっ!」
準一は慌てて手を出し、その本をキャッチ。
「おっと」
準一はその本を姫に差し出し、
「はい」
姫はにこっとしました。
「ありがと」
姫はテーブルを見て、
「あそこに置いて」
「OK!」
準一は本をテーブルの上に置きました。姫が本を開くとはみ出してしまうほどの大きさ。姫が開いたページには、魔法円が描かれてました。ページいっぱいの大きさです。準一はそれを見て驚きました。
「あ、それ・・・」
「そう、これは宮殿の大広間に描いた魔法円」
姫がページをめくると、そこには別の魔法円が描かれてました。
「これは準一の世界に行って、空に描いた魔法円。全部この本を参考に描いたのよ。一度消えた魔法円を復活させる方法が書いてあれば嬉しいんだけど・・・」
姫はページをめくりました。しかし、この本、数ページしかありません。すぐに終わってしまいました。姫は苦笑して、
「あは、書いてないか・・・」
姫は書架の前に行くと、別の本を指差しました。厚さも大きさもふつーの本です。
「準一、今度はこれを取って、お願い」
「OK!」
準一はその本を取り、テーブルに向かいました。そしてさっきテーブルの上に置いた本を取り、今取ってきた本を置きました。
「ありがと」
と言うと、姫はさっそくこの本をめくり始めました。
準一は大きな本を書架に返しました。そして横目で姫を見ました。姫は真剣な眼で本をめくってました。
「この本にも書いてないか・・・」
「姫、もういいよ。オレ、あっちの世界に帰っちゃいけない男なんだよ」
「私はノルン王国の女王よ。これくらい探し出さないと・・・」
それを見て準一は呆れました。パトロール魔女ジェニー。準一のお気に入りのアニメ。これを一刻も早く姫に見てもらいたくって、見てもらいたくってしょうがないのです。なのに姫は、なかなかこっちを見てくれません。
オタクは身勝手なものです。そのアニメでは魔女が肯定的に描かれてます。姫は祖父を魔女に殺されてます。そんなアニメは見たくないはずです。準一はそんな姫の気持ちがわかってないようです。
準一は手持ち無沙汰に書架から1冊の本を取り出し、ペラペラとめくりました。すると本の間に挟んであった1枚の紙片が落ちました。
「ん?」
準一はその紙を拾い、見ました。そこには魔法円が描かれていて、短い文章が添えられてました。準一はその文章を読みました。
「
ちなみに、準一はこの世界に初めてきたとき、姫から魔法の飴(薬)を飲まされ、それを機にこの世界の言葉を何不自由なく理解できるようになりましたが、それと同時に、この世界の文字も理解できるようになってました。
準一は、
「これ、何かの役に立つかも・・・」
と思うと、その紙片を小さく折り、胸のポケットに入れました。姫は今の準一の行動にまったく気づいてないようです。
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