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「じゃ、いつものようにやりますよ」

 姫は応えます。

「お願い」

 侍従はちょっとしゃがみ、大きく口を開け、侍女の左乳房にしゃぶりつきました。その瞬間侍女の口は半開きになり「ふわ~」と声にならない声をあげました。と同時に、姫の身体もビクンと反応しました。

「ああ、したい。私も早くしたいよ・・・」


 それからしばらくして、ここは準一に与えられた部屋。かなり豪華な部屋です。まるでお姫様が使うような天蓋つきベッドに準一が横たわってます。

 今日準一はいろんなことがありました。特に一番大きかった事象は、実の父親を殺してしまったこと。

 仕事仕事で家族のことなんかちっとも顧みなかった人物でしたが、それでも父親は父親。自分の遺伝子の半分は、この父親のものです。自分は父親の分身。それを殺してしまったなんて・・・

 本来なら裁判を受け刑務所に入ってちゃんとお勤めしなくちゃいけないのですが、卑怯にも自分は異世界に逃げてしまいました。この異世界でどうやって生きていけば、父親への慰めになるのだろうか?

 まてよ、オレはなんでこの世界にいるんだ? みんなに姫と呼ばれてるあの女王様に連れて来られたからじゃないか?

 姫はオレを必要としてた。だから連れて来られた。じゃ、姫のために一生懸命働けばいいんじゃないのか?

 そんなことを考えてるうちに準一は、いつの間にやら寝てしまいました。彼もかなり疲れていたようです。


 それからどれくらい時間が経ったのでしょうか? 突然ドアがノックされました。それと同時にドアの向こうから声が。

「準一殿! 準一殿!」

 それは侍従長の声でした。ベッドの準一は眼を開け、半身起き、眼を擦りました。

「ん~」

 準一は寝ぼけてます。ドアの向こうから。

「失礼しますぞ!」

 ドアが開き、侍従長が入ってきました。

「準一殿、大変です!」

 準一は眠たそうな眼で

「え・・・ どうしました?」

「グラニ帝国軍が船団を組んで、対岸を出港したようです!」

 その一言で準一は完全に目覚めました。

「ええ!?・・・」

「あなたはぎりぎり間に合ったようです。姫の判断は正しかったようですな!

 さあ、早く着替えて!」

「わ、わかりました!」


 なんとなく明るくなってきた砂浜。たくさんの兵が波打ち際近くで横1列に並んでます。砂浜は段丘のようになっていて、2mくらい高くなった場所にも横1列に兵が並んでいます。

 その中を走る侍従長と準一。準一は両側にできた兵の壁を見て思いました。

「うわっ、すごい数! 戦争が近づいてんだな・・・」

 準一は空を見上げました。夜空を彩るジャガイモのようなゴツゴツとした2つの月。準一は昨夜交わした姫との会話を思い出しました。

「君の世界にも月はあるの?」

「あるよ、2つ。けど、こんなに丸くないよ。ジャガイモみたいにゴツゴツしてるし・・・」

 そして思いました。

「あは、この世界の月は本当にジャガイモみたいだ」


 横に並んだ兵の中央あたりに巨漢のコマンダーと将軍がいます。そこに声が。

「将軍!」

 将軍とコマンダーが振り返ると、侍従長と準一が駆けてくるところでした。

 2人が将軍の側に来ました。さっそく侍従長が質問しました。

「今どのような状況ですかな?」

 将軍は応えます。

「対岸の港から敵の手漕ぎボードが一斉に出向したようです」

「数は?」

「それが・・・ 数えることが不可能なほどの数だと言ってました」

 準一は心の中でぽつり。

「うわっ・・・」

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