25

 侍従長は再び質問。

「今どこまで来てますかな?」

 将軍は応えます。

「偵察船によると、海峡の半分は越えてるようです」

 それを聞いて準一はある疑問が浮かび、つぶやきました。

「対岸のスパイや偵察船とどうやって連絡を取り合ったんだろ?」

 と、準一の耳に声が入ってきました。

「わかった!」

 準一はその声の方向に振りかえると、1人の兵がトランシーバーに話しかけてました。その背中には無線機用の機材が見えます。準一はびっくり。

「ええ、トランシーバー?・・・」

 トランシーバーを持った兵が侍従長たちに報告。

「敵はあと10分ほどで目視できます!」

 将軍はその兵に質問しました。

「敵は篝火かがりびを焚いてるのか?」

「いいえ、無灯火のようです!」

「ああ、そうか・・・」

 将軍は遠眼鏡とおめがねのような古式ゆかしき単眼鏡を取り出し、水平線の彼方に向けました。

「う~む、篝火かがりびを灯してないとなると、肉眼では捉えにくいな・・・」

 準一はそれを見て、心の中で苦笑。

「なんだよ。最新鋭のトランシーバーを持ってるクセに、双眼鏡はないのかよ」

 準一が侍従長に質問しました。

「あのトランシーバー、姫様が?」

「トランシーバー?・・・ ああ、あれはトランシーバーというのですか。ええ、あれは姫があなたの世界からこの世界に持ち込んだものです。ふふ、さっそく姫が調達してきた武器が役に立ちましたな」

 準一は姫を思い浮かべ、心の中で、

「そっか。あいつが調達してきたんだ。けど、トランシーバーだけじゃ・・・ 武器はどうするんだろう?」

 歴史に興味がある準一は物凄く大きな弓矢を持った鎌倉時代の武士の軍団を思い浮かべました。

「弘安の役(第2次元寇)のとき、鎌倉幕府軍はものすごく射程距離の長い弓矢を開発していて、近づいてきたモンゴル軍を上陸させなかったと聞くぞ。それに代わるような武器はあるのか?・・・」

 兵1人1人を見ると、すべての兵は1mくらいのぐるぐるに巻かれた布切れを持ってます。どうやら何かを包んでるようです。

「なんなんだろう、あれ? あれが武器なのか? あんなもので敵を撃退できるの?・・・」

 と、ここで突然上空から声が。

「みんなーっ!」

 準一、侍従長、巨漢のコマンダー、将軍、そして兵たちが一斉にその声がした上空を見上げました。するとなんとそこには、箒に乗って飛行中の姫がいました。みんなびっくり。口をあんぐりと開けてます。ちなみに、今回の姫の衣装ですが、裾が長く、パンツは見えません。

 姫は準一たちの眼の前に箒をめ、ひらりと箒から降りました。

「よいしょ、と」

 侍従長はお冠。

「姫、何を考えてるんですか? ここは戦場ですぞ!」

 姫は箒を持ち、

「先代の王様も12歳のとき最前線に赴いて、たくさんの功績をあげたと聞くわよ」

「先代の王は地震魔法という武器がありました。あれがあったからこそ、我が軍は勝利できたのです!」

「私だっていろいろと魔法が使えるわよ!」

「姫の魔法に戦場で武器となるものはありません!」

 姫は膨れっ面になり、

「ぶー」

 ここで単眼鏡で水平線の果てを観察してた将軍が、

「来たっ!」

 その声にみんなが緊張し、水平線の果てを見ました。肉眼では点のようにしか見えないのですが、確かに何かが見えます。

 侍従長が命令を発しました。

「皆の者、姫を囲むのじゃ!」

 コマンダーが応えます。

「おーっ!」

 将軍も応えました。

「了解じゃ!」

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