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机のイスには男性が座ってます。若い方の男性です。男性は自分の唇に触れました。そして思い出しました、少女とキスをしたことを。どうやらその先にあったかもしれない彼が望んだ行為を想像してるようです。
男性はサイドボードに手を伸ばしました。その上にはフィギュアがたくさん並んでます。サイドボードの一部は棚になってるのですが、そこにもフィギュアがたくさん並んでました。とてつもない数のフィギュアです。すべてアニメキャラのフィギュア。彼はそっち方面のマニアでした。
男性はフィギュアの1つを手に取りました。パトロール魔女ジェニーのフィギュアです。
パトロール魔女ジェニーとは、以前日曜日午前中に放送されていた幼児向けのアニメ。主人公の少女ジェニーは、ピンチになると正義の魔女に変身し、怪人や妖獣や妖怪に立ち向かい、退治します。幼女以上にマニアに人気なアニメでした。男性もこのアニメを見て、ジェニーのファンになってました。
ジェニーは日本人の父とヨーロッパ人の母親とのハーフ。そのせいか、顔は日本人なのに髪は亜麻色でした。それが昨夜の少女を彷彿させるのです。ジェニーは箒に乗って空を飛ぶことができます。その点も昨夜の少女と同じでした。
男性はジェニーと箒に乗ってタンデムで飛ぶ光景を妄想しました。月夜の晩、空を飛ぶ箒。前にはジェニー・・・ いや、昨夜の少女が乗ってます。後ろには男性。
少女はうれしそう。キャッキャキャッキャとはしゃいでます。そして後ろに乗る男性を横目で見ました。
「どう?」
男性は応えます。
「最高だよ!」
「よかった~、あなたを連れてきて~!
もっともっとすごいことしてあげる。私のお腹に掴まって!」
「え?」
男性は顔を赤らめ、
「い、いいの?・・・」
「いいよ」
男性はちょっと考え、そして少女のお腹に両手を巻きつけました。
「もっとぎゅっと掴まってよ!」
「あ、ああ・・・」
男性はさらに力を入れます。
「じゃ、行くよ!
えい!」
少女は気合を入れると、トンボ返り。逆さまになった男性は、思わず悲鳴。
「うわーっ!」
水平に戻ると少女は再びキャッキャ。
「きゃはは~!」
男性はその少女の笑顔を見て、自分も笑顔になりました。
現在の男性の部屋。男性の背後から突然声が。
「準一、朝ごはんよ!」
その声で男性は我に返りました。声はドアの向こうから。そう、男性の名前は準一。苗字は明石です。準一は立ち上がると、そーっとドアを開けました。
ドアの外は廊下。右に行くと廊下が続いてます。直進するとすぐに下り階段。人の気配はありません。
準一はあたりをキョロキョロすると、ドアの近くに置いてあったお盆を取りました。お盆にはトーストやハムエッグ、牛乳を満たしたコップが載ってます。準一は部屋の中に引っ込み、ドアを閉めました。
準一は机の上のノートパソコンをどけると、そこに先ほどのお盆を載せました。
そう、準一は引き籠りなのです。それは準一の父親にも母親にも悩みのタネでした。
オフィス街にあるビルの1つ。そのオフィスの一室。かなり大きな部屋です。ディスクが整然と並んでます。ディスクの上には1つ置きに大きなディスクトップ型パソコンが置いてあり、その間にはA2の図面などが置いてあります。ちょっと雑然とした感じ。
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