次の瞬間、男性の視野が突然ボケました。

「あ、あれ?・・・」

 男性はそのまま気を失ってしまいました。

「おっと」

 少女は慌てて立ち上がりました。男性の身体はカウチに横になりました。少女はその男性を見て、

「あは、マナの力、全部いただいちゃったからなあ。しばらくはこのままかな?・・・」

 その瞬間、少女の左手がズキンと痛みました。少女は左手の切断面を慌てて押さえました。

「痛っ・・・ まだ完全に治ってないか・・・

 おうちに帰らないと・・・」

 少女は眼の前の掃き出し窓のクレセント鍵を右手の指でカチッと解除すると、その窓を開けました。外はまだ真っ暗。けど、東の空は若干明るくなってます。

 少女は右手を真上にあげました。

「箒よ!」

 すると突然箒が現れ、その右手に握られました。少女は再び男性を見て、

「ありがと。また来るよ」

 少女は箒に跨りました。すると少女の身体は浮き、そのまま窓の外へ猛スピードで出て行きました。

 カウチの男性はまだ起きないようです。


 ここは異国か? なんか中世ヨーロッパて感じの街。国の首都のようです。また港湾都市らしく、巨大な船舶が何隻か見えます。


 かなりにぎわってる街のようですが、今は未明のせいか、シーンと静まり返ってます。


 ここはそんな街の中心地にある宮殿。その内の大広間です。その部屋のど真ん中に巨大な魔法円が描かれてます。

 その縁に数人の兵士とともにかなり大柄な男性が佇んでます。男性はヘビメタ調の衣装と化粧。200kgオーバーの巨漢。どう見ても北○○拳のヒャッハーなザコキャラなのですが、実は彼は兵士。しかもかなり高位なコマンダーなのです。

 巨大なコマンダーはかなりイライラ、そわそわしてる模様。何度も何度も同じことをつぶやいてます。

「まだか、姫はまだか・・・」

 と、白かった魔法円が突然青く発光し始めました。コマンダーはそれを見て色めき立ちました。

「来た!」

 コマンダーは近くにいた数人の兵を見て、命令しました。

「おい、侍従長を呼んで来い!」

 兵の1人が慌てて応えます。

「りょ、了解!」

 が、それを遮る声が。

「ちょっと待ってください!」

 その声の持ち主は1組の男女カップル。男性の方は20歳くらいの侍従。身長170cmくらい。着てる服は執事風。絵に描いたような美形。

 女性の方は14~15歳くらいか? 身長は150cm弱と低身長。ショートボブヘア。ゴシックロリータ調エプロンドレス姿のいかにもメイドと言った感じの侍女です。

「侍従長なら軍部の人より、我々お側ご用人が呼んできた方がいいと思います」

 コマンダーはうなずきました。

「わかった。じゃ、頼む!」

「御意!」


 ここは宮殿内にある部屋。控室のようですが、かなり豪華に整えられてます。突然ドアが開き、先ほどのお側ご用人の2人が、

「侍従長!」

 と言って入ってきました。するとソファに座り、紅茶を飲んでる男性が振り向きました。初老のひょろっとした男性。いかにも執事と言った出で立ち。彼が侍従長です。

「帰ってきたのか?」

 2人は笑顔で応えました。

「はい!」

 侍従長は立ち上がりました。

「よし!」


 宮殿大広間。観音開きのドアが開き、侍従長とお側ご用人の2人が入ってきました。巨大な魔法円はさらに激しく発光してます。その中心に小柄な人影がふっと現れました。少し遅れて、青い光がすーっと収まりました。

 人影は魔女の出で立ち。そう、我々の世界に出向いてた少女です。少女は侍従長から見て真後ろを向いてます。侍従長は色めき立ちました。

「姫!」

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